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台湾ソフトパワー - 2021-08-24_東京オリンピック銀メダリスト②(男子アーチェリー団体/体操あん馬・李智凱選手)

  • 24 August, 2021
台湾ソフトパワー
李智凱選手の演技は、“市場の凱ちゃん”から“あん馬王子”へと成長していく過程をずっと見てきた多くの台湾の人たちも固唾をのんで見守っていた。(写真:ロイター/TPG)
台湾ソフトパワー
鄧宇成選手が矢を放つときの掛け声がゲームのキャラクターの必殺技だ!と日本で話題となったアーチェリー台湾チーム。実は台湾語の「水啦」だった!(写真:左から湯智鈞選手、魏均珩選手、鄧宇成選手/CNA)

男子アーチェリー団体(魏均珩、湯智鈞、鄧宇成 選手)

先日(8/21)、“台湾版グラミー賞”と呼ばれる「金曲獎(ゴールデンメロディーアワード)」の授賞式が行われました。

そのプレゼンターに、先の東京オリンピックで金メダルを獲得した、ウエイトリフティング女子59キロ級の「郭婞淳(グオ・シンチュン/かく・けいじゅん)」選手と、銀メダルを獲得した柔道男子60キロ級の「楊勇緯(ヤン・ヨンウェイ)」選手が登場するなど、まだまだオリンピックの盛り上がりが続いていますが、今週の台湾ソフトパワーでも先週に引き続き、東京オリンピックで銀メダルを獲得した4組の中から2組の選手たちをご紹介しましょう。

まずご紹介するのは、男子アーチェリー団体。メンバーは、魏均珩(ウェイ・チュンヘン)選手、湯智鈞(タン・チーチュン)選手、鄧宇成(ダン・ユーチェン)選手の3人。

試合では、1回戦ではオーストラリアのチームに逆転勝利、準々決勝では強敵・中国チーム相手に勝利し、準決勝ではオランダチーム相手に、3人全員が連続で10点を射る高い技術を見せ、そのセットでは6本中5本が10点という素晴らしいパフォーマンスで勝利をおさめ、決勝へと進みました。

決勝では、強豪・韓国と対戦。台湾チームも善戦したのですが、韓国チームのほぼミスのない完璧なパフォーマンスに敗れ、銀メダルとなりました。

ただ今回、台湾のアーチェリーチームがメダルを獲得したのは17年ぶりということで、台湾でも大いに沸きました!

チームの最年長である魏均珩選手は、小学校3年生の時にアーチェリーを始め、2017年のユニバーシアードの団体銀メダル、2018年のアジア競技大会で強豪・韓国チームを破り団体金メダルを獲得した両方に貢献するなど、台湾アーチェリー界の重要な選手です。

そして、湯智鈞選手は最年少の20歳ですが、今回の東京オリンピックでは、個人でもメダルには一歩届きませんでしたが、台湾男子アーチェリー個人の過去最高成績である4強に入りました。

そんな湯智鈞選手と魏均珩選手は長年パートナーを組んでいて、二人はお互いによく理解しあっているそうです。

そして、鄧宇成選手を含めた3人は、2019年のアーチェリー世界選手権でベスト8まで勝ち進み、今回の台湾チームの東京オリンピックへの切符を手に入れ、そして見事、銀メダルを獲得しました。

そんな男子アーチェリー団体といえば、韓国が金、台湾が銀、日本が銅メダルと、表彰台をアジア3か国で上位を占めましたが、その選手たちがメダルを掲げ全員で自撮り記念撮影をしている姿が話題となりましたよね。

またそれと別に、台湾のアーチェリーチームが日本の一部の人たちの間で話題となっていたのをご存知でしょうか。

台湾チームの鄧宇成選手が矢を放つときの掛け声が、スマートフォン用RPGの「Fate/Grand Order」に登場する“弓の名手”「アーラシュ」というキャラクターの必殺技の名前である「流星一条(ステラ)」って言っている!とネットで話題となったんです。

