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文化の台湾 - 2020-08-19_台湾のお盆「鬼月」

  • 19 August, 2020
文化の台湾
毎年、「鬼月」バージョンが話題となる全聯(pxマート)のCM。今年は台湾の有名な霊たちが人間と一対一で語る。実は怖いどころかやさしい霊たちが人気だ。(写真:pxマートのフェイスブックページよりスクリーンショット)

トーク①:台湾のお盆「鬼月」≫

今年もこの時期がやってきました。台湾のお盆「鬼月」です。日本では「お盆」というと一般的には8月13日から15日の3日間ですが、台湾では1ヶ月にわたってご先祖様の霊を迎えます。台湾の民間行事は旧暦で動いているため、旧暦の7月がお盆・「鬼月」。今年は今日、8月19日から9月16日までで、今日、旧暦の7月1日からあの世との境である扉が開き、旧暦の7月15日(今年は9月2日)の「中元節」に日本の盂蘭盆会のような宗教行事が行われ、旧暦の7月末(今年は9月16日)に扉が閉まります。この、あの世との扉が開いている間に、ご先祖様の霊や、多くの「好兄弟」と呼ばれる無縁仏たちがこの世にやってきます。

そこで、ご先祖様たちに失礼のないように、そして「好兄弟」たちにいたずらされないように、三牲と呼ばれる、鶏、豚、魚のお供え物、果物、そして現代ではお菓子やジュースなど、沢山のお供え物を準備して霊たちを迎えるんです。

かつては「鬼月」の1ヶ月間、地域ごとに交代で毎日、中元節の法事を行っていたそうですが、今ではこの1ヶ月のうちの重要な日にお参りします。

まずは今日、“鬼”の“門”、「鬼門」が開く旧暦の7月1日。

台湾では日ごろから旧暦の1日と15日、商売をやっている店や会社なら2日と16日に家や会社でお供え物を並べて神様にお祈りをするのですが、この旧暦の7月1日は「好兄弟」のために準備します。午後2時から5時の間、家や会社、お店の入り口に心ばかりの「お迎えの料理」を準備します。この料理はそんなに豪華な料理を準備する必要はなく、ちょっとしたお菓子を準備するといいそうです。ただ、それよりも忘れてはならないのが、タオル、歯ブラシ、歯磨き粉、石鹸、鏡といった日用品。なぜかと言うと、やってきた「好兄弟」たちがちょっと休憩して身繕いをし、目的地へ向かうための準備をしてあげるんだそうですよ。そして最後に「紙錢」=お金の代わりのもので、日本語では「冥銭」と呼ばれるものを燃やすことで、旧暦の7月は「慈悲深い月である」として、「好兄弟」たちに“救済”、“助け合い”、“互いに尊重する精神”を持たせるという意味があるそうです。

2つ目の日は、旧暦の7月7日。

この日は台湾の「七夕」です。先日、このコーナーでもご紹介しましたが「七娘媽」と呼ぶ「織姫」の誕生日に、子供が健やかに育ちますようにと祈ります。

そして3つ目の日は、「中元普渡」。

これはご先祖様と無縁仏の霊を祀る儀式で、一般的には旧暦7月15日の午後から夕方の空が暗くなる前の時間に行います。そして、鶏、魚、肉、野菜、ご飯、お菓子、ジュースやビール、タバコといったものをお供え物として準備します。そして、そのお供え物それぞれにお線香を挿し、「好兄弟」たちに食べていいですよとお知らせをします。そしてお線香が焚き終わった後、お供え物を皆で分けます。そのため、「中元普渡」の後は、オフィスのデスクもおやつがいっぱいになって、ちょっとワクワクします。

そして、「鬼門」が閉まる旧暦の7月の最後の日。この日は、寺院などでは燈篭を片付け、儀式を行い、「好兄弟」たちに、1ヶ月経ったのであの世に戻る時間だということを知らせるという意味があるんだそうです。

皆、「好兄弟」たちのためにもいろんなもてなしをしていますが、なんだか、「好兄弟」たちは「鬼門」が開いた瞬間から閉まるぎりぎりまでこの世を楽しんでいるようにみえて、まるで1ヶ月の旅行に出かけている人たちのようだと思えてしまうのは私だけでしょうか…。でもその「好兄弟」たちも丁寧にもてなすところに台湾の人たちの信心深さとやさしさを感じます。

 

トーク②:2020年の「鬼月」の広告たち≫

さて、「鬼月」に入ると、台湾の人たちはとたんに「鬼」という単語を言わなくなります。なんでも「鬼月」に「鬼」という単語を口にすると、「好兄弟」たちが「呼んだ?」と勘違いして、寄ってきていたずらや悪さをするといわれているんだそうです。若い人でも信じている人が多く、私が友達に「鬼月」について聞こうとすると、「やめて~!」と逃げられたことがあります(苦笑)。

実は「鬼月」にはこれだけでなく、様々なタブーがあります。

たとえば、「夜、口笛を吹かない」。これは日本でもよく言われますよね。台湾では「鬼月」に夜、口笛を吹くと、「好兄弟」たちを引き寄せたり、彼らの邪魔をしてしまったりするそうです。夜は静かにしておきましょう。

また、「後ろから呼びかけられても振り返ってはならない」。昔からの言い伝えで、人には頭のてっぺんと両肩に3つの“火”があって、振り返ったときにその“火”が消えてしまわないように…という理由だそうです。ですので、後ろから人の肩を気軽にぽんぽんしてもいけないそうですよ。ちなみに、どうしても振り返る必要があるときは、身体ごと後ろを向くといいそうです。

そして、「道に落ちている“紅包”を拾ってはならない」。これは、台湾には“冥婚”といって、生きているものと死者、もしくは死者同士が結婚する風習があって、未婚のまま亡くなった死者のために結婚相手を見つけるべく道端にわざと置いてあるもので、通行人がそれを拾うと、近くで見張っていた親族が現れ、死者との結婚を迫られるというもの。そのため、台湾では小さい頃から、道に落ちている赤い封筒は拾ってはダメと教えられるんだそうです。今でも時々あるようで、赤い封筒が置いてあった!とニュースになったりしています。

このほかにもまだまだいろんなタブーがあるんですが、結構ちゃんと守っている人が多く、「鬼月」はみんな本当に霊たちを怖がっている印象なんですが、毎年この時期になると「鬼月」バージョンのCMを出す注目の大手スーパー「全聯(pxマート)」の今年のCMが「温かい雰囲気」で、「好兄弟」を怖がる人々の緊張をやわらげてくれると話題になっています。

CMには水に引きずり込み入れ替わろうとする霊「水鬼」と、神隠しに合わせる霊「魔神仔」、そして台湾でホラー映画にもなった「赤い服の女の子」の霊といった、皆が知っていて、皆が怖がる霊たちがそれぞれ、人間と一対一で会話。

たとえば、「水鬼」に人間が「本当に取って代わろうと引きずり込むの?」とたずねると、「若者たちに教えているんだよ、台風の季節に関わらず水の中には暗く流れが激しいところがある。だから気をつけなってな」…と、やさしく安全の注意をしてくれていることがわかります。そんな面と向かって話をすると実は怖くない、怖いどころかやさしい霊たちのCMシリーズが今、人気となっているんですよ。

さらには、このCMに出てくる霊たちはなんと、フェイスブックページも持っているようで、それに気付いたファンたちと交流もしています。

「鬼月」は今日、始まったばかりですが、このCMによって今年は怖がる人がもしかしたらちょっと減っているかもしれません。

(編集:中野理絵/王淑卿)

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