国立故宮博物院の収蔵品の日本における展示会、「神品至宝」展は6月から日本の東京国立博物館で、10月からは九州国立博物館で開催される。故宮博物院の二大スターともいえる、「翠玉白菜」と「肉形石」が期間限定ながら展示されることが注目されているが、その他にも貴重な収蔵品が目白押し。
「定武蘭亭真本」は「書聖」(書道の神様)と呼ばれる王羲之の文字を記録したもの。353年3月3日、王羲之は「蘭亭」という別荘に名士を招いて宴会を開いた。そのときに作られた詩集の序文が「蘭亭序」。王羲之は酔った状態でこれを書き、後で清書しようとしたがどうしても最初のものを超えられなかったという。王羲之の最高傑作とされる。後に王羲之の書を収集した唐の太宗皇帝は王羲之の子孫をだましてこれを手に入れたが、他界時に副葬品にしてしまったため、原本は残っていない。国立故宮博物院が収蔵する「定武蘭亭真本」は、欧陽詢が模写して石版に彫ったものの拓本で、王羲之の字をもっとも忠実に残したものとして知られている。墨で書かれた模写本では、馮承素による「八字第三本」が「神龍半印本」として著名ながら、現在では、王羲之の字とかなり異なるというのが定説。
「定武蘭亭真本」は28行、324字でサイズは幅が66.9センチ、たてが25センチ。王羲之本来の字を目にしたいなら見逃せない作品である他、拓本であるがゆえの「ぼんやり」した部分も、見る者の想像力をかきたてる魅力がある。王羲之の字は日本でも奈良時代から字の手本として伝わった。書道の手本中の手本の字、台湾と漢字文化を共有する日本の人たちにとって、必見の一品である。