東京オリンピックで活躍した選手たちも隔離期間を経て、様々なイベントに引っ張りだこになりつつも、練習を再開し始めているようです。
ここまで、東京オリンピックの金メダリストと、銀メダリストたちを紹介してきましたが、今週は銅メダルリストたちを紹介しましょう。
台湾は今回の東京オリンピックで、6つの銅メダルを獲得しました。
そのメダリストたちは、
●空手女子組手55キロ級の「文姿云(ウェン・ズユン)」選手
●ボクシング女子フライ級の「黃筱雯(ホワン・シャオウェン)」選手
●ゴルフ男子の「潘政琮(パン・チェンツェン)」選手
●ウエイトリフティング女子64キロ級の「陳玟卉(チェン・ウェンフイ)」選手
●卓球混合ダブルスの「林昀儒(リン・ユンル) 、鄭怡靜(チェン・イージン)」ペア
●テコンドー女子の「羅嘉翎(ルオ・ジャーリン)」選手
この6組。
今回、初めてオリンピック競技に採用された空手で銅メダルを獲得した文姿云選手は1993年、台北生まれの27歳。5歳の時に空手を始め、小学5年生の時に黒帯を取ったそうです。
空手は東京オリンピックで初めて公式種目に採用され、しかも次の2024年パリオリンピックでは空手は採用されなかったことから、空手の選手たちにとってこの東京オリンピックは特別重要で、憧れの舞台です。
東京オリンピックの空手の出場権は、世界ランキングに基づき、上位2位までが直接出場権を手にすることができました。
文姿云選手は昨年(2020年)に出場権を獲得していましたが、新型コロナが世界中にまん延したことから、この出場権の発表が撤回され、一度は手にしたオリンピックの切符を没収されてしまいました。
そして、今年(2021年)4月にポルトガルのリスボンで開催されたオリンピック最終ポイント大会に参加。オリンピックへのチケットに再度挑戦しましたが、初戦で敗れ、チケットを手にできるかどうかは他の選手の結果を待つこととなりました。
結果、ギリギリのポイント差で世界ランキング2位を維持し、55キロ級でオリンピックの切符を手にしました。
文姿云選手そのことを振り返り、「まるでジェットコースターに乗ったときのような、心臓がバクバクする感覚だった」と語っています。
そしてオリンピックでは、準決勝で世界ランキング1位のウクライナのアンジェリカ・テリューガ選手に惜しくも判定で敗れましたが、見事、銅メダルを獲得しました。
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ボクシング女子フライ級の黃筱雯選手も今回の東京オリンピックが初めてのオリンピック。177cm、すらりとした長い手足、そして長い髪に、柔らかな雰囲気で、一見するとボクシングとは結び付かないかもしれません。しかし、彼女にとってボクシングは人生の方向性と目標を見出し、暗闇から救ってくれたスポーツなんだそうです。
1歳の時に両親が離婚、父は薬物乱用で3度投獄され、小さい頃の彼女は自分をさげすみ、勉強も嫌いな子供だったそうですが、13歳の時にボクシングと出会い、目標を見つけ、第2の父親のような存在でもある劉宗泰コーチと共に一歩一歩世界へと向かっていきました。
そんな彼女は過去に自身のフェイスブックで「元々の生まれた家庭環境は変えることはできないが、自分の運命は変えることができる。そして家族の運命も変えたいと思っている」とコメントしていました。この東京オリンピックに出場したこと、そして銅メダルを獲得したことでこれから家族の運命も大きく変わっていくかもしれませんね。
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この他、卓球混合ダブルスの林昀儒、鄭怡靜ペアは、台湾卓球界に21年ぶりのオリンピックのメダルをもたらしました。
鄭怡靜選手は2回目のオリンピック出場。そして、林昀儒、鄭怡靜ペアは卓球混合ダブルスの世界ランキング1位で周囲からのメダルへの期待が高まっていました。
金メダルには届きませんでしたが、銅メダル獲得が確定した瞬間、そんなプレッシャーから解放された瞬間なのでしょう、鄭怡靜選手は号泣だったのですが、振り返るととても冷静な林昀儒選手の姿があったそうで、そこでちょっと感情が落ち着いたと語りました。また鄭怡靜選手は「本当は彼を抱きしめようと思ったのに、彼は私がハイタッチすると思って両手を上げて、姉さんにハグをさせてくれなかったの」とコメントしています。
一方、“小林同學”として親しまれている19歳の台湾卓球界の若きエース・林昀儒選手は、「試合後、彼女が号泣しているのを見たらちょっと気まずくなって、自分も本当は泣きたかったけど泣けなくなった」と語り、現場のマスコミも大笑いしていました。
鄭怡靜選手は「本当は金メダルが欲しかったけれど、ベストを尽くして獲得したメダルだ」と語っています。
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ウエイトリフティング女子64キロ級の陳玟卉選手は、両手でバーベルを握り、一気に頭上まで持ち上げて立ち上がる「スナッチ」で103キロ、そしてプラットフォーム(床)からいったん鎖骨の位置までバーベルを持ち上げ、次の動作で頭上に差し上げる「クリーン&ジャーク」で127キロのトータル230キロの成績で銅メダルを獲得しました。
しかし実は彼女、「クリーン&ジャーク」の2回目、3回目と130キロに失敗したとき、自分は4位でメダルには届かなかった…と涙を流しながら荷物を片付けていたそうで、チームメイトから3位だと教えてもらって見間違いに気づいたんだそうです。
その後は、コーチに抱きついて喜びの涙を流していました。
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参加した選手の数だけ様々な背景があって、そして洗練された技とテクニックで戦うスポーツの世界最高峰の舞台であるオリンピック。
今回、メダルを獲得した選手も、残念ながらメダルには届かなかった選手も、その努力と、多くの感動を与えてくれたことに、そしてお疲れ様でしたという思いも込めて、たくさんの拍手を送りたいですね。