文化の台湾 - 2020-11-13_台湾の“立冬”の習慣

  • 13 November, 2020
  • 林 蕙如
鍋の恋しい季節。台湾は立冬になると「麻油雞」「羊肉爐」「薑母鴨」を食べて身体を温め栄養を蓄える習慣がある。なお「麻油雞」は屋台で1人前でも食べられる。(写真:CNA)

台湾では先日、台風が台湾南部をかすめた日、まるで夏に舞い戻ってしまったかのように暑い日となりましたが、それ以外は朝晩だけでなく日中も随分と寒くなってきました。それもそのはず、先週末、11月7日は二十四節気の「立冬」でした。つまり、暦の上ではもう「冬」なんですね。

台湾は日本よりも南に位置していることから“温かい”というイメージがあるかもしれませんが、台湾の北部から中部にかけては結構しっかりと四季を感じられます。大体、このくらいの時期から気温がぐっと下がってきます。もちろん日本の北部の気温とはくらべものにはなりませんが、台湾の冬は、ぐっと寒くなったかと思うと、急に暖かい日が舞い戻ってきたりと、日々の温度差があることが多いので、身体が気候についていかなくて大変です。また、北部・台北は盆地ということもあり、冬は雨が多く、湿度も高いため、体感温度が実際の気温より低く感じます。

そんな“冬”を健康に乗り切ろうと、台湾では「立冬」には様々な習慣があるようです。まずは“食”に関して。中華圏では「立冬補冬,補嘴空」という諺があります。これは、「冬になると寒くなってくるので、栄養をしっかり蓄えておく必要がある」という意味。そこで、カロリーの比較的高い食品や、栄養価の高い食べ物、そして温かいものを食べます。中でも“歲寒三友” “三大進補美食(三大栄養補給美食)”と呼ばれ、この時期、台湾の人たちが必ずと言っていいほど食べるのが「麻油雞」「羊肉爐」「薑母鴨」。

「麻油雞」は、鶏肉とごま油、しょうが、米酒を入れて煮込んだ漢方スープ。米酒がたっぷり入っているので、食べると体がぽかぽかとしてきます。栄養も満点なので、台湾では出産後の女性の回復食としてよく登場する台湾の家庭料理です。また、家だけでなく、夜市の屋台などでも気軽に食べられるあったかメニューです。

「羊肉爐」は、クコの実やナツメなどが入った漢方スープで煮込んだ“ヤギ肉”の薬膳鍋。そう!実は“羊”という字を書きますが、台湾では一般的に“羊肉”と書くお肉は“ヤギ”のお肉を指すことのほうが多いようです。

実は私もずっと「羊肉爐」のお肉は“羊肉(ラム肉)”だと思って食べていました…。よく見てみると、「羊肉爐」お店の看板にも“ヒツジ”ではなく“ヤギ”のイラストが描いてありました。

“ヤギ肉”は、栄養が豊富なうえに、豚肉や牛肉と比べて脂肪やコレステロール値が低く、さらには消化しやすいことが特徴で、「長生きしたいなら“ヤギ肉”を食べろ」と言われるほど。昔から冬の栄養補給のための重要な食品なんだそうです。そんな“ヤギ肉”をじっくりと煮込んだ鍋は、お肉もあまりクセもなく、しかも漢方スープで体も芯から温まります。

そして「薑母鴨」は、台湾の冬の鍋の代表格!生姜とアヒル肉を炒めて、そこに米酒、ごま油、漢方などを入れて煮込んだ鍋です。スープはちょっと「麻油雞」とも似ていますが、「薑母鴨」の方がコクがあります。しかも「薑母鴨」は壺のような鍋にアヒルが丸ごと1匹入っているので、初めて食べたときはくちばしの部分をつかみ取って驚いたことがあります。こちらも漢方食材がたっぷり入っていて、栄養もたっぷり、身体もしっかりと温まります。「薑母鴨」のお店は秋冬しか営業せず、温かくなると店を閉めてしまうところがほとんどで、まさに冬を代表する鍋料理です。

この3つの薬膳鍋はまさに冬にピッタリです!そして台湾の人たちは、これらの薬膳鍋を食べるときに、ごま油と油蔥酥(揚げた台湾エシャロット)で炒めて味付けをした“素麺”を一緒にオーダーするのが定番だそうで、そのまま食べたり、鍋のスープに入れて食べたりします。私も教えてもらった後、スープに素麺を入れて食べる食べ方がお気に入りです。

この“三大進補美食(三大栄養補給美食)”のほかにも、ハトムギや鬼蓮(オニバス)の実、ハスの実、山芋などが入った簡単に栄養が取れる“四神湯”はお店によっては日本語の名前が“健康スープ”と書かれているように、胃などを整えてくれることからこの時期特におススメされますし、牛乳や豆乳、はちみつを摂ることも身体の保温のベースを作るのに効果的とされています。

日本では“冬の始まり”である「立冬」に行うこれと言った習慣はありませんが、台湾では「立冬」には“冬に備えて栄養を補給しておく”という昔からの習慣があるんですね。

ちなみに、台湾の「立冬」の習慣は“食”だけではありません。

寒くなってくると、陰陽五行の“火”の色を取り入れるといいとされています。“火”の色とは、赤、ピンク、紫、赤紫、オレンジといった暖色系のこと。この系の色を身に着けると、顔色もよくなり、いきいきと見え、自身の心も明るくなり運気も上がるとされることから、この時期は、暖色系の服を着て、家の照明も暖色系のものにし、カーテンや枕カバー、布団カバーなども暖色系の色にするといいと言われています。どうりで、冬になると赤やピンクの服を着た方をよく見かけるようになるんですね。

寒くなってきた今、皆さんもぜひ台湾の習慣を真似て、栄養たっぷりの鍋を食べ、暖色系を取り入れて、心も身体も温めてみてはいかがでしょうか。

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