台湾ではこの時期、油桐花(アブラギリの花)が見ごろを迎えますが、その花が散る様子がまるで雪が降っているかのように見えることから「四月の雪」「五月の雪」と呼ばれています。これは結構有名ですが、この時期、台湾では海でも「夏の雪」と呼ばれる景色が楽しめます。それは、珊瑚の産卵─。
台湾は珊瑚の生態が豊かで、南の端の墾丁や小琉球、西の離島・澎湖、東の離島・緑島、南シナ海にある東沙から、北部は宜蘭の南方澳、そして東北角まで、珊瑚の産卵の記録が残っています。
そして、毎年、海の女神「媽祖様」の誕生日である旧暦の3月23日ごろの夜、墾丁の海では大量の珊瑚の卵が放出され、水中がピンクの丸い卵でいっぱいとなり、それがまるで海が雪に覆われたかのように見えることから「夏の雪」とよばれています。
この「夏の雪」は、多くのダイバーを魅了していて、毎年この時期になると、各地からダイバーが海洋生命の奇跡を見るためにやってくるので、ダイビングショップも特別に夜間ダイブを行っています。
その神秘的な光景が、今年は4月22日と23日、夜の21時から各30分間、ネットで生配信されました。
これは墾丁國家公園管理處が一般の人にもスマートフォンなどの画面越しに珊瑚の生態の美しさを体験してもらおうと、海洋生物博物館と協力し、フェイスブックで生配信したものです。
墾丁國家公園管理處では、台灣珊瑚礁學會、中華民國水中攝影協會などと共に、5月31日まで、「墾丁珊瑚礁生態保育月」として、“愛海新運動(海を愛する新運動)”を行っています。
今年(2022年)は、「低碳減塑 疫起守護(低炭素型・プラスチック削減 コロナ禍での海洋保全)」をメインテーマに、様々な活動を行っていて、そのうちの一つがこの、珊瑚の産卵の生配信でした。
海は生命と密接に関係していて、海洋廃棄物は世界的に注目されている問題です。
海洋廃棄物問題は、海洋生物への脅威と海洋環境の破壊という深刻な問題で、墾丁國家公園も日頃多くの観光客が訪れる場所であり、便利のいい使い捨てのプラスチック製品の利用が増えてしまうことから、墾丁國家公園管理處では長きにわたってプラスチックを減らすキャンペーンを行っています。
今年(2022年)は、2つの海の清掃作業を行うとして、珊瑚の産卵の生配信の翌日、4月24日には、台湾各地の海を愛するダイビングチームと協力して、海底の清掃活動を行いました。
この清掃活動には60名のダイバーが参加。5つのチームに分かれて、4つのチームが海岸付近に潜り、1つのチームが船で少し離れた場所に潜り清掃活動を行いました。
この日、およそ2時間という清掃活動でしたが、なんとその2時間で120キロものごみを海底から回収しました。中でもペットボトルとプラスチックキャップが多かったそうです。そのほかにも、漁網や、アルミ缶、そして廃棄された錨、しかもおよそ70キロもの重さのある錨もあったそうです。
なお、「墾丁珊瑚礁生態保育月」の“愛海新運動(海を愛する新運動)”では、5月20日にも墾丁の地元の業者の人たちと協力して海の清掃活動を行うということです。
また、海洋廃棄物の問題は、拾うだけでなく、更に重要なのは減らすことだとしていて、今年(2022年)は、墾丁國家公園管理處と墾丁の10の民宿業者が“海を愛するプラスチック削減行動宣言”に署名をし、取り組んでいます。
そしてこの様な活動によって、多くの人たちに海の美しさをいつまでも保つために、環境に配慮した“マイ箸”や“マイスプーン”などMyカトラリーの携帯や、ペットボトルなどの使い捨てプラスチックの不使用、脱炭素やごみの削減などの行動を行って、海への愛を実践するよう呼びかけています。
多くの人を魅了する「夏の雪」がこれからも見られるよう、墾丁では“愛する海”のため、環境保護活動に取り組んでいます。
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そして、別の台湾の珊瑚スポットの一つ、西の離島・澎湖では、昨年の冬、寒かった影響で死んでしまった珊瑚や魚が少なくなく、広範囲で珊瑚の白化が起こり、観光客に人気のあった色鮮やかな海中風景が見られなくなっています。
そこで、珊瑚の生態を守るために、海洋國家公園管理處では、珊瑚の植え付けをして、珊瑚礁の再生を図ろうとしています。
四方を海に囲まれ、気候柄とても豊富な生態系を持つ台湾の海。
これらの生態系を守るために官民が一緒になって環境保護活動に取り組んでいます。