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台湾ソフトパワー - 2021-11-09_「第10回 台南文化獎」受賞、舞踏家・廖末喜さん

  • 09 November, 2021
台湾ソフトパワー
「第10回 台南文化獎」に選ばれた舞踏家の廖末喜さん(右)。60年もの歳月を台湾のダンス芸術に貢献したことが評価された。(写真:CNA)

先月(10/22)、台湾南部・台南で「第10回 台南文化獎」の受賞式が行われました。

この「台南文化獎」は、長年にわたり、台南の文化の保存、継承、創造、宣伝、教育といったあらゆる方面で貢献した文化人に贈られるもので、文化的特徴の形成と認識を促進するだけでなく、台南文化を広め続け、文化の都のために尽力してくれた優れた人物に敬意を表して贈られる賞です。

第10回目となる今年は、初の女性受賞者が誕生しました。

今回、「台南文化獎」に選ばれたのは、舞踏家の廖末喜さん。

廖末喜さんは60年もの歳月を台湾のダンス芸術に貢献したことが評価されました。

廖末喜さんの両親は共に日本で学ぶ台湾の学生でした。1944年、当時の中国大陸の熱河省、現在の河北省・遼寧省、そして内モンゴル自治区が交差するあたりの土地(*1)で生まれました。

上に姉が6人いたことから、両親は「次は男の子を…」という意味の「末喜」と名付けられたそうです。

廖末喜さんは小さい頃からリズムと美しいものが好きで、いつも自分で振り付けをして踊って楽しんでいました。

学校に行き始めてから、ある体育教師が彼女の才能に気づき、彼女の人生で初のトゥシューズをプレゼントし、彼女にダンスを学ばせるよう母親を説得しました。しかし、お金がなく授業料が払えないとしてダンスの正式なレッスンはやめてしまいました。ただ、それからも廖末喜さんはビデオや映画のダンスの映像を真似し、何度も何度も見て練習をしたり、自分で振り付けて踊ったりしていました。その頃、声楽も学んだり、大量の世界の名作を見たそうです。

1957年、わずか13歳の時に「夏天裡過海洋(夏に海を渡って)」という振り付け作品で台南社会教育会館の初舞台に立ちました。

結婚後、家庭の負担はダンスの夢をとらえどころのないものにしていきますが、廖末喜さんは、ダンスにこだわり、1967年に「怡君舞蹈藝術中心(怡君ダンスアートセンター)」を設立。台湾のモダンダンスの先駆けである蔡瑞月氏やその息子の雷大鵬氏に師事すると同時に、ダンス教室を始め、さらにアメリカへわたり研鑽を積みました。

1983年には学生たちに表現の機会を作ろうと、「台南青少年舞團(台南青少年ダンスチーム)」を設立。ダンスをするだけでなく、団長、芸術指導、兼振り付けも行いました。

そして、1990年にその「台南青少年舞團」を自身の名前を冠とした「廖末喜舞蹈劇場(廖末喜ダンスシアター)」に改名。台南で最初の創作ダンスチームが誕生しました。

そしてこれまでに400を超えるダンスコードを作成しています。

創作にあたって、廖末喜さんは、文学作品からインスピレーションを受けるのが好きで、モダンダンスの方法で、中国古典の傑作を解釈する作品を出しています。また近年では、台湾文学や女性意識の領域に焦点を当て、台湾の土地への深い愛情を十分に表現していて、台湾社会に残る亭主関白主義に立ち向かっています。

2017年には、「時間之河:廖末喜舞蹈藝術六十年回顧(廖末喜ダンスアート60年回顧録)」作品で、その年の中華民国ダンス学会の「第39回 春風化雨教學將(春風化雨指導賞)50年」を受賞しています。

そのような台湾の土地や地元の文化に対する深い感情や配慮がダンスに反映されていて、さらにはそれらの作品は海外にも進出し、美しいボディーランゲージで世界に向けて台南の最も美しい芸術文化の風景を世界に発信していることが評価され、今回の「台南文化獎」の受賞となりました。

そんな廖末喜さん、人生において最も愛するものはダンスで、ダンス無しでは一日も過ごせないそうで、「踊れなくなるまで踊りたい」と語っていて、今回の受賞に、舞台芸術の継承と革新的な実践者として、このような評価を受け、継続するための原動力を与えてくれたことに感謝すると述べました。

これからもまだまだ踊り続け、多くの人に台南の文化を伝えていってくれることでしょう。

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