旧暦の7月30日、今年(2022年)は今日(8/26)、ついにこの世とあの世をつなぐ扉が閉まり、1か月にわたって続いてきた台湾のお盆月「鬼月」が終わりとなります。
この日は、日本のお盆の終わりと同じく、ご先祖様をあの世へお送りするだけでなく、台湾では「好兄弟」と呼ばれる無縁仏たちも送ります。「好兄弟」たちにとっては“夏休み”が終わるということを意味するので、満足してちゃんとあの世に帰ってもらえるように、豪華なお供え物を準備して送り出します。
そのため、今日はあちらこちらで拜拜(お参り)しているのを見かけました。会社や自宅の玄関先での「好兄弟」たちの最後のもてなしは、午後13時から夕方17時までがいいとされていて、お供え物も、来年の「鬼月」までの11か月間、食べ物に困らないようにと、ビスケットやインスタントラーメン、缶詰など、長期間保存できるものや、お米、油、塩などの日常の必需品を準備します。
ただ、中にはこの世に残ろうとする「好兄弟」もいるらしく、もし“夏休み”から帰ってこない「好兄弟」がいたら、土地の守り神である「城隍爺」が使者を派遣して連れ戻すんだそうです。
地域によってその習慣が違うのですが、よく知られているのは、鬼門が閉まる前に巡行を行い、紛れ込んでいる「好兄弟」を見つけ出すんだそうですよ。場所によっては鬼門を閉じた後に再び巡行を行って清める習慣もあるそうです。
ちなみに、一般に “鬼門が閉まる日”は旧暦の7月30日で、この日には各地の廟で“鬼門”を閉めるための儀式が行われるのですが、台湾北部・基隆にある「老大公廟」では、旧暦の8月1日の午後17時から“鬼門”を閉める儀式が行われ、夕方18時に“鬼門”が閉められます。
なぜ1日遅らせて行われるのか気になりますよね。「老大公廟」の説明では、「好兄弟」たちがもう一日、この世で楽しく過ごせるように1日遅らせているそうです。こうして“鬼門”を閉めるのを1日遅らせることで「好兄弟」たちを敬う気持ちを込めているそうです。そしてなぜ18時なのかというと、月が出てくるのはもっと後で、この時間は“陰”の気がとても重いことからなんだそうです。
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なお、”鬼門”が閉まる際にも10個のタブーがあります。
●“鬼門”が閉まる前夜には磁石を家においてはならない
“鬼門”を閉めるとき、“鬼門”に磁石を置いて、その力で霊たちを吸収し、この世に留まらないようにするためだそうです。
●法要のお供え物を食べきらなければならない
法要のお供え物を食べきってしまわないと、「好兄弟」たちがその匂いに誘われて戻ってきてしまうそうです。
●お経を聞いてはならない
“鬼門”が閉まる日、もしお経を聞くと、「好兄弟」たちが自分たちをあの世に送ろうとしていると思い、離れがたくなり、夜、悪夢にうなされやすくなるんだそうです。
●花の香りをまとってはならない
“鬼門”が閉まる日は、濃い花の香りを纏うと、「好兄弟」たちが香りに誘われてやってきやすいんだそうです。
●人形を隠しておくこと
“鬼門”が閉まる前には、必ず家の中にある人形をしまっておきましょう。そうでなければ、「好兄弟」たちが人形に乗り移って帰らなくなるそうです。
●夜中にロウソクを灯してはならない
夜中にロウソクに火を灯すと、「好兄弟」たちが光を求めてやってきてなかなか去ろうとしなくなるそうです。
●「再見(またね)」と言ってはならない
“鬼門”が閉まる日に「再見(またね)」と言うと、次に“鬼門”が開いた時に「好兄弟」たちがあなたを探しに来てしまうんだそうです。
(友達にポンと言ってしまいそうですよね…)
「再見(またね)」の他にも、「留下(いかないで/残す)」、「明年見(また来年)」、「明年我再準備豐盛一點(来年はもっと豊富に準備しておきます)」、「期許明年再拜(来年のお祭りを楽しみにしています。来年もよろしくお願いします)」という言葉もタブーだそうですよ。
●先祖に文句を言ってはならない
ご先祖様が文句が発する“悪い気”をあの世に持ち帰ってしまわないように、“鬼門”が閉まる日に家の文句を言わないようにしましょう。自身の家運に影響を及ぼすかもしれません。
●冤親債主に向けてお経を唱えてはならない
“鬼門”が閉まる日に冤親債主に向けてお経を唱えると、「好兄弟」たちがあなたに感謝して、次に“鬼門”が開いた時に「好兄弟」があなたを探しに来てしまうそうです。
●出産が重なる場合は念仏を唱える
もし、“鬼門”が閉まる日に出産が重なる場合、「好兄弟」があの世に戻らず、胎児になってしまうことを避けるために、出産前に必ず念仏を唱え、地蔵菩薩のご加護を得なくてはならないそうです。
1か月間、“鬼”にかなり脅かされてきた台湾の人たち。
最後の最後、“鬼門”が閉まってしまうまで、気が抜けませんね。
今日、各地で“鬼門”が閉められましたが、まだ、明日、「老大公廟」の“鬼門”が閉まるまでこの世を楽しんでいる「好兄弟」が近くにいるかもしれませんね。
明日、旧暦の8月1日まではまだ「鬼月」のタブーは冒さないようにしておいた方がいいかもしれません。