文化の台湾 - 2021-04-09_世界三大宗教行事の一つ「大甲媽祖巡礼」

  • 09 April, 2021
文化の台湾
昨年は新型コロナの影響で延期となったが、今年は例年通り開催される。(写真:2020年の大甲媽祖巡礼出発の様子/CNA)

台湾には様々な神様が祀られていますが、台湾の人々に最も慕われている神様と言えば、海の女神「媽祖」があげられます。

毎年、「媽祖」様の誕生日である旧暦の3月には、台湾にある千近い数の媽祖廟でお祝いの行事が行われます。

中でも最も大規模なものが、台湾中部・台中市大甲区にある鎮瀾宮の「大甲媽祖繞境(大甲媽祖巡礼)」。

毎年、「媽祖」様が、9日間に渡り、台中から彰化、雲林、嘉義の4つの県市、340キロもの距離を巡礼するものです。

清朝時代の1730年、中国大陸福建省湄洲島の林英興が家族と共に台湾の大甲へ開拓にやってきた際、中国大陸の湄洲朝天閣の「媽祖」から分霊したものを自宅の居間に祀りました。のちにそれが地元の有力者によって現在の大甲鎮瀾宮が有る場所に建てられた祠に移され、12年ごとに中国大陸の湄洲朝天閣にお参りに行くようになったのが「大甲媽祖巡礼」の始まりとされています。

日本統治時代に台中の大安港が廃港になったことから、台湾と福建省を結ぶ海路が閉ざされてしまったことに伴い、台湾中南部・雲林にある媽祖廟、北港朝天宮へのお参りが行われるようになり、1988年からは現在のように中南部嘉義県の新港奉天宮を目的地に巡礼を行うようになりました。当初の巡礼の規模は30~40人でしたが徐々に拡大し、参加者も大甲の住民に限らなくなり、1980年代には参加者は10万人を超え、台湾で最も有名な媽祖巡礼となりました。

でもなぜこんなにも台湾の人たちにとって「媽祖」様が親しまれているのでしょうか。「媽祖」様は、元々、“航海の女神”とされ、漁師を守り、航海の安全を守る神様とされていたことから、台湾では当初の媽祖廟は海や港に向いていました。しかし、台風や洪水、地震や疫病などが多い台湾では、次第に様々な面で「媽祖」様にご加護を祈るようになり、それに伴う数々の伝説や奇跡から、「媽祖」様は災害を警告し、地震や疫病を鎮めてくれると言われるようになりました。そのようなことから台湾では“航海の女神”としてだけでなく、台湾の歴史や人々の生活にとても密接に結びついている全能の神とされていて、今では商売から健康、受験、出世、子宝、農業など、ありとあらゆることで「媽祖」様のご加護を祈ります。

9日間に渡って行われる巡礼では移民の開拓のルートを巡ると同時に、信仰者の自身の文化的価値への意識を高めることが図られています。この地に深く根付いた複雑な儀式は、媽祖信仰がこの地で発展した貴重な文化資産であるとし、また活動の規模が徐々に拡大し、民間信仰が社会の変化と共に進化している重要な例であるとして、2011年に文化部が「大甲媽祖巡礼」を重要民俗文化資産に登録しました。

また、ディスカバリーチャンネルから「世界三大宗教行事の一つ」として取り上げられたほか、ユネスコの「世界無形文化遺産」にも登録されています。

そんな「媽祖」様が9日間かけて台湾中南部を巡る「大甲媽祖巡礼」は毎年、「媽祖」様の誕生日である旧暦の3月に行われますが、準備は実は旧正月が明ける「元宵節」から始まっていて、10の儀式が順に行われます。

まずは毎年、「元宵節」の夜に、「筊筶」が行われます。

これは、“ポエ”と呼ばれる赤い三日月のような形をした道具を使って、「媽祖」様に巡礼に出発する日時のお伺いを立て、日時を決定する儀式です。近年は旧暦の3月の第一日曜日の午前0時でお伺いを立て、もしお許しが出なければ、5分間隔で時間をずらし、お許しが出るまで再度お伺いを立てます。

それにより、今年(2021年)の「大甲媽祖巡礼」の出発は、4月9日夜11時05分となっています。

そして旧暦の2月19日には、巡礼を指揮するのぼり旗を立て、巡礼の始まりを宣言する儀式「豎旗」が行われます。

そして巡礼の前日、午後3時には巡礼の行程の無事を祈願する「祈安」の儀式が行われ、「媽祖」様を神輿に乗せる儀式「上轎」、そして出発日には「起駕」と呼ばれる担ぎ手が神輿を担いで正式に出発する式典が行われます。

出発後、3日目に嘉義県の新港奉天宮に到着すると「媽祖」様を神輿から降ろして廟内に安置する「駐駕」が行われます。

そして「媽祖」様が新港に到着した翌朝5時に奉天宮の正殿で幸福祈願の「祈福」が行われ、それが終わると午前8時から「祝寿」と呼ばれる「媽祖」様の生誕祝賀式典が盛大に行われます。

その後、大甲鎮瀾宮に戻るために再び「媽祖」様を神輿に乗せる「回駕」の儀式が行われ出発。

9日目に大甲鎮瀾宮へと戻り、全9日間の行程が終わった後は、「媽祖」様を鎮瀾宮の廟内に安置し、「媽祖」様のご加護に感謝を捧げる「安座」と呼ばれる儀式が執り行われ、今年の「大甲媽祖巡礼」が終了します。

その巡礼の道中では、共に巡礼する人々を迎えるためだけでなく、「媽祖」様のご加護にあずかろうと多くの人が集まります。

中には道の真ん中に跪いて「媽祖」様を乗せた神輿に自分の体の上を通ってもらおうとする人の姿もあります。

これは、「平和祈願」や「厄を払う」ための儀式となっています。

また、「媽祖」様が休憩で止まると、病気で苦しんでいる人の多くが「媽祖」様に水を乞いに来ます。これは「敬茶」という行為で、「媽祖」様にお供えした水には病を取り除く力があるとされ、回復を祈って「敬茶」を行います。

またこの他にも、これは比較的最近2000年から注目されるようになったそうですが、「媽祖」様がこれから通ることをお知らせする「報馬仔」が持っている赤い糸をもらうと良縁に恵まれるとしてもらいに行く人も多いそうですよ。

なお、巡礼に参加するにはいくつかのタブーもあって、出発3日前から巡礼が終わるまでは肉などは食べず「素食(精進料理)」で過ごします。

また巡礼期間中は禁酒、禁欲、賭け事も禁止です。

始めて参加する場合は、「媽祖」様への敬意を示すため新しい服を着て参加しましょう。

もし皆さんも今後、参加する機会がありましたら覚えておいてくださいね。

台湾最大規模の宗教行事の一つ「大甲媽祖巡礼」。2021年は今日、4月9日の夜11時05分から出発します。

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