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ようこそT-roomへ - 2021-08-04_東京オリンピックでの台湾選手の活躍ぶり

  • 04 August, 2021
ようこそT-roomへ
郭婞淳・選手、おめでとう!(写真:蘇貞昌フェイスブックより)

   現在、開催中の東京オリンピック、中華民国台湾からは18の競技に68人の選手が出場していますが、各競技で活躍が目立っています。

 昨日8月3日まで、台湾の選手たちは、重量挙げ女子59キロ級で郭婞淳(カクケイジュン)選手と、バドミントン男子ダブルスでリーヤン・ワンチーリン組が金メダルを獲得したほか、銀メダルも4つ、銅メダルも4つと合計10個のメダルを獲得しています。さらに、女子ボクシングフライ級のフアン・シャオウェン選手が準決勝に進出しており、ボクシング競技では3位決定戦は行われないことから、銅メダル以上、つまり11個目のメダル獲得が決まっています。

 まだ開催中ではありますが、このメダルの数は2000年のシドニー大会と2004年のアテネ大会の5個を大きく上回り、史上最多となっています。

 本当は各選手について詳しく紹介したいところですが、本日の「ようこそT-ROOMへ」では、出場選手の中から、重量挙げ女子59キロ級の金メダリスト、郭婞淳(カクケイジュン)選手と、バドミントン女子シングルスの銀メダリスト、タイ・ツ-イン選手の、2人の女性アスリートのエピソードをご紹介しましょう。

 まずは、郭婞淳(カクケイジュン)選手です。世界記録保持者で金メダル大本命だった郭選手は、今大会、開会式で、男子テニス代表のルー・イェンスン選手と共に旗手を努め、7月27日に行われた競技では、スナッチで103キロ、クリーンアンドジャークで133キロ、合計236キロと、いずれもオリンピック新記録をマーク、2位の選手に19キロの差をつける圧勝で、金メダルを獲得しました。

 こう紹介しますと、大本命の選手が楽々と金メダルを取ったような思えますが、ここまでの道のりは決して楽なものではありませんでした。

 郭選手は1993年、北東部、宜蘭県生まれ、台湾の原住民族、アミ族の出身です。父親は幼くして家を離れ、母親は出稼ぎに出ていた為、おばあさんに育てられました。経済的に苦しく、朝ごはんを買えない日もありましたが、逆境にへこたれず、逆にバネにした郭選手は得意なスポーツで才能を発揮しはじめました。

 中学時代、全国大会に出場した郭選手は、リレーの選手として出場もバトンを落としてメダル獲得はならず涙にくれましたが、翌日ウエイトリフティングに出場したところ優勝、そこで才能に気がついた郭選手は高校から本格的に打ち込み、奨学金や大会の賞金を学費に当てました。

 2010年、ユースオリンピック53キロ級で台湾初のメダルを獲得すると、2012年には国内予選を勝ち抜きロンドンオリンピックの58キロ級に出場、8位に入りました。2013年、急成長を果たした郭選手は世界選手権で優勝、一躍世界を代表する選手となります。しかし、翌年、アジア大会を控えた練習で、右太ももの筋肉の大部分を断裂する大怪我を負ってしまいます。無理して出場したアジア大会は4位とメダルを逃し、世界選手権も6位に終わりました。その後、復調し、2016年のリオデジャネイロオリンピックは金メダル候補と期待され出場しましたが、十分に実力が発揮できず銅メダルに終わり、悔し涙を流しました。

 怪我や挫折につまずくことはあっても、気持ちが折れることはありませんでした。2017年以降はアジアのみならず、世界でも負け無し、文字通りの世界女王の強さを発揮します。2018年、階級見直しで59キロ級となった以降も世界選手権を連覇、スナッチそしてクリーンアンドジャークで幾度も世界記録を更新し、絶対女王として君臨、そして今回の東京オリンピックでは、3度目のオリンピックでついに悲願の金メダルを獲得したんです。

 中華民国政府からの金メダリストへの賞金が台湾元2000万元(日本円およそ7800万円)、その他にも地方自治体やスポンサー企業からの賞金は数百万元に達します。これまでも様々な公益活動を行ってきた郭選手は、これらの賞金の一部を社会の為に使いたいとして、その使い方を家族と相談したいとしています。なお、郭選手は今大会、足の怪我をかかえており自身のもつクリーンアンドジャークの世界記録の更新はならなかったことから、2024年のパリ大会にも出場することを明らかにしています。まだまだ世界女王の活躍がみられそうですね。

 続いてはタイ・ツーイン選手です。世界ランキング1位在籍期間を歴代最長の174週としているタイ選手は今大会、金メダルの最有力候補でした。予選グループを3連勝で準々決勝に進出すると、プライベートでも仲のいいタイのラチャノック・インタノン選手との死闘を制し、さらにさらに準決勝では、5年前のリオデジャネイロオリンピックで敗れたインドのPVシンドゥ選手にストレートで勝利、決勝に進出します。台湾のケーブルテレビ史上最高の視聴率となった中国大陸の世界2位、チェン・ユーフェイ選手との決勝は、18対21、21対19、18対21という、まさに死闘の末、敗れ、金メダルはなりませんでした。

 試合後、タイ選手は自身のフェイスブックに「3度目の夢の舞台でついに決勝に進めたけど、一番高いところには立てなかった。残念ではあるけれど、満たされない部分が存在するからこそ、より良い結果を求めようとするモチベーションにつながる。もしかするともうオリンピックに出場することはないかもしれないが、目標は達成した。今は、自分自身によくやったと言ってあげたい」と記しました。

 タイ選手はそして、控室で、銅メダルを獲得したインドのシンドゥ選手に抱きしめられ、「あなたが辛い気持ちであることはわかる。素晴らしいプレーだったわ。でも今日はあなたのゲームではなかっただけ」と言われた瞬間、感情を抑えきれなくなり、思い切り泣いてしまったことを明かしました。

 タイ選手は3日、自身のインスタグラムに、試合が終わってすぐは、メダルを目にする気にもならなかったけれど、改めてどれだけ大変なことか、どれだけ多くの人がこれまで支えてきてくれたことで取れたメダルだったかということを感じたと投稿しました。

 今後の競技生活については、まずゆっくり休んでから決めると話したタイ選手、どのような決断をしても台湾のファンは応援してくれると思います。今は、お疲れ様でした、と声をかけたいと思います。

 この他、世界ランキング1位そして2位のペアを破り、決勝では中国大陸のペアを下し、台湾バドミントン界初の金メダルをもたらした男子ダブルスのリーヤン・ワンチーリン組、柔道で初めてメダルを獲得した男子60キロ級銀のヤン・ヨンウェイ選手、そして体操男子個人あん馬で、こちらも初のメダルとなる銀メダルを獲得した李智凱・選手らの健闘も台湾の人々を大いに感動させました。選手たちの帰国後も、台湾では当面オリンピックフィーバーが続きそうです。

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