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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」) - 2024-04-21-台湾の4月を彩る花たち

  • 21 April, 2024
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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)
台湾の4月を彩る花たち

<第1セクション【4月を彩る白い花たち「流蘇花」と「海芋」】>

  • リスナーの皆さま、こんばんは。一昨日は二十四節気の「穀雨」。穀雨とは文字通り穀物の成長を助ける雨のこと。日本では農耕の準備が整い、次の節気「立夏」を前に大地を潤す恵みの雨が降る季節で、茶摘みに最適とされる「八十八夜」も穀雨を過ぎた頃ということになる。台湾でもこの時期には雨が降ることが多い。恵みの雨には違いないのだが、台湾の北中部の山間で4月から5月のはじめに満開となり見頃を迎える、私が台湾で最も好きな花アブラギリにとっては厄介な雨となってしまう。この春の雨に打たれて、見頃を迎えた途端に早々に散ってしまうことも多いのだ。

  • 昨年もこの番組やビデオ番組『異郷人、台湾をゆく』で「油桐花(アブラギリ)」のことについては詳しく触れたので、ここでは以前お話しした内容は繰り返さないが、この白くて美しい花は、満開になれば、まるで山々が雪化粧をしたかのような光景となり、散っても地面に一面に積もった雪のような姿を映し出すことから、「四月の雪」または「五月の雪」とも呼ばれている。台湾にはこのほかにも、春の終わりから初夏にかけてのこの季節に見頃を迎える花が何種類もあるので、本日は「台湾の四月を彩る花たち」というテーマでこれからお話ししていきたい。

  • 先ほどアブラギリの別名が「四月の雪」「五月の雪」という話をしたところだが、台湾にはもう一つ「四月の雪」との別名を持つ花の種類がある。台湾で「流蘇」と呼ばれているヒトツバタゴだ。日本ではナンジャモンジャとも呼ばれている。台湾、日本、韓国、中国と東アジアに広く分部していて、モクセイ科の木の花で細長い4枚の真っ白な花弁を一面つけるのが特徴だ。この花びらは1.2〜2.5センチにの長さになる。一つ一つの花びらは可憐なサイズだが、かなりボリューム感たっぷりに花をつけるので、遠目に見ると、木全体が薄らと雪化粧をしたようになるのは、アブラギリにも似ている。

  • 台北市内では、華山公園や台湾大学のキャンパス、大安森林公園、国父記念館などで見られるので、この時期にはこれらの場所を散策するのがお勧めだ。私も4月になると、このヒトツバタゴを見るためだけに華山公園や台湾大学をよく訪れている。アブラギリは山地まで行かないと見られないが、ヒトツバタゴは街の中で気軽に見ることができるのが有難い。まさに「四月の雪」の名前に恥じぬ美しさだ。私は訪れたことがないが、台中の潭子の「流蘇花園」のヒトツバタゴが、千株も植えられよく整備されていて、「流蘇花空中歩道」と呼ばれる遊歩道も整備されていて見応え十分だそうだ台中を訪れることがある方はぜひチェックしてほしい。

  • もう一つ白い花をご紹介しよう。陽明山国家公園の海抜670メートルに位置する竹子湖で観光用に手広く栽培されている「海芋」と呼ばれるカラーだ。オランダカイウともいう。このカラーはハス科の植物だが、ラッパのような形でまっすぐ伸び白い花をつける。馬の蹄を逆さまにした形にも似ているというので、台湾では「馬蹄蓮」ともいう。台湾のカラーの80%が、ここ竹子湖で生産されている。したがって、この時期に竹子湖に行けば一面のカラーに出会える。今年は3月14日〜4月28日に「竹子湖海芋季(竹子湖カラーフェスティバル)」が開催中。

  • もう、8年ほど前になるだろうか、当時私は映画監督の北村豊晴さんが経営する「北村家」という居酒屋の店長をしていたことがある。この時期に店で働いていた北村監督のご両親やスタッフたちを連れて竹子湖を訪れことがある。当時は今ほどインスタグラムは流行っていなかったが、まさにインスタ映えのする一面のカラーの白い花畑には圧倒された。また、竹子湖では地物の野菜や山菜、地鶏を使った料理を提供するレストランや食堂も多い。それも楽しみの一つだ。当時は平日に行ったのでまだ良かったが、週末ともなるとカラーと食事が目当ての観光客でごった返すことになる。

  • 蕭敬騰さんの歌で『海芋戀(カラーの恋)』をOA。

 

<第2セクション【4月を彩る鮮やかな街路樹「黃花風鈴木」と「木綿花」】>

  • 続いてご紹介する花は「黄花風鈴木(コガネノウゼン)」だ。「金風鈴」ともいう。私がよく買い物に行くで街路樹として植えられていて、1年に1回鮮やかな黄色、いや黄金色の花を楽しませてくれる。この花は3月から4月にかけて一度身に纏っていた葉っぱを全て落とす。それから黄色の風鈴のような形をした幾つもの花をつける。ただ花期は大変短く10日ほどであり、あっという間に散ってしまう。さながら桜のようだ。

  • 台北動物園では4月の初め頃が見頃だったとのニュースを聞いた。昨年高速道路1号線を通って嘉義に南下した際に、新竹から台中にかけて道路脇に延々と咲いているのを見た。実はこのコガネノウゼンは実はブラジルの「国樹」でもあり、彼の地では街路樹として至る所で見られるそうだ。新竹、台中、彰化、嘉義、台南などの台湾中部から南部でも街路樹として植えられているが、いったいどのような経緯で台湾にやって来たのだろう。その物語をぜひ知りたい。

