文化の台湾 - 2021-03-12_大甲鎮瀾宮で58年ぶりに行われた「雨乞い法会」

  • 12 March, 2021
深刻な水不足に陥っている台湾では先日、台湾中部・台中市にある「大甲鎮瀾宮」で58年ぶりに“雨乞い法会”が行われた。この「大甲鎮瀾宮」に祀られている航海の女神である「媽祖」は巡礼をすると雨をもたらすことから別名「雨水媽」と呼ばれていることに由来する。(写真:CNA)

台湾は昨年、この56年で初めて台風の上陸が“ゼロ”でした。そしてそれも影響して、昨年から深刻な水不足となっています。

特に台湾の西側の降水量が非常に少なく、3月10日現在で、台湾の8割のダムで貯水率が50%を切っています。中でも台湾4番目の容量を誇り、台湾中部エリアの重要な水がめである台中市の德基ダムは二桁を切り貯水率9.7%、台南市にある白河ダムに至っては貯水率0%となっています。

ただ、白河ダムには裏に貯水池があって、地元の農業や水道水用としての水はまだ供給できているそうです。

しかし、それほどに全国的に水不足が続いている台湾。

ダムの管理など、水に関する事業を取りまとめる経済部水利署は、2月25日の時点で貯水量の状況を示す信号を、多くの自治体で“水道の水圧を下げて給水する”「減圧給水」を求める「黄色」信号となっていましたが、3月3日、新竹、苗栗、台中エリアに、初めて夜間だけでなく終日「減圧給水」実施に変更するよう要請しています。

そんなウォーターアラートが各地で出る中、農業用水などの管理を行う、行政院農業委員会農田水利署が、海の女神「媽祖」を祀る台中の有名な廟「大甲鎮瀾宮」に “雨乞い”を依頼し、先日3月7日に「雨乞い法会」がとり行われました。

日本でもかつて“雨乞い”の儀式が行われていたと聞きますが、今では行事として行われる以外では見かけることはありません。

台湾でも現在は見かけることはほとんどなかったのですが、今回、あまりに深刻な干ばつに、実に58年ぶりに「雨乞い法会」が行われることになったんです。

ただ、「雨乞い法会」はとても厳粛な儀式であることから、大甲の媽祖様に赤い三日月の形をした“ポエ”でお伺いをたて、お許しが出たので決定しました。

実はこの、「大甲鎮瀾宮」ではこれまでに3度「雨乞い法会」を行ったことがあるそうです。

最初は、清朝時代、続いて日本統治時代、そして民国52年(1963年)の3回です。以来、58年ぶりとなる「雨乞い法会」だったのですが、そもそも、なぜこの「大甲鎮瀾宮」で“雨乞い法会”が行われるのかというと、「大甲鎮瀾宮」の「媽祖」様は、いつも巡礼をすると雨をもたらすことから、別名「雨水媽(雨をもたらす媽祖様)」とも呼ばれていて、その力にお願いをしようというわけです。

ただ、何しろ58年ぶりですので、「大甲鎮瀾宮」の顏清標・董事長も、董事長に就任してから初めて“雨乞い法会”を行うとあって、廟側も急いで古い資料を調べ、一連の流れについて専門家らに相談を行ったそうです。

そして行われた「雨乞い法会」の儀式は、古いしきたりに基づいて「大甲鎮瀾宮」の広場に“雨乞い”のための祭壇や布製ののぼり、お供え物などを準備。朝8時に「大甲鎮瀾宮」に祀られている「媽祖」様のほか、「大甲鎮瀾宮」の3大神の一つ「貞節媽」と、農業医薬の神「神農大帝」が“雨乞い”のための祭壇に祀られ、午前9時から儀式がスタート。

およそ2時間にわたって儀式が行われ、最後に玉皇大帝に雨を降らせてもらえるよう“ポエ”でお伺いをたてたところ、すぐに“お許し”が出たため、「大甲鎮瀾宮」の顏清標・董事長らが跪いて3度頭を下げるという動作を3回繰り返す「三跪九叩(三跪九叩頭の礼)」で感謝を伝え、儀式は円満に終了しました。

「雨乞い法会」には、農業委員会農田水利署台中管理署の陳榮福・所長、台中市の盧秀燕・市長、台中市水利局の范世億・局長をはじめ、消防局長、民政局長、経済発展局長、農業局長、そして地域の議員や信者など3,000人あまりが全員白のシャツを身に纏い参列しました。

この白のシャツ姿というのは、かつて“雨乞い法会”の際には、皆「披麻戴孝」と呼ばれる、麻を羽織った白い喪服に、頭に白い布や麻をかぶっていて参列し、自責の念と悲しみを表すことで天に慈悲を求め、雨を降らせていたということから、今回、この“雨乞い法会”の参加者には全員「白シャツ」の着用を求めました。

また、古い文献には「商羊」と呼ばれる伝説の鳥が空を舞えば大雨をもたらすとされていました。民間の言い伝えでは「トンビ」が高く舞っていると雨が降る兆候だともされています。

そのようなことから、“雨乞い”の儀式ではのぼりに1羽の「商羊」を吊り下げます。ただ、この「商羊」は伝説の鳥のため作り物です。でもちゃんと伝説に沿って作られ、片足はまっすぐ伸び、もう一方の足はひらがなの“く”の字に縮めていて、まるで舞っている、踊っているかのようなスタイルとなっています。これは、伝説によると、「商羊」が片足を地面につけると雨が降るが、両足を地面につけると雨は降らないとされていることからだそうです。

その「商羊」がそばで舞う中、58年ぶりの「雨乞い法会」が滞りなく執り行われました。

実は、この「雨乞い法会」が行われる前日の3月6日に台中エリアではかなりの雨量の雨が降り、ネットでは「明日の“雨乞い”は必要なの?」、「神様はどうして大甲の媽祖様がため息をつくようなことを…」、「媽祖さまは先手を打たれることを知っていたの?」という声が上がった一方、「準備中にもう効果が出た!」という前向きな意見もありました。

実際、この「雨乞い法会」のために「大甲鎮瀾宮」の関係者は依頼を受けてからすぐに準備を始めていますし、顏清標・董事長も数日前から精進料理に切り替え準備を行ってきました。

その思いが天に届いて、ちょっとフライングしてしまったのかもしれませんね。

また、この「雨乞い法会」を政府側から依頼したことに、ネットでは「迷信的だ」と非難が上がったりもしましたが、「大甲鎮瀾宮」の顏清標・董事長は、「誰が来るか来ないかは関係ない。重要なのは雨を祈ろうとする真摯な気持ちだ」とし、台中市の盧秀燕・市長は、「皆さんが真摯な気持ちで祈ることによって、順調に雨が降ってくれることと、国民の平和と繁栄などを願い、全てが順調に行き、媽祖様がみんなの平和を守ってくれると信じている」とコメントしていました。

ちなみに、民俗学の専門家で、台中市にある台中教育大学台湾語文学部の林茂賢・准教授は、「かつてはこの『雨乞い法会』は地元の役人が主導で行っていた。なぜならば、古代においては一般の民衆は神様に向かっての儀式を行うことができず、皇帝から任命されている役人が主導していた」とし、そのため今回、農田水利署が主導で話を持ち掛けたのは「流れとして正しい」としています。

58年ぶりに行われた「雨乞い法会」は歴史的な行事となりました。

あとは、ダムの貯水量が満たされる雨が降ってくれることを願っています。

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