文化の台湾 - 2021-04-16_「大甲媽祖巡礼」と「白沙屯媽祖巡礼」

  • 16 April, 2021
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大甲の媽祖様巡礼の目的地「新港奉天宮」の廟前広場で行われたイベントには多くの信者が駆け付けた。(写真:CNA)
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こちらは白沙屯の媽祖様が乗った神輿。媽祖様の気分次第でルートが決まり、急にスピードを上げることでも知られていることから神輿は別名“ピンクのフェラーリ”とも呼ばれている。(写真:CNA)

先週の金曜日(4/9)、台湾中部・台中にある大甲鎮瀾宮から「大甲媽祖巡礼」が出発しました。

毎年、道教の女神「媽祖様」の誕生日である旧暦の3月に、台湾にある千近い数の媽祖廟でお祝いの行事が行われるのですが、その中でも大規模なものがこの「大甲媽祖巡礼」。媽祖様が、9日間にわたり、台中から彰化、雲林、嘉義の4つの県市、340キロもの距離を巡礼します。

実はこの巡礼では、媽祖様が通る前に「陣頭」と呼ばれる、音楽隊や神様などの隊列が通ります。しかも、その隊列の順番も決まっているんですよ。

●まず最初に登場するのは、「報馬仔」。隊列の先鋒で、ルートを探って報告するとともに、道中銅鑼を叩いて信者や廟に媽祖様を迎える準備をするように伝えます。その姿も特徴的で、赤いフリンジの付いた笠帽子をかぶり、「ハ」の字の口ひげをはやし、眼鏡をかけ、手には中心が赤い銅鑼を持ち、番傘を肩にかつぎ、足元は、左足だけズボンをまくり上げ、右足は裸足…という出で立ち。かなり独特なスタイルですが、例えば、「ハ」の字の口ひげには「言葉には偽りがない」という意味が、番傘を担ぐのには「人に良い行いをする」、左足だけまくり上げたズボンは「人の傷を明らかにしてはいけない」と呼びかける意味があるんだそうで、この格好一つ一つに意味があります。

●続いて登場するのは、「頭旗」、「頭燈」、「三仙旗」と呼ばれる隊列。「頭旗」は媽祖様の命令により行列の誘導を担当。「頭燈」は巡礼団の目であり光を表し、「三仙旗」は旗を持った3人が横に並んでいて真ん中の黄色い旗が「媽祖」様を表し、両側の青い旗は護衛を表しています。

●そして「開路鼓」。これは、道を先導する小楽団で、歩きながら演奏し、隊列が来たことを知らせます。

●次にやってくるのは「駕前隊伍」。これは、毎年、元宵節に巡礼の日時が決定した後、線香を奪い取る方式で決まった「頭香」「貳香」「參香」「贊香」といった団体の隊列です。

これは、巡礼を担当する団体のことで、清朝時代、大甲の53の村の頭が集まって、交代で媽祖の巡礼を担当する話し合いが持たれましたが、53年に一度しか順番が回ってこないこと、そして村ごとに貧富の差があるため費用を負担できない村があるかもしれないと問題となったため、線香を奪い取る方式で、参加を志願する村の中から選ばれた団体です。

●そして、およそ300人が参加する女性信者のみで構成された隊列「繡旗隊」が通り、続いて土地神様と玉女、そして3人の羅漢からなる「福德彌勒團」、そして幸運と喜びを象徴する3人の彌勒によって構成された「彌勒團」が通ります。

●それに続いて、三太子の哪吒と、そばには濟公も伴う「太子團」がやってきます。三太子の哪吒はおしゃぶりを持っていて、信者たちは子供が健康にすくすくと育つようにとそのおしゃぶりを欲しがるそうで、信者が新しいおしゃぶりを買ってきて太子のおしゃぶりと交換したりします。

●続いては、富と繁栄を表す2人組の神童「神童團」が登場。

●そしてたくさんの自転車が並ぶ「自行車隊」が登場します。初期の頃は巡礼の際、道の両サイドに自転車を並べ媽祖様が通れるようにするのが務めだったそうで、150人ほどいてずらりと自転車が並ぶ様子から信者からは「鉄の護衛隊」、「大甲媽祖の憲兵」などとも呼ばれたそうです。

●そのあとに登場するのは、「哨角隊」。隊列前方の銅鑼の音に合わせて笛を吹き、道を開いて鬼を追い払うのが使命です。特徴的なのはその楽器で、真鍮製で長さはなんとおよそ145cmもあります。

●その後ろからゆっくりと歩いてくるのは「莊儀團」。これは媽祖の第一護衛である「千里眼」と「順風耳」のことで、「千里眼」、「順風耳」の頭の上にある“お金の代わりの紙”である「高錢」は、お守りのようなものだと信じられていて、その「高錢」を手に入れようとする信者も多くいます。

陣頭がここまでくると、そろそろ媽祖様が近づいてきます。

●続いて、主に男性で構成された「三十六執事隊」が登場。プレートや18の武器を持っていて、道を開けたり護衛を行います。

●その後ろから、「轎前吹」と「馬頭鑼」がやってきます。「轎前吹」はラッパ、太鼓、シンバル、木魚で構成される媽祖の神輿の前の小楽団で、「馬頭鑼」は、両面銅鑼を持ち、これを叩くことで媽祖の停止や出発を表します。

●そして、その後ろから大きな筒状のものがくるくると回りながらやってきます。これは「娘傘」と言って、媽祖の旅の途中、日陰を作るためのもので、古代の皇帝が旅をするときに使った天蓋に由来しているもの。この「娘傘」が見えたら媽祖様はもうすぐそこです。

●「令旗」と呼ばれる2つの旗を先頭に、媽祖様の乗った神輿「媽祖鑾轎」がやってきます。

…まさに大行列です。

「大甲媽祖巡礼」を観に行く機会がありましたら、ぜひこの「陣頭」にも注目して観てみてくださいね。

 

ちなみに、「大甲媽祖巡礼」と同じく、「国定文化資産」に認定されている媽祖巡礼がもう一つあります。

台湾北西部・苗栗の白沙屯拱天宮の「白沙屯媽祖巡礼」。

同じ“媽祖巡礼”という名ですが、巡礼の方法が違います。一番の大きな違いは巡礼のルート。「大甲媽祖巡礼」は巡礼のルートが決まっているのに対して、「白沙屯媽祖巡礼」の方は、目的地は雲林の「北港朝天宮」と決まっているのですが、その間のルートは決まっておらず、媽祖様の気分次第で動きます。往復およそ400kmの道のりを、媽祖様にお伺いをたてつつ、その指示に従って進んでいきます。そのため、「白沙屯」の媽祖様はとても“個性的な性格”だと言われています。

しかも、ピンクの布で屋根を覆った神輿が急にスピードを上げることでも知られていることから、神輿は「ピンクのフェラーリ」とも呼ばれているんですよ。

この大甲の媽祖様と、白沙屯の媽祖様はこの100年のうち4回だけ巡礼で出会ったことがあって、今年は4月14日に二つの媽祖様の神輿が出会うのでは?と期待されましたが、その距離850mと、近くを通ったものの一緒になることはありませんでした。

この他にも、媽祖様の誕生月である旧暦の3月には台湾のあちらこちらで媽祖様をお祝いする行事が行われます。この時期に台湾を訪れる機会があれば、その様子を見かけることがあるかもしれません。

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