先ごろ、台湾鉄道に歴史的な出来事が起こりました。
台湾最大の駅「台北」駅に、135年の歴史の中で初の女性駅長が誕生しました!
新たに台北駅の駅長に就任したのは、胡詠芝さん。
胡詠芝さんは、1979年生まれの今年42歳。
台湾鉄道で働き始めてから13年目となります。
国立交通大学運輸物流管理学の修士課程を修了。2009年に鉄道職員の採用試験にパス、台湾鉄道に入り、2016年には駅の幹部として昇進しました。
最初はいち駅員として働き始め、その後、車掌、台北駅の副駅長、駅長代理、本部の副主任、台北駅業務主任、本部主任…と、現場から一歩一歩上り詰めていった胡詠芝さん。
この他にも、2011年には国際的なマナーの基本やサービスに関する知識を広める先生、そして職員研修センターの内部講師を務めたほか、国会議員連絡室のスタッフ、および局長秘書なども歴任しています。
胡詠芝さんの経歴が紹介される際、最終学歴が国立交通大学運輸物流管理学の修士となっているため、多くの人からは交通関係学科で学んだあと台湾鉄道の仕事に就いたと思われていますが、実は台湾鉄道に入ってから運輸物流管理を学び始めました。
大学時代は、財務金融関係を学んでいたという胡詠芝さん。それと同時に小学校の教職課程も取り、卒業後は実際に小学校に教育実習にも行き、小学校の教員資格にも合格しています。
ただ、小学校の教員にはならず、中国・上海の半導体の会社で働いていました。
3年ほど働いたころ、家が恋しくなり、台湾に帰ることを決意します。
台湾に戻ってきて、これからどうしようか考えていた時、ある日、社会人の予備校のような教室を通りかかったときに、そこのスタッフに「最近の試験は何かありますか?」と尋ねたところ、台湾鉄道の試験があると聞き、受けてみるのもいいかなと思ったんだそうです。
試験後、結果を待っている間、もし受かっていなかったら、オーストラリアにワーキングホリデーに行こうかとも考えていたそうですが、結果は見事、合格!
こうして胡詠芝さんの鉄道人生が始まりました。
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同僚から見た胡詠芝さんはどのような人かというと、コミュニケーション能力に長け、同僚が仕事を達成できるようあらゆる方法でサポートしてくれ、しかもいつも笑顔で人を迎えてくれ、とても愛情深い人だと高く評価されています。
実際に彼女のエピソードとして、車掌をしていると常に突発的な出来事に遭遇するそうですが、ある時、新米ママさんがお湯を持ってくるのを忘れていて、赤ちゃんがミルクを欲しがり泣き出してしまったことがあったそうです。その時、胡詠芝さんはすぐに次に停車する駅に連絡をしてお湯を持ってきてもらい、赤ちゃんのミルクを作ることができたという事があったそうです。
プライベートでは、2歳と4歳の子供を持つお母さんでもある胡詠芝さん。お母さんならではの発見や気遣いも見られます。
また同僚は、彼女はとても我慢強く、彼女の眼には「クレーマー」というものはないようだと語っています。
というのも、胡詠芝さんは、乗客からのどんな声も、台湾鉄道をより良くするための提案になりうるし、もしすぐに対応できないのであれば、やろうとしたことを相手にわかってもらいたいと言っているんだそうです。
昨年(2021年)の台湾の平均年収が65万6000元と言われていますが、2009年当時で年収100万元を手にしていた仕事を辞め、台湾に戻ってきた胡詠芝さん。
民間企業がヘッドハンティングしようとしたこともあるそうですが、彼女はこれについてはあまり多くを語らず、ただ「好きなことを選び、選んだものを好きでいる」とだけ語っていて、どうやら彼女は台湾鉄道の仕事の楽しさが好きなようです。
台北駅というと台湾最大の駅。“駅長”というだけでも、24時間体制で待機しなくてはならず、休日もないと言ってもいい大変な職種ですが、利用客の数もほかの駅の数倍に上る台湾の“メインステーション”、「台北」駅の駅長という事で、その大変さはまた更に大きいものと思いますが、胡詠芝さんは、女性ならではのやさしさ、気配り、共感力を生かして、あらゆる困難を乗り越え、駅長として、また母親、妻、女性として、良い仕事をしていきたいと考えているとのことです。
今後の活躍にも期待です!