:::

台湾ソフトパワー - 2022-05-10_台湾の有名女性作家、陳柔縉さん

  • 10 May, 2022
台湾ソフトパワー
(写真:陳柔縉さん/Openbook閱讀誌提供/RTI)

昨年(2021年)10月、台湾の有名女性作家、陳柔縉さんが交通事故で無くなりました。57歳でした。

陳柔縉さんは、長年に渡り台湾の文学や歴史の分野に携わり、特に日本統治時代の一般市民の文化研究を深め、わかりやすく、且つその洞察に満ちた文章で、読む人たちに台湾の近代生活の発展を伝えていました。

1964年、台湾中部・雲林で生まれた陳柔縉さんは、小さい頃から「大きくなったら偉くなって、大きなことを成し遂げたい」と語っていたそうです。

1985年、台湾の最高学府、国立台湾大学の法律学部司法学科を卒業。

台湾老舗3大新聞の一つとされる「聯合報」や、台湾の政治関係週刊誌「新新聞」の記者として活躍していたこともあります。

そして1990年代初頭から、作家として、歴史上の人物を取材し、台湾の過去をたどり、特に日本統治時代の社会生活に関する話題を中心に執筆。

彼女の著書のうち、2005年出版の著書「台灣西方文明初體驗(台湾西洋文化初体験)」と2009年出版の著書「人人身上都是一個時代(人それぞれに一つの時代)」の2作は、台湾の出版に関する賞「金鼎獎(ゴールデン・トリポッド・アワード」を受賞しています。

長年に渡って、台湾の過去をたどり、政治記者として、そして作家として伝え続け、これからも彼女の著書が期待をされていた陳柔縉さんですが、昨年(2021年)10月15日の夕方18時ごろ、台湾北部・新北市淡水の路上を自転車に乗っていたところ、バイクに追突され、病院に運ばれましたが、3日後の10月18日、この世を去りました。57歳でした。

この訃報に、日本の文化庁に相当する、中華民国・台湾の文化部はニュースリリースを発表。

「陳柔縉さんは、これまで30年に渡り、台湾の歴史を考察してきた。そして何より貴重なのは、彼女が長い時間をかけた取材と研究の結果を読みやすい本にまとめ、これらの歴史的出来事が教科書や文書記録の中だけに存在するのではなく、人々の日常生活に密着していたことを表し、読者に自身の身近な台湾の歴史・文化をより分かりやすく、そして深く理解・認識させたことである」と記し、李永得・文化部長も、過去に彼女と同じように記者として活躍していたこともあり、陳柔縉さんの訃報に深い哀悼の意を示していることを伝えました。

*****

長年に渡り台湾の文学や歴史の分野に携わり、台湾の近代生活の発展を伝えてきた陳柔縉さんのことをより多くの人に知ってもらおうと、今、国立台湾大学の総合図書館で「從報刊冊頁開出玫瑰-台灣歷史故事作家陳柔縉紀念展(台湾の歴史物語作家・陳柔縉記念展)」が行われています。

記念展では、彼女の紹介や、手書きの原稿、プレスカード、貴重な映像などが展示されています。

この記念展の開幕の際には、RTIの賴秀如・董事長も参加。同世代で、共に戒厳令の時代にメディアの世界に足を踏み入れ、共に様々な緊張感や出来事を体験したという賴秀如・董事長は、彼女の特性は誰にもまねできるものではないので、彼女の旅立ちは、一つの時代が終わったようなものだとコメントしています。

賴秀如・董事長は、「彼女が書き残したあの時代、日本統治時代の台湾、そして台湾の政治やビジネスに関する状況について、これからも誰かが研究し続けてくれることを期待している」と述べました。

また、台湾大学歴史学部の陳翠蓮・教授は、陳柔縉さんは、好奇心にあふれ、忍耐強く、とてもアンテナが敏感で、インタビュー対象者の話を聞き分けることができ、多くのインタビュー対象者からの厚い信頼を得ていた。さらにすごいのは、彼女の著書は、多くの人に台湾の歴史への興味をもたらしていることで、これは歴史学者が困難としていることに影響力を発揮しているということだと、彼女の功績と、著書の魅力を語っていました。

日本統治時代の台湾を中心に執筆されていたということもあって、日本人のファンも少なくない陳柔縉さん。

この記念展は5月22日までのため、今は日本から見に来ることはかないませんが、機会があれば、彼女が残した著書を手に取ってみてください。

Program Host

関連のメッセージ