:::

Rti 台湾国際放送Rti 台湾国際放送ようこそT-roomへ - 2021-05-26_5/17より紙の新聞が休刊となった蘋果日報(アップルデイリー)

  • 26 May, 2021
ようこそT-roomへ
14日、台湾の大手日刊紙、蘋果日報(アップルデイリー)が、17日付けの発行をもって紙の新聞を休刊、今後は電子版に集約すると発表したニュースは、台湾の人々に衝撃を与えた。17日の最後の紙面の一面には、大きく「再會(また会いましょう)」と書かれたほか、創刊した2003年以来、今年2021年まで19年分の重要ニュースの一面の写真が、一年一枚ずつ掲載された。(写真:CNA)

 先々週の14日、台湾の大手日刊紙、蘋果日報(アップルデイリー)が、17日付けの発行をもって紙の新聞を休刊、今後は電子版に集約すると発表したニュースは、台湾の人々に衝撃を与えました。17日の最後の紙面の一面には、大きく「再會(また会いましょう)」と書かれたほか、創刊した2003年以来、今年2021年まで19年分の重要ニュースの一面の写真が、一年一枚ずつ掲載されました。

 本日の「ようこそT-ROOMへ」では、17日をもって紙の新聞が休刊となったアップルデイリーに関する話題をご紹介しましょう。

 アップルデイリーは、標準中国語では「蘋果日報」といいます。蘋果はリンゴの意味です。「蘋果日報」は、草かんむりに頻繁のひん、果実のか、月日の日、そして報じると書きます。1995年の香港で発行された同名紙の台湾版として2003年5月2日に発行されました。アップルデイリーのアップルの由来は、創業者のジミー・ライ氏が「アダムとイブのイブがもし、リンゴをかじらなかったら、世の中には罪も悪も、是非もなく、当然ニュースもなかっただろう」と考えたからです。

 創刊当初、横たわるヌードの女性の大切な部分がりんごの山で隠された目を引く写真、そして「かじったらヤミツキ」というキャッチフレーズで知名度を高めたアップルデイリーは、全ページカラー、分厚いページ数、他紙を下回る値段、そして、何といっても、香港メディア仕込みのセンセーショナルな写真と派手な見出し、ゴシップ記事の豊富さで台湾の人たちの心をつかみ、部数を伸ばしていきました。また、常に紙面でタレコミを募集しており、スクープ記事、独占記事の多さでも注目を集めました。

 当初は、単なるゴシップ紙として見られていたアップルデイリーでしたが、既存の大手紙、聯合報、中国時報、自由時報はいずれも政治スタンス、読者の支持政党がはっきりしている中で、次第に、独自の存在感を発揮します。与党、野党、大企業グループなどに忖度しない記事のみならず、異なる立場の人達の投稿を紹介するなど、硬派なコンテンツでも、幅広い人達の支持を集めていきました。

 2003年5月2日の創刊号、47万4510部売り上げたアップルデイリーは、最高で72万部近く売り上げました。同紙が明らかにした売上数トップ3の日時と、その日の一面をご紹介しましょう。

 3位は2006年11月4日、この日の一面は、陳瑞仁(ちんずいじん)・検察官が、陳水扁・元総統と、呉淑珍・総統夫人が国務機密費流用の容疑で、起訴をしたというニュースでした。「司法誇るべき一日」という見出しがついています。権力に忖度せずに起訴をした検察を讃えたわけですね。67万9795部売り上げました。

 2位は、2008年3月23日、この日の一面は2008 年中華民国正副総統選挙の翌日でした。71万8488部売り上げました。この総統選挙では、当時の国民党の馬英九・元主席と、現在、日本における中華民国台湾の大使にあたる台北駐日経済文化代表処の代表をつとめる謝長廷氏が激突、馬英九・元主席が総統に当選しました。

 そして、過去最多の売上を記録したのが、2012年1月15日、71万9604部売り上げました。この日の一面も、2位と同じく中華民国正副総統選挙の翌日でした。この総統選挙では、再選を目指した馬英九・前総統が、81万票差の僅差で蔡英文・現総統を下し、当選しました。

 なお、政治ニュース以外で歴代トップの売上をマークしたのは、2007年9月1日、この日の一面は、当時、アメリカ大リーグのニューヨーク・ヤンキースに所属していた王建民投手が、ボストン・レッドソックス戦で7回無失点の好投をみせ、シーズン16勝目をあげたというニュースでした。この日は、64万7898部の売上を記録しました。

 台湾の人々の声を紹介しましょう。14日にアップルデイリーのウェブ版がこのニュースを明らかにすると、大きな話題となり、インターネットの大手掲示板でも盛んに討論がなされました。

 インターネットユーザは「創刊したばかりの頃は、皆争って買いにいったものだった」、「全ページカラーの先駆けだった」、「スマートフォン、タブレットのない時代、お供してくれてありがとう」、「王建民の全面ポスターが懐かしい」「これも時代の流れか」などとコメントし、紙の新聞の休刊を惜しみました。

 一方で、「新聞紙を印刷するコストは高すぎる、ウェブ版に集約することで多くのコストを削減できるはずだ」、「正常な状況だ。お年寄りもスマートフォンを使いこなしているのに、誰が紙の新聞を買うんだ」、「確かにスマートフォンが発達しすぎた」と、残念ではあるものの、休刊はやむなしという声もありました。

 専門家の意見はどうでしょうか。私立中国文化大学新聞学科の荘伯仲・教授は、「寂しくはあるが、意外ではない」との見方を示しました。荘・教授はそして、アップルデイリーでは、一昨年から昨年にかけウェブ版について有料会員制度を開始したが、その収入は、失われた広告クリック収入に遥かに及ばなかったと指摘、この期間、アップルデイリーよりもしっかりとした組織だった聯合報系の夕刊紙、聯合晩報が休刊となっており、意外ではなかったとして、こうした現象は、紙の新聞の生存空間がますます小さくなっていくことを示している、と述べました。

 また、文化大学広告学科の鈕則勳・学科主任は、同紙の影響について、スクープ記事や悪事を暴くことに強みをもつ同紙の存在により、政府職員、有名人らの言行がより慎重になったと指摘、こうした報道スタイルが、他のメディアにも影響を与えたと述べました。また、マイナスの影響については、アップルデイリーが、センセーショナルな報道スタイルを取ったことで、他のメディアも同様のスタイルを取るようになったこと、また、社会ニュースが主体となり、政治、経済、国際ニュースなどの比重が軽くなってしまったことを挙げました。

 スマートフォンの普及もあり、最近は発行部数も落ち込んでいたようですが、紙の新聞最終日の17日は、多くの人が早起きして、コンビニエンスストアへ向かい、記念に購入したようです。私駒田も朝8時台にはコンビニエンスストアをのぞいたのですが、残念ながらすでに売り切れでした。

 紙の新聞休刊によって、アップルデイリーの影響力低下は避けられないと指摘する声はあります。ただ、今後もウェブ版で、アップルデイリーらしさ、存在感を発揮してもらいたいと思います。

 

Program Host

関連のメッセージ