今、台北の松山エリアにある、松山文創園區一號倉庫(松山文化クリエイティブパーク一号倉庫)で、日本の建築家、安藤忠雄の個展、「挑戦-安藤忠雄展」が行われています。
この個展は、2017年の東京にある国立新美術館で開催されたのを皮切りに、これまでにパリ、ミラノ、上海、北京と巡り、世界巡回展の最終地点として、今月(6月)から台北で開催されているものです。
建築家・安藤忠雄と言えば、1976年の作品「住吉の長屋」や、1989年の作品「光の教会」など、コンクリート打ちっぱなしの建物をメインに、住宅や教会、ホテルなど、国内外に数々の作品を発表しています。
台湾では、台湾中部・台中市にある「亜洲大学亜洲現代美術館」を手掛けています。
この「亜洲大学亜洲現代美術館」は、正三角形を設計のベースにし、3つのフロアに分け、さらに不規則にいくつもの三角形を積み重ねて作っています。また平面上にたくさんの三角形があるだけでなく、立体部分にもたくさんの三角形があって、地震の多い台湾という地理的条件に対応するため、一般のまっすぐ立つ柱ではなく、建物の柱は全て「曲がって」いて、V字型の鉄骨で作られた空間は三角形となっていて、いたるところに三角形があるように見えるデザインとなっています。
この「亜洲大学亜洲現代美術館」は、2013年に完工し、開館セレモニーには当時の馬英九・総統も出席し、除幕式が行われました。
このように台湾でも安藤氏と彼が手掛けた建物物に注目が集まっています。
そんな建築家、安藤忠雄の世界巡回展、「挑戦-安藤忠雄展」。
台北では、手書きの設計図面や模型、写真など300点余りの展示が行われている他、安藤氏の代表作の一つである「光の教会」を原寸大で再現したインスタレーションも展示されています。
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今、台北では、日本の建築家、安藤忠雄の世界巡回展、「挑戦-安藤忠雄展」が行われていますが、その台北での展示会を、安藤忠雄建築展実行委員会と共に主催しているのが、「忠泰美術館(Jut Art Museum)」。
台北市の大安区、建國高架道路と市民大道高架道路の交わる付近に2016年にできた新しい美術館なんですが、ここの特徴は、台湾の建築に焦点を当てているということ。忠泰建設という建設会社が創立30周年、そして忠泰基金会設立10周年を記念して建てた、台湾で初めて「未来」と「都市」とテーマにした美術館です。
台湾の建築業界では日本の建築士とコラボレーションしているのもよく見かけますが、この美術館の室内空間は、ルイ・ヴィトンの店舗デザインなどを手掛ける日本の建築士、青木淳氏によるデザイン。
その佇まいからとてもスタイリッシュな雰囲気を醸し出しています。
青木氏いわく、都会の喧騒の中に「真っ白な空間」が生まれたかのように、気品と洗練を際立たせるだけでなく、あらゆるものを描き出す新しいキャンバスとして誕生させたものだそうです。
美術館はふたつの高架道路に囲まれた場所にあって、あまり目立つところではありませんが、美術館前の広い歩道は緑に囲まれ、パブリックアートが配置されていて、最上階の展示スペースには、周辺の景観との調和を図りながら、街の景観を壊さないように工夫された、シンプルで清潔感ある展示空間となっています。
開館から5周年を迎え、今後は、「未来のテーマ」、「都市建築」、「現代アート」の3つの方向性に重点を置き、台北の建築と文化芸術の新たなランドマークとして都市文化の活力をけん引していくとしている「忠泰美術館(Jut Art Museum)」─。
一般の大規模な美術館とは違い小規模で、テーマも主に建築関係をベースとしていますが、建築関係に詳しくなくとも、アートとして楽しめる場所でもあります。
台湾の未来に向けた建築とアートの世界を機会があればぜひのぞいてみてくださいね。