文化の台湾 - 2021-01-08_台湾の芸術集団「福爾摩沙馬戲團 Formosa Circus Art」

  • 08 January, 2021
2021年1月1日に総統府前広場で行われた「国旗掲揚式典」にて初めてパフォーマンスを披露した福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)。その革新的かつ独創的なダンスで多くの人を魅了した。(写真:CNA)

2021年1月1日の早朝、台北市の総統府前広場では、「開国記念日」を祝うセレモニーと国旗掲揚式典が行われました。この式典は毎年一般市民にも開放され朝早くから多くの人が集まるのですが、今年は新型コロナの防疫対策として一般市民への開放は中止となり、関係者のみの参加となりました。

今年の国旗掲揚式は、「2021台灣有你(台湾にはあなたがいる)」をテーマに行われ、台湾の人々に感謝と新年の祝福を届けるとともに、引き続き団結して、今年、台湾にさらなる誇りをもたらすことへの期待を示しました。

その国旗掲揚式のセレモニーでは毎年、テーマに沿ったパフォーマンスも行われるのですが、今年、初めて参加し、革新的かつ独創的なダンスで“創造は無限であり、夢に向かって果敢に挑む精神”を力強く、そして美しく表現し、多くの人を魅了したチームがいました。そのチームの名前は、「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」─。

今週は、その「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」についてご紹介しましょう。

「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」は、2011年に創設された台湾の芸術パフォーマンス集団。台湾の伝統文化や地域文化、ストリート文化や劇場アートなどを融合させ、台湾の多様な現代サーカスアートを生み出しています。

“サーカス”と聞くと、動物などが登場するショーをイメージする人もいるかもしれませんが、“現代サーカス”とは、演劇やダンス、美術など、あらゆるアートを取り込んだ総合芸術のことです。

「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」も、メンバーはそれぞれ違った分野のパフォーマーが集まっていて、ある人はジャグリング、ある人はディアボロ、ある人はストリートダンス、ある人はコンテンポラリーダンス、またある人は演劇…と、様々。そんなメンバーが、時にはソロや、少人数で、時には今回の式典のように集団で、様々な要素を取り入れたパフォーマンスを披露します。

そんな「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」を立ち上げたのは林智偉さん、現在33歳─。

3歳の時に父親を亡くし、母親は一人で林智偉さんを含む3人の子供を育てました。その母親の負担を減らそうと、林智偉さんは10歳で家を出て、京劇(チャイニーズオペラ)などの伝統的な演劇の人材を育成する学校である国立復興演劇実験学校に入り、必死でアクロバットを練習し、後に体育大学へと進学します。この国立復興演劇実験学校は、現在の「國立臺灣戲曲學院」の前身です。

その間、先輩に連れられて、仕事を引き受けてはお金を稼いでいました。児童劇をメインとする台湾の有名な劇団「紙風車劇團(かざぐるま劇団)」に出演したことや、台湾で最も有名なコンテンポラリー・ダンス・カンパニー「雲門舞集(クラウド・ゲート・ダンスシアター)」の契約ダンサーになったこともあります。

しかし、「紙風車劇團(かざぐるま劇団)」に出演したとき、宙返りをするとたくさんの拍手をもらえるのに、劇団ではずっと脇役…。そのことに「なぜこの特技では主役になれないのか?」と思ったんだそうです。

以前は、国立復興演劇実験学校を出たら、遊園地や民俗村などの大道芸や、子供パレードに出たり、スタントマンとして働くくらいしかなく、彼も例外ではありませんでした。その時、「すごい!とたくさんの拍手をしてくれたが、君はピエロだと言われては心が折れ、休憩室ももらえなかった」りしたそうで、自分たちがパフォーマーや芸術家として見られないのがとても悔しかったそうです。

そこで2011年に、林智偉さんは自身とはまた違った分野のパフォーマンスを得意とする仲間数人とともに「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」の前身である「Mix舞動劇坊(ミックス・アクロバティックシアター)」を創設しました。

当時、まだ大学生だった彼らは、とても熱く、怖いもの知らずの勢いで、2012年に台北市の西門エリアの歴史ある文化イベント会場の「中山堂」で初公演を開催。自信満々で行ったのですが、結果は100万元(日本円およそ370万円)もの負債を抱えてしまいました。

しかし、この公演が彼らのターニングポイントとなります。

実は、その公演にちょうどフランスのサーカス・キュレーターが来ていたのです。そして、翌年の3月にフランスで行われるオベルネ芸術祭での公演に招かれました。彼らは「騙されているのではないか?」と疑ったりもしたようですが、翌年、本当に招待が来て、それをきっかけに知名度が一気に高まりました。

それとともに、世界のパフォーマンスを見て林智偉さんの中にも変化が生まれました。

フランスのアヴィニョン演劇祭で見た海外のパフォーマーは、ボールを投げたり椅子を組み上げたりすることなく、たったの2人で1時間、観客を魅了し続けていました。それを見て、パフォーマンスには必ずしも人海戦術が必要というわけでなく、構成や思いを伝えるものだと考えるようになったそうです。

知名度が上がってからは、パフォーマンスの機会も急増。ただ、あまりに忙しくなり、時には友達に手伝ってもらうなどし、パフォーマンスのクオリティにばらつきが出てきてしまいました。

というのも、パフォーマンスの仕事は収入が不安定で流動的ということで、まだ当時は別で仕事をしながらのメンバーもいたためです。

そこで林智偉さんは、「食べていけないのであれば、一緒に創造したり夢を追ったりできるはずがない」と、2014年に「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」は“月給制”をはじめました。

台湾で“月給制”を取ることができる団体は数えるほどしかありません。ですが、「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」は最低賃金を設定し、出演ごとにギャラを加算するという方式をはじめました。

これにより、あるメンバーは家業を継ぐことも考えていたが、夢を追うことにしたり、またあるメンバーは家庭の事情で稼がなくてはならず続けていっていいものか悩んでいたところだったが、ようやく夢を追う決心がついた等、多くのメンバーが生活についての不安を抱えることがなくなったそうです。

その後も、台湾のみならず世界各地で公演を行っている「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」。

2018年には日本の香川県で行われた「瀬戸内海サーカスファクトリー」にも参加、また昨年2020年は、まだ新型コロナで海外への渡航が制限される前に大阪と横浜でもパフォーマンスを披露し、日本でも多くの人を魅了しました。

今は新型コロナの影響で、彼らも海外公演に行くことができませんが、林智偉さんの中にある今、最大の計画は、自分たちのサーカスプラットホームを作ることだそうです。

台湾の有名な劇場や芸術センターも彼らに興味を持っているそうですが、運営チームが変わると延長できなくなるかもしれないということを考え、「自分たちでサーカススタジオを購入して自分たちの作品を上映する」計画だそうで、さらには、教育や慈善事業、地方事業なども含めて、サーカススタジオが生活の一部に、生活の一部にサーカススタジオがあるようにしていきたいとしています。

海外への渡航が解禁になったらまた日本でも公演が見られるかもしれませんし、そのころには台湾に来れば「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」の常設会場ができているかもしれません。

様々な分野のアートを組み合わせた素晴らしいパフォーマンスで、芸術パフォーマーたちも“アーティスト”の位置に押し上げた、台湾の芸術パフォーマンス集団「福爾摩沙馬戲團(フォルモササーカスアート)」。今年、創設から10周年の節目を迎え、11年目となる彼らの活躍にこれからも注目です。

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