本日の台湾ミニ百科では、台湾の道沿いや公園で見つけた、木の保育園とも言われる、植物を木に託す、着生された花についてご紹介したいと思います。
実は以前から、台湾の木々がある通りや公園を歩いていますと、木の幹から、鮮やかな蘭の花が咲いているのを何度かみかけていました。なぜ木の幹からこのようなきれいな花が咲いているのか、大変気になっていました。
木の幹と一体化して、ピンク色洋ランが咲いていたり、また、日本では高級な胡蝶蘭が咲き誇っていたりするのを見た時は、大変驚きまして、なぜこんな町中の、そして歩道沿いのなんでもない木の幹に、胡蝶蘭が咲いているのか、これは、木に誰かがひっつけたのかなと日本では見たことがない光景に、不思議だなあと感じていました。
今回、このことについて、調べたり、また、植物が好きな知り合いに尋ねたところ、これは台湾ではよく見かける光景ということです。きれいな植物を、おすそわけしようと、木々に着生させ、そして、道行く人々に鑑賞してほしいということなんですね。
きれいだから、また、おそらくその方ご自身が、お花がたくさんあったから、木に育ててもらい、そして、多くの人に見てもらおう、こういった考えのもとに行われているということです。
インターネット上では「誰の仕業?」とユーモアをもって問う発言もあったり、また「私のお父さんはよくやっている」など、趣味としてやられている方もいるようです。
何か特別な目的があるというわけでもなく、そして、誰からやってほしいと言われたわけでなく、きれいだからと、自然に行われる方が多いようなんですね。
インターネットやユーチューブでは、蘭の花をどう着生させたらよいかなどのQ&Aや着生の方法について具体的な方法を紹介する記事がよく見られます。
木の幹に、一種類だけでなく、2種類や3種類の蘭の花が咲き乱れている様子を、台湾華語で、木の保育園、蘭の保育園、植物の託児所などの言葉で表されていました。
木に預けて育ててもらうということからなんですね。大変可愛いらしい例えだと思います。
こうしたことが台湾でよく見かける背景として3つの点があげられます。
まず、1つは台湾の蘭の花が着生植物であるということ。もう1つは台湾では蘭の花がとても安いということ、3つ目は台湾の温かい気候が蘭の成長に適していて、お世話が大変でないということです。
着生植物についてここでご紹介します。
ランは大きく2つの種類に分けられ、ひとつが樹木の幹や枝、岩などに根を這わせて張り付くように生育する着生ラン。そしてもうひとつは土に根を降ろす地生ランです。ちなみに、胡蝶蘭は着生ランなので、土に植えてはいけないんですね。
ランといえば、日本では、胡蝶蘭などはお祝いや贈りものとして思い浮かばれると思います。鉢に植えられている姿がおなじみかと思いますが、木に着生するというのは、私は今回初めて知りました。
こうした着生ランは、生長するうえで土を必要としないんですね。
土を必要としないのであれば、いったいどこに根を張るのかと言いますと、木の幹、岩などに根を絡みつかせて定着するということです。いつも歩いている通りに急にピンク色の洋ランが姿を現した時は、私が見かけたのはタコ糸のようなもので括りつけているのが多かったです。
そうして2つめの蘭が安いということ。今回うかがった植物が好きな知人によりますと、一株40台湾元、日本円でおよそ180円です。その方は、ドリンクスタンドのドリンクよりも安いよ!と言われました。中には高いのもありますが、だいたい80台湾元から100台湾元、日本円でおよそ360円から450円くらいで購入できるということです。
気軽に楽しめるということがありますね。
そして3つ目の気候が適しているということ。今回、蘭を木に着生させるというのには、やはり日本では寒さがポイントとなってくるようです。特に最低温度を下回ると低温障害により葉を落としたり枯れてしまったりするということです。
台湾はあたたかな亜熱帯気候で、蘭の栽培に適していますから、育てやすいということがありますね。
こうしたことから、気軽に、きれいな蘭の花を木に着生させて、見てもらおう、楽しんでもらおうという文化、木の保育園、蘭の託児所という言葉が生まれているんですね。
歩道にある数本の木に着生された蘭の花を見ることが多かったですが、大規模に行われている場所もあります。
北部・桃園市の中壢莒光公園ではもともと、桜の公園といわれるほど、桜が有名な公園ですが、地元のボランティアの方々が、南部・台南や中部・南投県で、木に着生した蘭の花が大変きれいであったことから、地元のボランティアがこの公園に木々に蘭を800株着生されたということです。毎年4月5月の時期には蘭が咲き乱れて人気スポットとなっているそうです。写真を見ますと、緑の木の中に白、紫、そして薄いピンク色の蘭の花が咲いていて大変きれいです。
この木の保育園、蘭の託児所、大変きれいで、かわいらしいので、もし台湾に来られることがありましたら、ぜひ一度、見てもらえたらと思います。
本日の台湾ミニ百科では、花を木に託すという木の保育園といわれる着生された蘭の花についてご紹介しました。