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Rti 台湾国際放送Rti 台湾国際放送台湾ソフトパワー - 2021-06-22_“令和三羽烏”の一人、台湾出身の囲碁棋士「許家元」十段

  • 22 June, 2021
台湾ソフトパワー
4月に日本で行われた以後のタイトル戦「第59回十段戦」で勝利し、タイトルを手にした許家元・十段(右)と、「十段」就位式に駆け付けた台北駐日経済文化代表所の謝長廷・代表(左)。(写真:謝長廷・代表のフェイスブックページよりスクリーンショット)

今、日本で活躍し、注目を集めている台湾の若者がいるのをご存知でしょうか。

その人物とは、今年(2021年)の4月に日本で行われた囲碁のタイトル戦「第59回十段戦」で勝利し、初の「十段」のタイトルを手にした、プロ囲碁棋士の許家元さんです。

囲碁の世界では主要なタイトルが7つあって、「棋聖戦」、「名人戦」、「本因坊戦」、「天元戦」、「王座戦」、「十段戦」、「碁聖戦」が“七大タイトル”と呼ばれています。リーグ戦またはトーナメント戦で挑戦者を決め、タイトル保持者と五番または七番勝負を行い、勝ち越した方が新たなタイトル保持者となります。

その「十段戦」で、今回、芝野虎丸・十段に勝ち、「十段」のタイトルを手にしました。今回の「十段」のタイトル獲得によって、日本棋院の昇段制度で最高段位となる9段に昇段しました。

2013年に入段して以降、わずか8年で最高段位の9段まで駆け上がったことで注目を集めています。

許家元さんは、1997年12月24日、台北市生まれの23歳。

アマチュア棋士だった父親に連れられ、4歳のころ、まだ囲碁のルールもわからなかった時に囲碁教室へ行き、そこで同年代の子供たちに出された難しい問題に正解。以来、囲碁の世界にはまっていき、早くからプロ棋士になることを志していたそうです。

小学2年生の時には既に、台湾でアマチュア6段の腕前を持っていた許家元さん。小学6年生の時、囲碁の組織である棋院の日本人の先生から、もし更に深い教育や、キャリアを追及させ続けたいのであれば、日本に行くという選択肢もあると声を掛けられ、小学校を卒業してすぐ日本へと渡りました。

その時のことについて、「まだ幼いこともあって“怖いもの知らず”だったのか、あの時は単純にただ『行ってみるのも悪くないな』という考えだった」んだとか。

日本に行く前に父親から、「本当に行くのか?行かなくてもいいんだぞ」と声を掛けられたそうですが、許家元さんは即答で「行く!」と答えたことを今でも覚えているそうです。

ただ、実際に日本に行ってみると、日本の生活に慣れることにとても苦労をしました。

台湾では料理は温かいものが当たり前で、日本のサラダのような冷たい食べ物や刺身、生卵など火を通していない食べ物は喉を通らなかったそうです。

さらには、中学校では同級生が話しかけてくれても日本語がわからないため、台湾にいた頃は物静かな子供ではなかったそうですが、日本では最初の1年はほぼしゃべらなかったそうです。

そこで、師匠の計らいで、他の学生と練習対局をし、日本語を練習しながら囲碁の腕前も磨いていくうちにだんだんと落ち着いていきました。

そして15歳の時、晴れて入段。プロ棋士となりますが、その直後、父親を癌で亡くしました。まだ58歳だったそうですが、許家元さんは、「10年くらい闘病していて、医師も生きているのが奇跡だと言っていたので、きっと自分がプロ棋士になったので安心して行ったのかな」と語っています。

プロとなってからも、着々とキャリアを積み上げてきた許家元さん。

一躍脚光を浴びることになったのは、2018年の「碁聖戦」。当時、2度目の七冠独占中だった“天才棋士”と呼ばれる井山裕太・七冠に対して、3勝0敗のストレートで勝利。自身初のタイトルを手にしました。

許家元さんはその時のことを振り返り、「初のタイトルがかかった大会ではあったものの、とてもリラックスしていた。ただ、実力の差はそれほどないとは思いつつも、相手の方が強いと思い、ただただ頑張るしかないという気持ちで挑んだ」んだそうです。結果、第1戦、第2戦ともに勝利。

そして第3戦を前にした時、師匠から「今からが勝負だ。一度でも挽回されると勢いが逆になる」とアドバイスされ、試合の前夜は勝ちたい気持ちが強く、眠れなかったそうです。

前の2戦と同様に、第3戦も序盤から優位に立ちますが、第3戦では「守り」を意識するようになり、攻撃から守りへと切り替えました。すると相手はその隙をついてリズムを崩しにかかり、中盤はかなり苦戦をしたそうです。

本人は当時を振り返り、「傍から見たら3勝ストレート勝ちと見られていますが、実際には第3戦は非常にびくびくしていた」と語っています。

2019年の「碁聖戦」では防衛はなりませんでしたが、今年(2021年)、「十段戦」のトーナメントを勝ち上がって挑戦権を獲得。柴野虎丸・十段に挑戦し、3勝2敗で「十段」のタイトルを手に入れました。

その許家元・十段の就位式が先日(6/7)、東京都内で行われました。

式典では「十段」就位を認める允許状が授与され、優勝賞金700万円の目録と賞杯が渡されました。

許家元さんは、「全体的に自分の力を出すことができた。新型コロナウイルス禍のなか、インターネットでの対局が多くなっていたので、盤をはさんでタイトル戦を打てる幸せを実感した」と日本語で挨拶。「若手に負けないよう他の棋戦や国際棋戦でも活躍できるよう精進したい」と意気込みを語りました。

式典には、大使に相当する、台北駐日経済文化代表処の謝長廷・代表も駆け付け、「許・十段の活躍は台日の囲碁交流と友好の象徴だ」と讃えました。

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実は、許家元さんは、アメリカの経済雑誌「フォーブス」で、昨年(2020年)、アジア各国で活躍する30歳未満の起業家やリーダー、先駆者たちを選出した「30アンダー30アジア」に選ばれています。この年は台湾から5名の優秀な人物がランクインしましたが、そのうち4名はビジネス界や科学技術企業、あるいは起業家で、ビジネス以外では日本在住のプロ棋士である許家元さんが唯一ランクインしました。

囲碁に詳しい方以外では知らない方の方が多いかもしれませんが、許家元さんは台湾では林海峰、張栩に続く三代目の台湾囲碁棋士の代表だとして期待されており、一方日本でも、21歳の芝野虎丸・王座、24歳の一力遼・碁聖と共に、令和に活躍が期待される3人の棋士という意味で「令和三羽烏」と呼ばれています。

許家元さんの今後の活躍からも目が離せません。

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