文化の台湾 - 2020-08-26_台湾版「ナミヤ雑貨店」舞台

  • 26 August, 2020
  • 林 蕙如
東野圭吾・原作「ナミヤ雑貨店の奇蹟」の台湾版舞台「解憂雜貨店」は9月4日から9月20日まで水源劇場で行われる。

 以前、このコーナーで「台湾は本がとても身近な印象」で、しかも「日本の本を翻訳した書籍も多く目にする」とご紹介した事がありますが、台湾で人気の日本人作家といえば?と質問したときにすぐに名前が挙がってくる作家の一人が「東野圭吾」─。「手紙」や「秘密」、「容疑者Xの献身」など、映画化やドラマ化された作品も多い人気ミステリー作家ですよね。台湾でも彼の作品はとても人気で、映像化された作品だけでなく、それ以外にも彼の多くの本が中国語に翻訳されて販売されています。

そんな台湾で人気の作家「東野圭吾」の作品が、今度は台湾で舞台化されます。今週は、その台湾で行われる「東野圭吾」作品の舞台についてご紹介しましょう。

今回、台湾で舞台化される「東野圭吾」作品は、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」。KADOKAWAが発行する月刊誌『小説 野性時代』で2011年4月号から12月号まで連載され、2012年に単行本が出版。全世界で累計部数1,300万部を突破した人気ベストセラー長編小説です。

『悪事をはたらいた3人の少年が逃げ込んだのは、1軒のずいぶん前に廃業したであろう雑貨店でした。そこはかつて悩み相談を請け負っていた「ナミヤ雑貨店」。“夜、相談事を書いた手紙をシャッターの郵便口から投げ込んでおけば、翌日には店の裏にある牛乳箱に回答が入っている”と噂になっていたとか。しかし、もうとっくに廃業しているはずなのに突然、シャッターの郵便口から手紙が。どうやら時空を越えて、過去から手紙が投函された事に気付く3人。戸惑いながらも返事を書くうちに、自分自身とほかの人の運命が見えない線でつながっているように見える事に気付きます。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係とは。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇跡を起こせるのでしょうか…』

本ではそれぞれの章が短編小説のようになっていますが、各章に出てきた人物や出来事が絡み合って、ひとつの大きなストーリーとなっています。

2017年にはこの小説を原作とした映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が公開。台湾でも公開され話題となりました。そのあと2018年にはこの小説からインスパイアされたお悩み相談ポストが台湾東部・台東県の成功漁港灯台のそばに期間限定で設置されるなど、ちょっとしたブームも巻き起こりました。しかもこのときのポスト、実はフォントデザイン会社の威鋒數位(DynaComware)と台東県の成功鎮が協力し、台湾唯一の「成功をもたらすポスト」として設置されたもので、返信は、芸術文化、音楽、教育、建築、出版など、様々なジャンルの名人16名がそれぞれの経験を元に書いていたそうです。

それほどに台湾の人たちにも影響を与えた作品が、このたび台湾で舞台化されます!その舞台化をするのは、台湾の劇団「果陀劇場(Godot Theatre Company)」。日本では2013年に演劇集団キャラメルボックスによる舞台版が上演、2016年には「ネビュラプロジェクト&ぴあ&シアターBRAVA! presents」版として、そして2017年にはミュージカル版として上演されましたが、今回、台湾の「果陀劇場(Godot Theatre Company)」が日本から正式に舞台化の認可を得て、台湾のキャストで、中国語で上演します。

台湾にも様々な舞台劇を行う団体がありますが、これまで「舞台劇」というと、舞台的なアクセント口調の台詞や、オーバーなアクションや表情…そして“文学的”で、“とても真面目”で、“ちょっと斬新”というイメージと言う人も多かったのですが、最近では「舞台劇」も多元化し、ここ数年、台湾でも人気が高まっています。そして今回、この「ナミヤ雑貨店」を台湾で舞台化する劇団「果陀劇場(Godot Theatre Company)」はその中でも、海外の名作を台湾バージョンにした舞台を行うなど、人気の劇団です。

この「果陀劇場(Godot Theatre Company)」は、1988年に一幕劇「動物園的故事」の上演をきっかけに誕生した劇団です。そこから32年にわたり、80あまりの作品を上演してきました。内容は古今東西を網羅していますが、「観に来てくれたお客さん一人ひとりと舞台の上の素敵な世界を共有する事」という信念の元に創作活動を続けています。

今回の舞台で、「ナミヤ雑貨店」の店長を演じる、台湾のベテラン俳優・張復建氏は、4年ぶりの舞台出演。このことについて張復建氏は、「舞台というのは役者は長い時間感覚的な精神エネルギーを投入する必要があり、非常に苦労する。それがゆえにこんなに久しぶりになった。しかしこの「ナミヤ雑貨店」のオファーを受けた際、色々考えることなくすぐに受けた。これは非常に素晴らしい脚本だ。原作者の人の世への深い愛情を感じた。役の解釈がとても楽しみであり、より多くの観客にこの感動を伝える事ができる。そして皆さんがこの作品を通して“勇気を取り戻す希望はまだある”ということを伝える事ができ、生きるエネルギーを持つことができる。」と語っています。

今年の上半期は台湾の演劇業界も新型コロナの影響を大きく受けました。この「果陀劇場(Godot Theatre Company)」も4ヶ月に渡って公演が中止となり、損失は2,000万台湾元(日本円およそ7,200万円)にも達しています。ただ、「果陀劇場(Godot Theatre Company)」の林靈玉・執行長は、「あきらめなければ次のチャンスは必ずある。「果陀劇場(Godot Theatre Company)」は下半期、日本の正式な承認を受けて、感動の心を癒される作品「ナミヤ雑貨店」を上演する事ができる」と語りました。

「果陀劇場(Godot Theatre Company)」は、1999年は「921地震」の影響で劇団全体の損失が2600万元を超え、2007年は台風の影響で3度の延期、3度の取り消しとなり、賠償額が1600万元。そして今度は新型コロナによる損失が6月までですでに2000万元に。

人からは、舞台劇の演出方式をネットと連動して、家で楽しむようにしてはどうかとの提案もあったそうですが、「果陀劇場(Godot Theatre Company)」の葉向華・COOは、「舞台劇は毎回現場の状況で変わる。観客のいない演出は、現場のライブ感が消えてしまう」として舞台にこだわっています。

新型コロナの収束が見えない中、海外でも多くの劇団が債務危機などに陥っており、劇団員のリストラなどが行われる中、台湾では新型コロナの押さえ込みに成功している事から、幸いな事に公演がいよいよ正常に戻せるとして、この舞台「ナミヤ雑貨店」の公演は舞台劇ファンだけでなく、劇団の人たちも待ちわびている瞬間です。

台湾版舞台「ナミヤ雑貨店」は台北市の南西部、台湾大学の向かいにある「水源劇場」にて9月4日から9月20日まで行われます。

時空を超え、過去とつながるこの作品が、今度は国境を越えて、言語の枠も超えて、一体どのような舞台になるのか気になりますね。

今は観劇のために台湾を訪れる事はできませんが、これからも台湾の舞台劇に大いに注目です!

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