今、台湾東部・花蓮県でスクーターのシェアサービスが広がりを見せています。台湾は日本と比べるとスクーター利用者が非常に多く、自身のスクーターを持っている人も多いのですが、なぜシェアリングサービスが、しかも花蓮で広がっているのでしょうか。今週は、そんな今、花蓮で広がりを見せているスクーターシェアサービスについてご紹介しましょう。
花蓮でスクーターシェアサービスを仕掛けたのは台湾山葉機車。ヤマハ発動機が台湾に設立した現地子会社で、台湾の大手オートバイ製造メーカーです。その台湾山葉が今年2020年の8月、花蓮にシェアスクーター「YATOGO」を投入すると発表しました。まず第1期として8月15日から90台のスクーターで試験営業をスタート、予定では2020年の年末までに500台、来年2021年には1,500台に増やす計画です。
台湾ではシェアサイクルUbike(ユーバイク)が都市部を中心にすっかり生活に浸透しています。ですが、スクーターといえば大体みんな自身のものを1台持っていますし、シェアが必要な人がそんなにいるのかしら?しかも都市部ではなく郊外で?と思いましたが、花蓮だからこそ必要だと考えたようです。
花蓮といえば、雄大な自然を有する太魯閣をはじめとした手付かずの大自然が多く残る場所。そんな花蓮はとても広く、秘境スポットを訪れるには足がないと向かうことができません。でも電車や飛行機で花蓮までやってきた観光客はそこからの足がない…。そこでこのシェアスクーターがあると助かるというわけです。
私も花蓮に行ったときには足がなく、車を1日チャーターして移動しましたが、スクーターだと小回りも利きますし、自然の風を直に感じることができていいですよね。
では、どのようにして借りるのかというと、利用者はスマートフォンでQRコードをスキャンし、基本的なデータと運転免許証の情報を登録したらレンタル可能です。料金は最初の10分間は無料、その後は毎分1.5台湾元(日本円およそ5.5円)が加算。連続で8時間使用すると、さらに16時間無料で利用できます。台湾元680元(日本円およそ2500円)で24時間利用できます。
なお、スクーターの動きは衛星測位システムで把握されているだけでなく、もしトラブルが発生した場合には24時間体制でカスタマーサービスが対応してくれます。また、故障だけでなく、破損があった場合も、保険会社が認定すれば、すべて保険会社が負担することになり、700万元(およそ2,570万円)の自動車保険を利用することができます。
しかも利用できるスクーターは、発売後3年以内のモデルで、いずれも第7期排ガス規制の条件を満たすものです。また、観光ホテルと協力して、貸し出した場所とは別の場所に返却も可能です。
でも今、電動スクーターが注目を集める中、なぜガソリンスクーターなのか?という点に関しては、電動スクーターの場合、都市部を走るだけなら適しているものの、耐性・走行持続力に限界があるからなんだそうです。
ちなみに、「YATOGO」はガソリン1リットルで50キロ走ることができ、一日花蓮を巡っても余裕で足ります。しかも、第7期排ガス規制の条件を満たすスクーターは、二酸化炭素の排出も減らすことができるだけでなく、花蓮県全域にすでに70数軒のガソリンスタンドがあり、十分に持続走行ができるとしています。
先日、「YATOGO」の袁易・CEOらが、花蓮市の魏嘉賢・市長のもとを訪れ、このシェアスクーターについて説明をし、花蓮市と協力して観光産業を盛り上げたいと伝えました。
それを受け、魏嘉賢・市長は、台湾東部でシェアスクーターを推進することは、消費者の利用習慣を理解しなくてはならないし、産業政策の変化も掴み取らなければならず、大きなリスクともいえる。しかし、国内主要バイク製造メーカーのひとつである台湾山葉が事前に市場を評価した上で推進するので間違いないと信じていると語りました。
花蓮は大自然が広がるがゆえに、道幅が狭く車だと途中までしか入れない場所もあります。でもスクーターならそんな秘境にも行きやすくなりますよね。
今後、「YATOGO」は毎年訪れる数百万人の観光客をターゲットにビジネスチャンスを掴み取りたいとしています。