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Rti 台湾国際放送Rti 台湾国際放送台湾ソフトパワー - 2022-01-11_“ウッドボールの父”、 翁明輝さん

  • 11 January, 2022
台湾ソフトパワー
昨年末行われた「2021スポーツエリート賞」受賞式典では、「ウッドボール」の普及に向けた献身的な努力は国家的な評価に値するものであるとして、“ウッドボールの父”と呼ばれる、故・翁明輝さんへ「生涯功労賞」が授与された。(写真:CNA)

皆さんは、「ウッドボール」というスポーツをご存じでしょうか。

“マレット”と呼ばれる木槌状のクラブでボールを打ち、ゲートを通すことで競う国際的なスポーツ競技です。ゴルフとゲートボールを融合したような感じと考えればわかりやすいかもしれません。

この「ウッドボール」、実は台湾生まれのスポーツなんです。

「ウッドボール」を考案したのは、台湾の実業家、翁明輝さん。

台北市の內湖出身の翁明輝さん。

若い頃は、牧場を経営したり、牛乳や練乳を作ったり、印刷工場を作ったり、さらには、スーパーやレストランを開いたり、貿易関係の仕事をしたり、建設業で家づくりを行ったり…と様々な商いを行い、50歳になる前に多くのお金を稼いでいました。また、父親も不動産を有していたことから、裕福な家庭でした。

そんな翁明輝さん、1990年、46歳の時に、ご縁から、台北市郊外の荒れた山を購入します。そこは陽明山の国家公園の中で、家を建てることはできず、さらには管理が非常に厳しく、当初はこの土地をどう生かしたらいいか思いつかなかったそうですが、ここは景観が美しく、水もきれいなところであることから、年老いて体の調子が良くなかった父親にゆっくり花を眺めながら散歩したりしてもらおうと、草花を植えていきました。そして翁明輝さんはゴルフが大好きだったことから、ついでにちょっとしたゴルフを楽しめるような“花園の天然球場”にしました。

翁明輝さんの父親もゴルフをしていたのですが、毎日郊外まで出かけ数時間のゴルフをするには手間もお金もかかることから、年をとると次第にゴルフをする回数が少なくなって行くことに気づき、どのようにしたら父親がこの“花園の天然球場”でゴルフの楽しさを味わうことができるのかという事を考え始めました。

そして、ゴルフやゲートボールの特性を活かし、野球やテニスのルールの長所を取り入れて、ボールを大きく、重くしました。これによって、球は高く飛ばず、落ちた後は転がります。また、草むらに穴が開くと水が溜まりやすいため、父親がプレイをするときにより安全に楽しめるように、サッカーを参考にして“ゲート”を設けることにしました。

このようにおよそ2年をかけて、何度もプレイの方法や道具の改良を重ね、1992年5月についに「ウッドボール」という競技が誕生したんです。

「ウッドボール」はゴルフからインスピレーションを受けているため、ルールや基本は似ているので、人々は“草の根ゴルフ”とか、“大衆ゴルフ”などと言いますが、中華式の「ウッドボール」は、西洋式のゴルフと比べて、かかる費用は少なく、年齢や場所も制限されず、かつ、親しみやすく、環境にも優しいスポーツです。そのため、発展の伸びしろは十分にあるとして、翁明輝さんは1993年、これまで行っていたすべての事業を辞め、台北市に最初の「ウッドボール協会」を設立し、「ウッドボール」の推進に専念することにしました。

そして1994年より国際的に推進を始めます。

まずはアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルス、サンフランシスコへ広め、続いて北京へ。その後、シンガポール、マレーシア、広州、香港へと広めていきます。

日本にも1995年、ユニバーシアード福岡大会でプロモーションを行いました。

1999年には「アジアウッドボール総会」、「ヨーロッパウッドボール連盟」、そして「国際ウッドボール総会」が設立、その年の11月には「ウッドボール」が「アジアオリンピック評議会」の承認を得ました。

そのような積極的なプロモーションにより、「国際ウッドボール総会」には現在54か国が加盟していて、ワールドカップ、アジアカップ、世界大学選手権、アジア大学選手権など、毎年10数の国際試合が行われています。さらには、アジアオリンピック評議会では、2年に1度、「ビーチウッドボール」を開催し、国際的にも高い人気を得ています。

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今や国際的なスポーツ競技となった台湾発祥の「ウッドボール」─。

現在、主流のスポーツはほとんど西洋人が生み出したものですが、台湾生まれのスポーツが国際社会で認められているという事はとても珍しいことです。しかし、当初は政府はあまり重視していませんでした。

一方で、中国が早くから翁明輝さんを呼び寄せようとしていたようですが、翁明輝さんは、台湾で「ウッドボール」を根付かせたいという思いから、31年間、ほぼ自身の力だけで推進してきました。

幸いにも若くして成功していた翁明輝さん、土地や家など6000万台湾元近くの資産を売り払い推進活動を行ってきたそうです。

近年では、大型のスポーツイベントはほとんどが欧米諸国が主導で行われていることから、「自身でブランディングしよう」をコンセプトに、アジアのスポーツパワーの台頭と、アジア人の自信の回復に尽力し、国際ウッドボール総会が発起人となって、20の新興スポーツ協会による「国際モダンスポーツ連合」を結成。

2016年に台北で、史上初の華人が主導する国際的なスポーツ組織となり、ワールドゲームズ同様、2年に1度大会を行うと発表しました。

当初は2018年に第1回目を行う予定で、東南アジアの裕福な国の王子も開催を希望していたりもしたそうです。翁明輝さんは第1回が台湾で行われるのを楽しみにしていましたが、残念ながら政治的要因によって開催が延期に。さらには新型コロナの影響でさらに延期となっています。

そしてそんな中、2020年に、翁明輝さんは大腸がんであることが発覚。手術後、一度は病状は落ち着いたのですが、後に癌が肝臓にも転移し、昨年(2021年)2月11日、楽しみにしていた最初の大会を見ることなく、この世を去りました。77歳でした。

「ウッドボールの父」と呼ばれる翁明輝さん─。

昨年末行われた「2021スポーツエリート賞」受賞式典では、「ウッドボール」の普及に向けた献身的な努力は国家的な評価に値するものであるとして、翁明輝さんへ「生涯功労賞」が授与されました。

台湾から世界へと広がった「ウッドボール」─。

これからももっと競技人口が増え、みんながこのスポーツを楽しむことを翁明輝さんは空の上から見守っていることでしょう。

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