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(2014/05/10)国立故宮博物院-神品至宝展特集(第六回)

  • 10 May, 2014
宝島再発見
緙絲秋山詩意

国立故宮博物院の収蔵品の日本における展示会、「神品至宝」展は6月から日本の東京国立博物館で、10月からは九州国立博物館で開催される。故宮博物院の二大スターともいえる、「翠玉白菜」と「肉形石」が期間限定ながら展示されることが注目されているが、その他にも貴重な収蔵品が目白押し。

 

「緙絲秋山詩意」は、南宋の時代(1127年から1279年)の緙絲芸師、沈子蕃による絹製の掛け軸。「緙絲」は長い歴史を持ち、漢の時代まで遡れる古代中国のつづれ織り。「通経断緯」(縦糸は粗く、横糸は密に織り込む)と呼ばれる織り方で、色の変わり目には穴のような隙間ができる。縦糸の間に、色のついた糸が巻きつけられたシャトルを横に通して織ることで絵と見まがうような図柄を描き出す。穴や切れ目の効果で、図柄が立体的に見え、「ナイフで彫刻されたような織物」と称えられた。

 

「緙絲秋山詩意」は縦86.8センチ、幅38.3センチ。宋の時代の絵は山水と花鳥が主で、「緙絲秋山詩意」は宋の時代の山水画にそっくりに織られた掛け軸である。最も近いところには崖とその上の東屋ならびに樹木、その先には湖、さらに先には山が見えるという秋の景色が描かれている。近いところとやや遠いところ、遠いところと分けることで立体感のある構図となっている。

 

「緙絲」で絵を描く場合は、絵の原稿を縦糸の下に置き、それにあわせて横糸を通していくという、気の遠くなるような作業を行う。「緙絲」の糸の色に制限はないため、製作者は思い通りの絵を描き出せる。また、この糸は長期間の保存に耐え、1000年痛まないという。様々な色が使われており、崖は微妙な緑、樹の葉は赤で描かれた。山水画や織物に興味のある人にとっては必見の作品である。

 

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