  • 次にご紹介するのは「木棉花(キワタ)」だ。こちらも台湾を代表する街路樹だが、インドやマレー諸島が原産の外来種だ。台北でも中正紀念堂から台湾大学にかけての「羅福斯路(ルーズベルト通り)」で、この時期に鮮烈なオレンジ色の花が見頃を迎える。ただ台南の郊外で街路樹として植えられている印象が強い。それもそのはず、このキワタは台湾では、台南の白河を中心にかつて広く住んでいた平地の原住民族「平埔族」の一つシラヤ族と非常に密接な関係があるのだ。

  • 外来種のキワタがどのように台南のシラヤ族と繋がったのか?まず唐の時代に布団などの中綿にするため、経済作物としてインドから中国に導入された。台湾にやって来たのは明末清初の頃と推察されている。キワタのわたの繊維は長く、この点は優れている。ただキワタは普通の低木の綿花と違って、高い木の上に実を付けるため、収穫には困難が伴う。したがって、普通の綿花のように世界中に幅広く普及することはなかった。

  • それでも台湾ではシラヤ族にとっては貴重な商品作物として重宝された。シラヤ族復興に人力を注いでいる中心人物のAlak Akatuang(漢名:段洪坤)さんが、シラヤ族の長老に聞き取り調査をしたところによると、かつてキワタは枕の原料として、日本人との交易に使われていたそうだ。それだけではない。綿を取った後の硬い殻は、狩猟に行く際に携帯する弁当箱として使われていた。甘い果実が残った殻に米を詰めて行くと、果実の甘みが米に移ってとっても美味しかったそうだ。

  • また、台南市シラヤ文化協会理事長の Uma (漢名:萬淑娟) さんによれば、キワタの蜜はとても甘く、幼少期にキワタの蜜を集めて飲んでいた記憶のある人も少なくないそうだ。そう言えば、東南アジアでは、キワタは花の蜜を主食とするハチドリが好む花だと聞いたことがある。私も小さい頃にクローバーやレンゲの花を摘んでは蜜を吸っていたことを思い出しながら、キワタの蜜の味がどれだけ甘いのだろうと想像してみた。また、シラヤ族は、花は乾燥してキワタの花茶も嗜んでいたそうだ。

  • 南アジア、東南アジアの熱帯が原産のキワタは、台湾の中南部の気候とも馴染み、街路樹として多く植えられた。花期が1か月半と長い木綿の鮮烈なオレンジ色の花は、通行人の目を楽しませてはくれるのだが、近年はその弊害も指摘されている。大きなキワタの花は花弁が付いたまま塊で落ちる。この花が道路に堆積し付着すると、掃除が大変な上、バイクや自転車のタイヤがスリップし易く危険であるという指摘がなされている。実際にキワタが原因のスリップ事故も起きているらしい。今あるものはそのまま保存しつつも、今後は街路樹にキワタを採用しない政府の方針も打ち出されている。台湾の中南部の人々の街路樹としてのキワタの花も、いつしか記憶の彼方へ押しやられてしまうのかもしれない。

  • ここで、王夢麟(ワン・モンリン)さんが歌った『木棉道(木綿花の道)』をOA。この曲は私でも聴き覚えのあるメロディーであり、1970年代〜1980年代に流行した「校園民歌(キャンパス・フォークソング)」の数々の名曲の中でも、最もよく歌われている曲の一つかもしれない。歌は時代の記憶である。キワタの記憶が台湾の人々にこれからも受け継がれていってほしいと願わずにはいられない。

 

<第3セクション【4月を彩る淡水の「藤花」】>

  • 台湾には藤の花の名所もある。新北市淡水の「淡水紫藤花園」だ。ここも数年前に訪れたことがあるが、広大な敷地に見事な藤棚が並び、一瞬日本にいるのかと錯覚するような光景だ。藤好きのオーナーが、30年ほど前に始めたこの藤園は、9,500坪に及ぶ二つのエリアに1,500株の藤が植えられていて、晴れた日には藤棚から薄紫色の木漏れ日覗き、雨の日は雨の日でしっとりとした装いで本当に見応えがある。しかも、この藤園は毎年3月下旬から4月上旬の20日間ほどしか対外開放しないという、本当にレアな場所なのだ。コロナ禍の時期には藤園を閉じるとの報道もあったが、どうやらその危機は乗り越えたらしい。今年は藤の花のシーズンはもう終わってしまったが、来年以降、機会を作って再訪したいと考えている。

  • 今日は「台湾の4月を彩る花たち」というテーマで話して来たが、3月の薄紅色の桜を引き継いで、紫色、黄色、白、オレンジ色の色とりどりの花たちがかわるがわる登場しては、都会や郊外の通りや公園や山を染めていく。黙々と優しく私たち人間に春の訪れと春の別れを告げてくれている。

  • そして、この花のリレーは、先ほどお話しした黄色の「黄花風鈴木(コガネノウゼン)」、オレンジ色の「木綿花」に続いて、5月には今度は真っ赤な花を付ける「鳳凰花」に引き継がれていく。台湾では多くの学校が6月に卒業式を迎えることから、この花が咲き始めるとそろそろ卒業シーズンだと多くの人が感じるはずだ。

  • 本日のお別れの曲は、基隆出身の歌手で音楽プロデューサーでもある林志炫(リン・ヂーシェン)さんの歌で『鳳凰花開的路口』。「時光的河入海流 終於我們分頭走 沒有哪個港口 是永遠的停留 腦海之中有一個 鳳凰花開的路口 有我最珍惜的朋友(時の河は海へと流れ、僕たちは別々の道を歩む。永遠に止まることになる港などどこにもない。心の中には鳳凰花が咲く道がある、僕の一番大切な友だちがそこにいる。)」というサビの歌詞は、卒業ソングにまさにピッタリだ。

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