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文化の台湾 - 2022-09-16_台湾人の“愛排隊文化”

  • 16 September, 2022
文化の台湾
先日の中秋節連休、各地で中秋節のお菓子「月餅」を求めて行列ができた。(写真:CNA)

先週、台湾は中秋節の連休がありました。

中秋節といえば多くの人が実家に帰り、家族そろってバーベキューをしたり、文旦を食べたりして、団らんの時間を過ごしますが、中秋節に欠かせないものとしてもう一つ「月餅」があります。

「月餅」と言うと、一般に日本人が想像するものは、小麦粉でできたしっとりとした茶色い皮の中にたっぷりの餡子が詰まっている、月の形に見立てた丸いどっしりとしたお菓子かと思いますが、一言に「月餅」と言っても色々な種類があって、中でも台湾では、「蛋黃酥」と呼ばれる、丸っこくて、薄いパイ生地のような皮の中に、餡子、その中にアヒルの卵の黄身の塩漬けが包まれているものも有名です。

真ん中でカットすると、アヒルの卵の黄身がまるで満月のようにも見えて、中秋節には欠かせないお菓子となっています。

ですので、中秋節の頃になると多くの人が「蛋黃酥」を買い求めるんですが、その「蛋黃酥」の人気店、台湾中部・彰化市にある「不二坊」では、毎年中秋節前になると長蛇の列になり、並びたくない人が代わりに並んで買ってくれる人に依頼して、元々1個45元の「蛋黃酥」が15個で1800元、つまり1個当たり120元と倍以上の値段で買われていたりしたことなどから、今年は並ばなくていいように電話での予約受付を行い、早い段階ですでに売り切れとなっていたのですが、多くの人がそれを知らずにお店の前に並び、並んだものの結局買えずに帰る羽目になってしまったんだそうでニュースになっていました。

またこのお店の他にも、台湾中部・台中市の「犂記」でも中秋節の1か月前から「月餅」を買い求める行列が見られていたそうですし、同じく台中の「香格禮坊」でも予約分の他に、当日朝9時から限定150個販売しましたが、それも朝早くから行列ができてすぐに完売となったそうです。

このように台湾の各地で中秋節のお菓子「月餅」を求めて行列ができていたようです。

私は台湾に住む前、「台湾の人たちはあまり並ぶのが好きじゃない」と聞いていたのですが、実際に住んでいると「台湾の人たちは行列好きだよなぁ~」という印象に変わりました。

実際に台湾の人たちに聞いても、多くの人が「台湾人は“愛排隊(行列好き)”だよ」と言われます。

今やこの「愛排隊(行列好き)」は台湾の特別な文化となっていますが、過去には2018年に台湾の歴史に残る「499之亂(499の乱)」と呼ばれる大行列を巻き起こした出来事がありました。

これは、ある通信会社が「1か月499台湾元(日本円およそ2,300円)でネット使い放題」というお得なプランを打ち出したとろ、契約のために台湾全土、北から南まで、お年寄りから若者までが列をなすなど全国的な騒動となったんです。

また、バドミントンの戴資穎(タイ・ツーイン)選手がアジア競技大会で金メダルを獲得した記念にマクドナルドが「買一送一(1つ買ったら1つプレゼント)」というキャンペーンを行ったところ、長蛇の列ができ「大麥克之亂(ビッグマックの乱)」等とも呼ばれました。

このような大規模なものだけでなく、台湾の人々の行列に対する熱意は生活の中の些細なことにも表れています。

数年前の調査ですが、台湾の人たちが時間を使っても並ぶ10大理由が発表されていました。それによると…

第10位:毎年年末に老舗のお土産屋さんでお菓子を買うために並ぶ

第9位:記念コインなど「紀念品」を手に入れるために並ぶ

第8位:台湾各地にある人気店「夯店」に並ぶ

第7位:流行りの新商品を買うために並ぶ

第6位:手に入らなくなる前に買うために並ぶ

(最近でいうと一昨年、マスクやトイレットペーパーが品薄になるということがありました)

第5位:旅先で現地の必ず買うべき名産のために並ぶ

第4位:「一蘭ラーメン」や「猿田彦珈琲」のように、海外の有名店が台湾に上陸したら並ぶ

第3位:人気のB級グルメの“屋台”にも並ぶ

第2位:先ほどの通信会社の「月499元で使い放題」のような、逃してはならないお買い得なものに並ぶ

第1位:ブランドのコラボグッズなど、数量・期間限定商品は必ず並ぶ

という結果でした。

1位の限定コラボグッズなどは日本でも行列ができてニュースになったりしますが、それ以外はまぁ、少しの列は見ることはあっても大行列まではなかなか見かけませんが、台湾では本当に“大行列”になっていることが多々あります。

特に、新たにお店がオープンすると必ずと言っていいほどに入り口に人が群がっているのを見かけますね~。

お店に惹かれるのか、行列があるから並びたくなるのか…どちらでしょうね。

*****

ちなみに、アメリカの社会心理学の専門家が、かつて街角で数人にある平凡で無機質な高層ビルを見てもらい、その時の通行人の反応を見るというテストをした際、3人が建物の方を見ると通行人の6割がその建物を見て、5人が建物の方を見ると8割の通行人がその建物の方向を見ていたんだそうです。

この実験は行列にも同じことが言えるんだそうで、人は並んでいる人を見ると、安心するために同じことをするという“大衆心理”が働くからなんだそうです。

なので、行列を見て列に並ぶ人がいるというのは台湾に限ったことではないそうなんですが…、それでも感覚として、台湾の人たちはよく並んでいる印象です。

そして面白いのが、先日、私も行列を見かけたので「何の行列かな~?」と思いつつ近くを通っていたら、同じく「何の行列かな?」と思った年配の女性が、す~っと行列に近づいて、並んでいる人に「何の行列?」って聞いていました。

台湾の人たちは結構こうやってすぐ知らない人にでも話しかけて聞くんですが、この時はそれだけでなく、並んでいる人も「さぁ、なんか新しいお店がオープンして〇〇がもらえるみたい」と答えていて、並んでいる人も知らないの?!と思っていたら、その尋ねた女性も「そうなの?」と言って列の最後尾に並んでいました(笑)。

何かわからないものに並ぶのは時間の無駄!となりそうなところですが…台湾の人たちは好奇心旺盛で、しかも時間や気持ちに余裕がある人が多いんでしょうかね。

日本人も他の国の人に比べて比較的並ぶ方だとは思いますが、台湾の人たちが並んでいる時の行列の長さを見ると驚くかもしれません。

皆さんはどんな目的で、何分待ちまでなら並ぼうと思いますか?

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