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台湾ソフトパワー - 2021-07-06_台糖とIMPCTのコーヒーによるホンジュラス中学校建設プロジェクト

  • 06 July, 2021
台湾ソフトパワー
台湾糖業と国際的なNPO(非営利団体)の「IMPCT」が手を組み、ホンジュラスの小規模農家のコーヒー豆を適正価格で購入し、販売収益から現地に中学校を建設するというプロジェクトの2校目が開校した。3校目もまもなく開校予定。(写真:台湾糖業フェイスブックページよりスクリーンショット)

皆さんは、コーヒーの産地といえばどこを思い浮かべますか?

ブラジルやコロンビア、ベトナムなどがパッと思いつくかと思いますが、中米・ホンジュラスも世界有数のコーヒー大国です。

そのホンジュラスに先日(6/25)、コーヒーと企業理念でつながった2つの台湾の企業によって作られた中学校「Las Delicias」が開校しました。

そのコーヒーと企業理念でつながった2つの台湾の企業とは、“台糖”こと「台灣糖業株式有限会社」と、国際的なNPO(非営利団体)の「IMPCT」。

「台湾糖業」は、台湾の農産業において最大規模の企業で、主に砂糖の生産や販売事業を行ってきましたが、近年はその他に、石油類販売事業や、畜産、生物科学技術分野、レジャー施設など、多角的な事業を展開しています。

その台湾糖業では、2017年末から、ホンジュラスの小規模農家から適正価格でコーヒー豆を購入していて、これによって中間業者による小規模農家への搾取を削減しました。

というのも、ホンジュラスのコーヒー生産者は95%が小規模農家で、多くの農家は資本がありません。常に資金不足に直面し、しかも銀行の金利は12~15%と高く、さらには消費者との接点がなく、農家の人たちは苦労して育てたコーヒー豆を輸出業者に低価格で売るしかありません。

そんな小規模農家の苦境を解決するため、台湾糖業は現地の小規模農家の協同組合を訪れ、理念の一致する協同組合と契約を締結。

小規模農家の生産の状況を理解し、水不足問題を解消。協同組合は、技術指導だけでなく、さらには販売認証のサポート、生産資料の電子化など、科学技術による改善を通してコーヒーの収穫量の向上を図り、それと同時に、地域発展のため、助成金を提供して、定期購入者や小規模農家協同組合の協力の下、安心して生活ができる支援をしてきました。

もう一つの企業、「IMPCT」は、元々は、台北市にある国立政治大学の学生だった、台湾、カナダ、エルサルバドル、ホンジュラスの4人によって設立されたチームで、2015年にハルトプライズ財団が主催する世界最大の学生起業アイデアコンペ「ハルトプライズ」で優勝し創業した、台湾の国際的なNPO(非営利団体)で企業でもあります。

会社は台湾を拠点としていますが、その目線は世界を見ていて、世界の経済的に恵まれていない地域における幼児教育を重視し、更にその地域の経済改善のサポートをすることを目的に設立されました。

安定して成長し続けている地元のコーヒー農園と提携して、良質なコーヒー豆を購入し、販売収益を長期的な地域発展計画に投入。コーヒーを通して、地元に幼稚園を建設したり、地元の女性に幼児教育の教師になる機会を与えるためのトレーニングへ投資し、幼児教育から地域経済まで、少しずつ変化をもたらしています。

なお、「IMPCT」はこれまでに、エルサルバドル、グアテマラ、南アフリカ共和国で、高品質、高水準の幼稚園を10校設立しています。

ちなみに、英語の「IMPACT」とは「影響力、影響を与える」という意味ですが、この企業名のスペルは“IMPCT”で、“A”が抜けています。

これについて、IMPCT設立者の一人である陳安穠さんは、「みんな答えが違う」と笑いながら話しつつ、陳安穠さんの考えとしては「皆が社会の問題について意識・気づき(awareness)を失っていることを表している。私たちが意識や気づきをなくしているから、みんなその重要性やどのように変えて行ったらいいのかがわからない。つまり、行動力(Action)も消えてしまう」と語り、「身近な問題をもっと観察し、関心を持つことで行動力が生まれてくる」と説明しています。

そんな二つの企業が、理念とコーヒーでつながり提携して実現した中学校設立プロジェクト。実は、今回は第2弾で、第1弾は2018年にホンジュラスのフランシスコ・モラサン省のへき地にある古い学校を小学校卒業から大学入学までのギャップを埋める5年間の中等教育課程を行う学校に生まれ変わらせました。

ホンジュラスは起伏の多い地形のため、資源に限りがあり、へき地の子供は中等教育を受けようと思ったら平均4時間もの時間をかけて近隣の学校まで行かなくてはなりません。しかも、多くの家庭で経済的にも厳しく、子供たちは途中で学業をあきらめるしかありません。

そこで、ホンジュラスの僻地の教育レベルを引き上げる手助けをするため、台湾糖業とIMPCTが手を取りました。

そして、今年(2021年)、現地時間の6月25日(台湾時間26日午前0時)にホンジュラスに2つ目の学校「Las Delicias」が開校。そしてさらに3つ目の学校も間もなく開校するそうです。新型コロナの感染状況が落ち着いたら、それぞれの学校で、12歳から18歳までの20人から30人の生徒が通います。

先日開校した2つ目の学校「Las Delicias」は、現地で最初の中学校で、「コミュニティ・リーダーシップ・ユース・ディベロップメント・プログラム」を通して、学んだことを地域社会の様々な問題の改善や解決に役立て、地域の生活水準を向上させるよう指導するということで、地域の希望となっています。

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カフェカーと言えば、台湾糖業では、「一杯に理念のストーリーが詰まったコーヒー(一杯有理念故事的咖啡)」と題して、カフェカーを台湾の各地に走らせ、このホンジュラスのコーヒーによる活動を広く知ってもらおうと試飲と拡散活動を行ってきました。今は新型コロナの影響で行われていませんが、この台湾糖業のカフェカーが再び走り出すのを楽しみにしている人も多いようです。

台湾糖業は、「こんなにも愛にあふれる商品を売ったことがない。一杯一杯のコーヒーが、ホンジュラスの高地にある小規模農家とへき地で学ぶ子供たち一人一人の希望と未来につながる」と語り、「このコーヒーを通じて、架け橋となり、台湾人の善行やプラスの影響力をホンジュラスに広めていきたい」としています。

老舗の大企業と、新鋭の企業、その2つが共に掲げる理念に共感し、コーヒーを通じてつないだ台湾とホンジュラスの架け橋。

そしてそのコーヒーが、ホンジュラスのへき地の子供たちの希望となっています。

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