しかも、鄧宇成選手がゲームやアニメのファンであるということもあって、日本ではネットだけでなく、ワイドショーでもこの掛け声はそのゲームから来ていると紹介されていました。

しかし、実はこれ、ゲームから来ているのではないんです。

台湾最大の方言である台湾語で、「ナイス」とか「よしっ!」、「素晴らしい」というときに「水啦(すいらー)」というのですが、どうやらそれが「流星一条(ステラ)」に聞こえて伝わったようです。

そのため、最初台湾では、「鄧宇成選手の『水啦』が日本で超人気に?なぜでしょうか?」というような記事もありました。

でも、このちょっとした勘違いから日本でも注目を集めることになった台湾アーチェリーチーム。

これからも「水啦(すいらー)」という声と共に見せてくれる活躍に期待ですね。

体操男子種目別 あん馬の李智凱選手

そしてもう1人、今回の東京オリンピックで銀メダルを獲得した台湾の選手は、体操男子種目別 あん馬の李智凱(リー・チーカイ/り・ちがい)選手。

台湾ではこの李智凱選手のあん馬の演技を固唾をのんで見守っていた人が多くいます。というのも、台湾では李智凱選手を小さい頃から見てきているからなんです。

幼稚園の頃から柔軟性があり、小さなごみ箱に自ら入ってしまう程、身体が柔らかかったことから誘われ、6歳から体操を始めた李智凱選手─。

お母さんが市場で働いていたことから、学校が終わると市場が遊び場となり、そこで倒立やバク転などを披露して、市場のみんなから親しまれていました。そして、小さい頃から「オリンピックで金メダルを取る!」といつも言っていたそうです。

李智凱選手が台湾中の人から注目を集めるきっかけとなったのは、2005年に公開された台湾映画「翻滾吧!男孩(邦題:ジャンプ!ボーイズ)」。この映画は、台湾北東部・宜蘭の小学校で体操を教える林育信(リン・ユーシン)コーチと練習に励む小学生たちの記録として撮られたドキュメンタリーで、その映画の中で、「市場の凱ちゃん」として取り上げられ、それを機に台湾中の人々に親しまれるようになりました。

ただ、普段はそんなことはないのに、カメラの前では恥ずかしがって、時には大人の後ろに隠れてしまったりしていたそうです。

そんな李智凱選手が得意とするのはあん馬。足先までピンと伸びたトーマス旋回は華麗で、李智凱選手は「あん馬王子」とも呼ばれています。

「市場の凱ちゃん」から「あん馬王子」へと成長し、初めて目標の“オリンピック”の切符を手にした前回のリオオリンピックでは、練習で怪我をしてしまい、個人総合をあきらめるしかなく、足を使わないあん馬だけ出場したものの、バランスを崩して落下し、予選で敗退しました。

李智凱選手に勇気を持ってもらおうと、その後、林育信コーチは、李智凱選手に「人の多い所、騒がしい所に行け!」と、様々な試合に出させ、4年の間におよそ10もの試合に出場、2017年と2019年のユニバーシアードでの金メダルを含む、金銀銅14のメダルを獲得しまし、再びオリンピックの舞台に戻ってきました。

あん馬の決勝戦の前夜には、リオオリンピックで落下したことを思い出し、翌日のパフォーマンスに影響することを恐れたそうですが、その時、父親からの、「努力をすれば50%の可能性がある、しかし努力をしなければゼロだ」という励ましの言葉が頭に浮かんだそうで、自身の心を立て直しました。

そして見事な演技を披露。着地した時、とてもいい表情をしていました。惜しくも銀メダルでしたが、体操を始めて19年、李智凱選手、自身初のオリンピックのメダルを獲得しただけでなく台湾体操界に初のメダルをもたらしました。

メダル獲得後、インタビューで、お互いに言いたいことがあるか聞かれると、李智凱選手は恥ずかしそうに笑いましたが、林育信コーチは「パリオリンピックで金メダルを取った時までお預けだ」と語っていて、この先も目標に向かって共に進んでいくようです。

男子アーチェリー団体の3人、そして李智凱選手、銀メダル獲得、本当におめでとうございます!

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