文化の台湾 - 2020-11-20_台湾版“アカデミー賞”「金馬奨」

  • 20 November, 2020
  • 林 蕙如
“台湾版アカデミー賞”と呼ばれる「金馬獎」。今年(2020年)の受賞式典は11月21日に国父紀念堂で行われる。(写真:金馬獎執行委員会オフィシャルサイトより)

明日、11月21日は、年に一度の中華圏の映画の祭典「金馬獎(ゴールデン・ホース・アワード)」の今年の授賞式が行われます。そこで今週のこの時間は、「金馬獎」についてご紹介しましょう。

中国語映画における映画賞は、1956年5月1日に、行政院新聞局が“優れた中国語作品を撮った海外の中国語映画に賞を与える”としたのが最初とされています。当時、中国語の映画のほとんどは香港で撮影されていたことから、香港の映画人たちが中国大陸を支持した作品に傾倒していくのを防ぎ、台湾の政治的姿勢に寄り添う映画を作るようにするという目的や、香港の映画会社が台湾で上映するための購売決済証明の為替損失を補うために始まりました。

「金馬獎」としてのルーツは、台湾語映画が盛り上がりを見せていた1957年。現在の「中国時報」の前身である新聞社が主催した、「第一回 台湾語映画展」で、「台湾語映画金馬獎」が与えられました。ただ、この「台湾語映画金馬獎」は、たった1回で終了となってしましました。

その後、1962年に、行政院新聞局が主催で、初の「優良中国語映画金馬奨受賞式典」が行われ、「金馬獎」が正式に誕生しました。

創設された当初は、政府が映画の国内政策の推進と、優秀な映画人たちを認め表彰するためのコンテストでしたが、1979年に、専門的、芸術的、そして国際的を目標として、国際的に有名な映画人を受賞式典に招待したり、海外の映画の鑑賞展覧会を行ったり、座談会を設けるなどしたほか、先にノミネートリストを発表し、受賞式で受賞者を発表するという現在の「金馬獎」のスタイルとなりました。

そして1990年に民間の「台北金馬国際影展執行委員會」と、「中華民国電影基金會」が創設、「金馬獎」の常設機構が誕生しました。1992年に「台北金馬影展執行委員會」に名前を変え、1996年には中国語映画の範囲を広げ、中国大陸やアメリカ、カナダなど世界の中国語映画へと拡大した賞となりました。

現在では、“台湾版アカデミー賞”と呼ばれるほど、世界を代表する中国語映画賞となっています。また、“台湾版グラミー賞”と呼ばれる「金曲獎(ゴールデン・メロディー・アワード)」、台湾のテレビ・ラジオ番組賞「金鐘獎(ゴールデン・ベル・アワード)」と併せて“台湾三大娯楽賞”「三金」と呼ばれています。

ところで、この“中国語映画賞”はどうして「金馬獎」と呼ばれるようになったのでしょうか。

“台湾版グラミー賞”と呼ばれる「金曲奨」は、“金”=“ゴールド”、“曲”=“音楽”で、何となく理解できますよね。では、「金馬獎」はどうでしょう?映画と“馬”は何か関係があるのでしょうか?

「金馬獎」のオフィシャルサイトの説明によると、「金馬獎」という名前は、台湾の離島「金門」と「馬祖」の頭の文字を一つずつ取ってつけたそうです。当時、「金門」と「馬祖」は軍事最前線で、そこから政府は映画制作者たちに最前線で奮闘する国軍のように奮起してほしいと期待してその名をつけたんだそうです。それに世界的な主要な映画賞がみな素晴らしいという意味で「ゴールデン(=金)」という冠をつけていることにもあっているということも理由のようです。

以前、このコーナーで「台湾の兵役制度」についてご紹介した際に、任務地の抽選で「金門」「馬祖」に当たってしまうことを、この台湾版アカデミー賞「金馬獎」にかけて「金馬獎に選ばれる」と言っていたという話を紹介しましたが、映画賞の「金馬獎」からもじってそう言われるようになったとされていますが、もともとは実はまさにその場所の名前から来ていたんですね。

さて、今年の「金馬獎」は第57回目を迎えます。昨年は、その前の年の「金馬獎」で、2014年に台湾で起こった“ひまわり運動”と呼ばれる、学生たちによる民主化運動を追ったドキュメンタリー映画が受賞したことを受け、中国側が「金馬獎」への参加を見送るということが起こりました。

今年はどうなのかと気にしている人も多く、今年のノミネートリストが発表された際、リストを詳しく見る前に、「中国の映画は?」「台湾内だけでのお遊びになったのか?」「中国語映画の未来はどうなる」などという声も上がりましたが、実際にノミネートリストをちゃんと見ると、2011年に中国の広東省に属する烏坎という村で発生した、村民委員会の不明朗な土地取引を発端に、村民と警察の激しい衝突を経て、村民が村民委員会を選ぶ直接選挙を行えるようになった一連の事件を映画化したドキュメンタリー映画「迷航 (Lost Course)」や、香港立法会への突入を描いた「佔領立法會(Taking back the Legislature)」というドキュメンタリー映画もノミネートされています。

「金馬獎」は、エントリーがあれば中国の映画だからと言って排除することはせず、制作者が授賞式に出席するかどうかにかかわらず、良い作品には賞を与えるというスタンスだとしています。

なお、今年の「金馬獎」で最も注目を集めているのがファンタジー恋愛コメディ映画「消失的情人節(消えたバレンタイン)」。長編映画賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、オリジナル脚本賞、撮影賞、視覚効果賞、美術デザイン賞、編集賞、楽曲賞、サウンドトラック賞と、今年の「金馬獎」最多の11の賞にノミネートされています。

恋も仕事もいまいちパッとしない郵便局で働くアラサー独身女子、曉淇は、毎日同じようなことの繰り返しのつまらない生活を送っていました。ちょっと気になることと言えば、毎日のように郵便局に謎の手紙を送りに来る変わった運転手がいることくらい。そんな中、バレンタインデーが近づいてきたころ、憧れの男性からデートに誘われます。独身から抜け出せるかもと期待していましたが、目覚めるとあれだけ期待していたバレンタインデーの記憶がすっぽりと完全に消えていました。バレンタインデーの日に一体何があったのか?曉淇は、その失った記憶を探し出し、自分の幸せを取り返そう決意します─。

物語の鍵となる運転手を演じる劉冠廷は過去に「金馬獎」で受賞したことのある実力派俳優、そして郵便局に勤める曉淇を演じるのは「金鐘獎」で最優秀司会者に選ばれたことのある李霈瑜(Patty Lee)。

監督は、「熱帯魚」「愛情來了」「總鋪師」「健忘村」など、暖かでユーモラスな映画が特徴の陳玉勳。

陳監督によると、この映画は20年前に書いた恋愛ストーリーだそうですが、当時は投資者が見つからず、埃を被った状態になっていたそうですが、20年の時を経て、物語を組み直したんだそうです。

さぁ、注目の映画「消失的情人節(消えたバレンタイン)」は、いくつの賞を受賞するのでしょうか、楽しみです。

毎年、この時期に行われる中国語映画の祭典、「金馬獎」。57回目の今年の授賞式は明日、11月21日(土)、台北市の国父記念館で行われます。

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