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文化の台湾 - 2022-06-10_台北市立美術館

  • 10 June, 2022
文化の台湾
台北市立美術館(写真:CNA)

台湾観光に来られた方で、国立故宮博物院に行ったことあるという方は多いと思いますが、それ以外の博物館や美術館に足を運んだことはありますか?

台湾には国立から私立までたくさんの博物館や美術館がありますが、台北市の圓山駅近くにある「台北市立美術館」に行ったことがあるという方はいらっしゃいますか?ここは台湾で最初にできた現代美術館です。

場所は台北新交通システムMRT(台北メトロ)レッドラインの圓山駅近く、花博公園の中にあって、比較的交通の便もいいので、もしかしたら行かれたことある方も少なくないかもしれませんね。

元々は、「アメリカ台湾防衛司令部(United States Taiwan Defense Command)」があった場所で、美術館の北側には基隆河が流れ、西側は台北駅や中山駅方面からRTI台湾国際放送方面へ向かう際に通る大きな道路、中山北路が走っています。

「台北市立美術館」は、1983年、当時急成長してきた現代美術の動きに呼応して設立。台湾の現代美術の保存、研究、発展、そして普及を推進し、世界の動向を把握して多様なコミュニケーション手段を確立し、一般市民の現代美術への認識と参加を高め、台湾の現代芸術を反映し、全ての人々の芸術的教養をより豊かにし、美的感覚を養い、文化的見識を持つ現代社会を形成することを使命としています。

過去100年に渡る台湾の美術史を編さんすると共に、現代美術にも焦点を当ててその発展を続けています。

台北市立美術館の収蔵品は、20世紀以降の国内外の重要な芸術家の作品や創意性のある優れた美術品をメインにコレクション。さらに19世紀に作られた美術作品も取り入れることで、故宮博物院の中華文物収蔵システムに倣い、コレクションによって台湾の美術史の流れと現代的特性を表しています。

建物は、台湾の有名な建築士、高而潘氏による設計。

グレート白を基調としたモダンな風格に、中華式の伝統住宅の様式である“合院”の精神を融合させた造りとなっています。

古代中国建築の独特な構造を取り入れ、建物を上から見ると漢字の井戸の“井”のような形となっています。これは“文化の水源”を象徴しているそうです。

そして、建物の中はと言うと、ロビーは高さおよそ9メートルあって、更には地上3階から地下1階まで、密閉された壁ではなく、光を取り込むガラスの壁となっていて、自然光を取り込んで、明るく開放的な空間となっています。

箱庭部分に入る自然光で、時間と共に移り変わる光と影が楽しめます。

ちょうど今は、戦後、台湾で活躍した水墨画の第一世代の画家である、李義弘の55年間の集大成、「李義弘:回顧展」や、台湾の“炭坑画家”と呼ばれた洪瑞麟の作品展「掘光而行:洪瑞麟」、そして、イギリスのヴィクトリア&アルバートミュージアムが企画した世界巡回展「マリー・クワント」展などが行われています。

また、入り口前の広場でも作品の展示が行われたりするんですが、今は、まるで地面に埋まっているかのような、屋根だけが見える “青い家”が登場しています。

ちょうど台北市立美術館の場所は、私もRTIに来るときに、圓山駅からバスに乗って毎日通るので、この“青い家”を作っている時からずっと、これは何だろう…と思って気になっていました。

これは、X-siteというプロジェクトで、毎年様々な創造的な問題や、現代の分野を越えた形式の仮設インスタレーションの公募を行っていて、今年(2022年)は、20あった提案の中から、「藍屋 Blue House」が選ばれ、設置されたんだそうです。

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この様に、国内外さまざまな展示が行われている台北市立美術館ですが、この度、拡張工事が行われることとなりました。

その建設案は、美術館と公園を一体化させた設計で、地上を公園として、その地下に美術館を建設する計画だそうです。

完成すれば台湾初の「地下美術館」となります。

発表によると、地上の公園は屋外の展示スペースを兼ね、エレベーターで地下の美術館に下りて室内展示を楽しめる造りになるそうです。

拡張部分は、台北市立美術館のすぐそばに広がる花博公園の一部を活用。施工面積は6万2,542平方メートル、延べ床面積は4万4,576平方メートル。建設費用はおよそ52億台湾元(日本円およそ236億円)で、完成は2027年を予定しているとのことです。

プロジェクトを担当するのは、建築家の劉培森氏で、彼は、高雄市美術館プロジェクトの芸術センターの主任建築士でもあり、台中市の文化施設「台中綠美圖(Taichung Green Museumbrary)」の建設では、日本の建築家、妹島和世、西澤立衛と共同で現地建築家として活躍した人物です。

台北市立美術館は、来年で創設から40年になるということで、今回の拡張工事でスペースの不足を補うとともに、新たな芸術のニーズにも対応できる空間にすることで、美術館としての機能向上を図りたいとしています。

既に公園の一部に工事用の囲いがしてあって工事に入っているようです。どのようになるのか、そして拡張された後、どのような展示が行われるようになるのか、今から楽しみですね。

過去に台北市立美術館を訪れたことがあるという人も、まだ訪れたことがないという人も、拡張工事が完成した際には、建物を目的に、またより充実した展示を見に、ぜひ足を運んでみてくださいね。

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