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台湾ソフトパワー - 2021-05-04_令和3年春の外国人叙勲受章者

  • 04 May, 2021
台湾ソフトパワー
4月に国立台湾歴史博物館を訪れ、雑誌「王子」の創刊号を目にし、喜んで共に写真におさまった蔡焜霖さん(前)。(写真:CNA)

トーク①:令和3年春の外国人叙勲受章者、台湾から3名が受章≫

先日、4月29日、2021年(令和3年)春の外国人叙勲受章者が発表され、台湾からは、日本・台湾間の友好関係の増進に顕著な貢献があったとして、元・工業技術研究院(ITRI)董事長の蔡清彦さん、翻訳家の蔡焜霖さん、元・嘉南農田水利会会長の楊明風さんの3名が受章しました。

蔡清彦さんは、台湾の対日本窓口機関、現在の台湾日本関係協会の前身である、亜東関係協会科学技術交流委員会の主任委員や、台日産業技術合作促進会の理事長なども歴任し、科学技術分野における日本・台湾間の協力促進に寄与したとして、「旭日中綬章」を受章。蔡焜霖さんは、台湾における日本文化の紹介及び相互理解の促進に寄与したとして、楊明風さんは日本・台湾間の友好親善及び相互理解の促進に寄与したとして、共に「旭日双光章」を受章しました。

これを受け、日本の対台湾窓口機関である日本台湾交流協会は、受章者の貢献に敬意と謝意を示しました。

トーク②:「旭日双光章」受章の蔡焜霖さん≫

令和3年春の外国人叙勲では台湾から3名が受章しましたが、そのうちの一人、翻訳家の蔡焜霖さんは、今の台湾の40代から60代の人たちはほとんどが小学時代に読んでいたと言われる雑誌「王子」を作った人物です。

1930年、台中市清水区に生まれた蔡焜霖さん。清水の蔡家は地元では有名な名家で、例えば、現在、立法院の副院長を務めている蔡其昌氏や、日本統治時代の台湾において文化的啓蒙を目的に設立された「台湾文化協会」のキーパーソンであった蔡惠如氏も清水の出身です。

蔡焜霖さんは、台中で最も優秀とされる「旧制 台中州立第一中学校(台中一中)」を卒業。

清水は小さな町ではあるものの、優れた人が多く、学ぶ人もたくさんいて、蔡焜霖さんの周りの同級生でも十数人が台中一中で学んでいたそうです。

台中一中を卒業後、蔡焜霖さんは地元・清水の役場に勤めていました。ところがある日、突然、憲兵に逮捕されてしまいます。

白色テロの時代、当局から、彼が参加した読書会が「違法組織」と認定されたことなどが理由でした。

そして蔡焜霖さんは、両手を縛られ、清水街道を引き回されました。蔡家は清水では有名な名家で、彼も優秀な青年と言われているのに、まるで犯罪を犯したかのような扱いをされ、当時は言葉にできないほどの苦痛を感じていたそうです。

なお、蔡焜霖さんと同じく台中一中に通っていた卒業生たちも、投獄されたり、銃殺されるなど、当時の知識人は政治的な迫害から逃れることは難しいものでした。

蔡焜霖さんは、最終的には10年の懲役刑を受けました。

釈放後、まずは「金融徴信新聞」で働き、2つ目の仕事で、当時、台北市の赤峰街にあった「寶石出版社」で中日翻訳を担当。中国語の作文能力は、監獄時代に身につけたんだそうです。

その後、児童雑誌「東方少年」の編集を担当しました。日本の漫画に影響されて台湾でも若手漫画家が登場したので、「東方少年」出版社で若手漫画家の育成に取り組むようになりました。

しばらくすると「東方少年」が休刊となり、誘いを受けて「文昌出版社」へ移り、台湾製漫画を作ることに。10人から数十人の若手漫画家を育成しました。

ちなみに、台湾の漫画出版大手である東立出版社の創始者・范萬楠氏は、蔡焜霖さんが「文昌出版社」にいた時代に、若手漫画家として芽を出した一人なんだそうです。

蔡焜霖さんはその後、一時は広告代理店にも転職しました。

しかし、1960年代半ば、“編印連環圖畫輔導辦法”という漫画審査制度が発布・執行され、台湾漫画産業は氷河期に突入しました。

「文昌出版社」も倒産─。

そこで蔡焜霖さんは、広告業界を辞め、雑誌「王子」を創刊し、多くの自身と似たような境遇の政治被害者を多数再雇用しました。

この雑誌「王子」は台湾における日本漫画浸透を決定づけたともいえるもので、日本の少年誌を参考に、漫画だけでなく、読み物などを充実させたところ、これが大あたりで、創刊号は2万部、2~3年後のピーク時には4万5000部にまで達し、大ヒット商品となりました。

その間、リトルリーグで世界一になった和歌山チームと台湾で対戦した台湾・台東の紅葉少年野球チームの支援事業も展開。ブヌン族を主体とする紅葉チームは予算がなく、台北の試合に出られませんでしたが、そこで、会社所有のマイクロバスを蔡焜霖さんが運転したり、会社に泊らせたりして、なんとか試合に出られるようにしたりしたそうです。

しかし、雑誌を増やすなどの事業拡大や、印刷工業の台風による冠水などで負債を背負い、経営は厳しくなります。

そして雑誌「王子」は1983年10月に廃刊されるまで400号を出したほか、王子出版社の児童書シリーズは1985年までに200冊余りが出版。

今、国立台湾歴史博物館に129冊の「王子雑誌」が収蔵されています。

今回、「台湾における日本文化の紹介及び相互理解の促進に寄与」したとして叙勲を受章した蔡焜霖さん。

漫画という側面から、台湾と日本の交流に貢献してきた人物です。

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