文化の台湾 - 2020-10-14_古い建物をリノベーションし、新しい建物と融合した「嘉義市立美術館」が完成

  • 14 October, 2020
  • 林 蕙如
嘉義市指定古跡である「菸酒公賣局嘉義分局」をリノベーションして誕生した「嘉義市立美術館」。初代館長はイギリスで博士の学位を取得した嘉義出身の若き女性・賴依欣さん(左から4番目)。嘉義市の黄敏恵・市長も、彼女のキュレーターとしての優れた企画力や管理能力に期待しているとした。(写真:CNA)

台湾の街を歩いていると、どこか懐かしいと感じる建物と出会うことがよくあります。近年、台湾では古いものをただ取り壊して新しいものに建て直すのではなく、文化的価値のあるものは改修して、新たな文化施設として再利用する動きがとても盛んです。

たとえば、日本統治時代に酒造工場だった場所と建物をリノベーションした「華山1914文化クリエイティブパーク」や、台北随一の繁華街・信義区にある、かつてのタバコ工場だった場所と建物をリノベーションした「松山文化クリエイティブパーク」は、共に昔の建物をそのまま生かしつつ、アートスペースや、イベントホール、カフェ、セレクトショップなどが入り、流行やアートの発信基地として注目の場所となっています。

台北だけではありません。去年(2019年)の11月に台湾の女優・林志玲とEXILEのAKIRAが結婚披露パーティを行った台湾南部・台南にある台南市美術館、あそこも、日本統治時代に建てられた建物で、2010年まで台南市警察局庁舎として使われていた台南市指定の古跡をリニューアルしたものです。

そして今回、台湾南部・嘉義市にある、嘉義市の指定古跡である菸酒公賣局嘉義分局(タバコ・酒専売局嘉義支局)がリノベーションされて「嘉義市立美術館」に生まれ変わり、10月6日に正式にオープンしました!

この菸酒公賣局(タバコ・酒専売局)とは、タバコや酒の生産、流通から販売までを担っていた事業所のことで、台湾のタバコ・酒専売事業は、1900年に始まりました。嘉義支局は1924年に設立。雲林、嘉義、台南の3つの県市のタバコ・酒専売事業を管轄していました。そしてこのタバコ・酒専売局嘉義支局は1936年に建てられた3階建て鉄筋コンクリート作りの建物です。

この建物を設計したのは、現在は台南市美術館となっている台南市の指定古跡、旧「台南警察署」や、同じく台南市の指定古跡になっている「ハヤシ百貨店」などを手がけた梅澤捨次郎─。

タバコ・酒専売局嘉義支局の外観は角を曲線にした丸みを帯びた形で、入り口は内に入り込んだデザイン。基礎部分が少し高くなっていて、階段を数段上って入るようになっています。また、窓は鮮やかな緑色の枠が目を引く、上下にスライドさせて開け閉めするタイプで、レンガの外観ととてもマッチしています。中は、2階、3階の階段の脇には美しい八角形の柱があるほか、階段の壁には格子縞の通風孔があるなど、シンプルでありながら優雅な雰囲気を醸し出しています。

1947年に起こった、当時の国民政府軍による市民への流血鎮圧事件、「二二八事件」の際には、外壁の窓や扉は砲兵の要塞として使用するために作り変えられた歴史もあります。その後、元通りに修復が行われ、2000年に嘉義市の指定古跡に認定されました。そしてそれから美術館とするための準備を開始。歴史的建造物のリノベーションとなるので、建物自体の魅力は残し、空調や消防設備、照明、トイレなどの機能向上を目的とした工事を行いました。

また、この古跡に指定されている建物のほかに、1954年に完成した酒類の倉庫や、1978年に建てられたタバコ・酒類の倉庫などもリニューアル。

台湾の著名な建築家である黃明威氏と王銘顯氏が共同で企画設計。新たに建設された建物は天井の高い吹き抜け空間となっていて、そこには“木材の都”と呼ばれる嘉義の特長を生かし、無垢材をいくつも使用し、建物の構造としています。また、一見新しい建物でありながら、内部は古い建物を生かしていたりと、新旧の建物を融合させたつくりとなっています。

そして、これらの建物に囲まれたスペースは緑とベンチのある中庭が作られていて、お天気のいい日はそこでゆっくりとした時間も過ごせます。

嘉義に人が集う新たな文化発信基地の誕生です。

ちなみに、実は嘉義は「畫都(絵の都)」とも呼ばれています。なぜかというと、1938年に初めて行われた台湾総督府美術展覧会「府展」で、入選した作品のうち2割を嘉義の画家が占めていたことから、当時の台湾日日新報で「嘉義乃畫都,入選者占二成(嘉義は絵の都、入選者の2割を占める)」という見出しで報じられたのがきっかけなんだそうです。この「府展」からは陳澄波や林玉山など嘉義出身の著名な画家を輩出しました。

そんな「絵の都」・嘉義に新たに誕生した嘉義市立美術館の初代・館長に就任した人も嘉義出身の賴依欣さん。嘉義市の黃敏惠・市長は「嘉義市は非常に芸術文化を重視している」とし、「“絵の都”の名の通り、芸術界の先駆者たちが嘉義市に貢献してきており、“芸術の中心は嘉義”となった。嘉義市立美術館は嘉義市にとって最も重要な建設のひとつだ。そこの館長として私たちは賴依欣・館長を探し出した。イギリスで博士の学位を取得した嘉義出身の若き女性だ。私たちは彼女の国際感やキュレーターとしての優れた企画力や管理能力、クリエイティブさに期待している。」と紹介しています。

台湾は古いものをうまく活用することに長けているだけでなく、新たな感覚を取り入れるのにも積極的です。

嘉義は、1931年甲子園球場で準優勝を果たした台湾の野球チーム、嘉義農林の物語をベースにした映画「KANO」と、B級グルメの雞肉飯だけではありません!次に嘉義を訪れる際には、「絵の都」とも呼ばれる、芸術の街・嘉義を楽しんでみてください。

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