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台湾ソフトパワー - 2020-10-13_台湾の“有機農業”

  • 13 October, 2020
台湾ソフトパワー
台湾では有機農業の普及に力を入れているだけでなく、有機食品の輸出にも積極的。今年、日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカと有機食品の同等性を認める協定を締結した。(写真:CNA)

台湾といえば“美食”!美味しい食べ物がいっぱい!というイメージの方も多いと思います。しかし、実は台湾の食品といえば、数年前までは食品事件が相次ぎ、社会問題となっていました。

台湾のニュースではしばしば「黒心食品」と呼ばれる、人体に有害な成分を含む食品に関するニュースが流れているのを目にします。

たとえば、2011年、食品への添加が禁じられている有害可塑剤を含む飲食品の流通が発覚。混入はサプライチェーンの川上で十数年という長期間に渡って発生していたために、被害はかなりの広範囲にわたり社会問題となりました。

また、2013年には、大手企業が製造する純度100%をうたっていたエキストラバージンオリーブオイルが、オリーブの含有量が50%にも満たないだけでなく、人体に有害な「銅クロロフィル」が添加されていたことが判明。さらには検査の結果、その会社が製造していたおよそ9割の食品油の表示に偽りがあったことがわかりました。

さらには、これは日本でも報じられたので覚えている人もいるかもしれません。同じく2013年に起きた「毒でんぷん」事件。台湾旅行の楽しみの一つでもあるB級グルメの、タピオカや麺類、おでんの具、揚げ物の衣など、多くの食品に、食用ではなく、接着剤などの工業用の原料の「無水マレイン酸」が混入したでんぷんが使われていたという事件。ぷりぷりした食感やつやが出てコストも抑えられるため、一部の製粉業者が10年以上前から販売していたと見られ、このことが台湾の主力であるグルメ観光に打撃を与えるのではないかと社会問題となりました。

そして2014年には、廃油を原料として作られた違法な食用油が広く流通していたことが発覚。さらに、その事件の衝撃が冷めやらぬ中、今度は大手グループ企業傘下の会社が飼料用油を混入させた食用ラードを食品業者や飲食店などに販売していたことが発覚。

…と、大きな食品事件だけでもこのように続き、消費者の不信感は増すばかり。そんな不信感から、食品の安全性への関心が大きく高まり、“承認を受け、確実に信頼できる食品を求める消費者”の意向が強くなってきています。

実際に、スーパーに行っても、生鮮食品の売り場では、有機食品かそうでないかに関わらず、生産地や生産者の名前などが表示されているものが多くあります。日本と同じで、生産者の顔が見えることで安心感を得ているんですね。

また、伝統市場でも、2016年から、豚肉の産地や食肉加工日を消費者がQRコードを読み取って確かめることができるトレーサビリティー(生産履歴の追跡)システムが運用されています。

そして、こうした社会的背景から最近ではさらに“有機農産物”に対するニーズが高まっています。

台湾では、有機農業の普及に力を入れていて、2019年5月30日には「有機農業促進法」が施行されました。これによって、有機および“環境にやさしい農業”の耕作には、1ヘクタールあたり3万から8万台湾元(日本円およそ11万から29万円)の補助を出すほか、検査費用、温室、農機具設備、有機肥料、有機検査費用の9割を補助するなど、多様なサポートや奨励措置が受けられるようになり、有機農業の持続可能は発展が促されることとなりました。そして、有機農産品の品質を高め、国民の健康を守り、生産者と消費者の両方の権益に配慮し、さらには環境の有機生態系、農家の有機生産、消費者の有機生活という目標を達成できるよう取り組んでいます。

この「有機農業促進法」が施行された5月の時点で、有機認証された農地面積と“環境にやさしい農業”の登録を行っている農地面積の合計が1万2,194ヘクタールで、目標は来年までに1万5,000ヘクタールに増やしたいとしていましたが、行政院農業委員会農糧署の9月末のデータを見ると、有機認証された農地面積は1万459ヘクタール、また“環境にやさしい農業”の登録を行っている農地面積は4,646ヘクタールで、年末を待たずして目標の1万5,000ヘクタールを達成!有機認証された農地が農地全体に占める比重もアジア太平洋諸国でもトップレベルとなっています。

そんな有機農業の普及に力を入れている台湾では、その有機食品の輸出においても積極的に進めています。しかし、これまでは台湾で有機の承認を受けていても、輸出先の国で再び有機承認の申請を受けないと“有機”と名乗って販売することができませんでした。これは日本も同じですね。日本の有機JASの承認を受けていても、輸出先の国で再度申請が必要です。

今回、その手間やコストを省き、市場の競争力を高めるため、台湾は、日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカと相次いで有機食品の同等性を認める協定を締結しました。この協定の締結は、相手国が台湾の有機農業に関する法律と、その実践状況を見た上で、台湾の有機認証システムがその国と相当レベルの管理の下で行われていると判断した事を意味します。つまり、台湾で有機認証を得た商品が“有機”と銘打ってその国に輸出される事を認めるということです。

日本とは今年(2020年)の2月から“有機”と表示した農産物の輸出入がお互いに可能となっていますので、スーパーで“台湾産の有機食品”を見かけることがあるかもしれません。

今、台湾のみならず、有機市場は急速に成長を続けている中、今後は有機認証を得た台湾の農産品のブランディングと知名度向上を図り、海外市場の開拓を強化していこうとしています。

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