今日ご紹介するキーワードは「圓陣敬禮」。
今、野球の世界一を決める4年に一度の大会、WBC(ワールドベースボールクラシック)が盛り上がっていますが、皆さんもご覧になっていますか?
台湾でも日本でも、まずは東京ドームで行われる準々決勝ラウンドで台湾と日本のチームが戦う姿を楽しみにしていたという人も多かったようです。
残念ながら台湾チームの東京ドーム進出は叶いませんでしたが、今回の大会で台湾が世界から注目された出来事がありました。
ひとつは、「台湾スタイルの応援」。
今回、台湾では、台湾プロ野球の各球団から選抜された21人のチアダンサー「クラシック・ガールズ」がスタンドでファンをリードして応援していました。
台湾野球のチアは日本では既に人気となっていますが、この様子が放送されると、アメリカ人ファンも熱狂!「MLBにもチアリーダーが必要だ」との声が相次ぎ、試合の初回から絶え間なく続く応援に「チアリーダーとファンはおそらく選手よりも運動量が多いと思う」など、驚きの声も上がっていました。
そしてもう一つは、今日のキーワード「圓陣敬禮」。
台湾のチームが試合終了後、マウンドに集まり、円陣となり、360度すべての観客に向かってお辞儀をする姿です。
日本では自身のチームサイドのスタンドに応援に感謝をして並んで一礼する挨拶の習慣がありますが、台湾のチームはグラウンドの中心で、球場の全方向の観客に向けて挨拶をします。
その日本と台湾の挨拶の様子が、WBC公式ツイッターで紹介されると、海外のファンから注目を集めました。そして台湾のチームの挨拶には日本のファンからも、「台湾の選手も挨拶をするんですね」とか「台湾の挨拶は全方位へするスタイルで好き」といったコメントが集まりました。
実はこの台湾のチームが円陣を組んで行う挨拶は、2013年のWBCで台湾と日本が戦った試合がはじまりだったんです。
東日本大震災から2年後の2013年に行われたWBCで、日本の初戦の相手が台湾に決まった際、1人の日本のネットユーザーがツイッターに「この試合を観に行かれる方、東日本大震災の台湾からの多大な支援へのお礼の横断幕やプラカードをお願いします。WBCを通じ、私たちが本当に台湾に感謝していることを伝えてください」とつぶやいたところ、それに多くの日本人が反応。その呼びかけは瞬く間に日本中に拡散されました。
そして更に、そのことが今度は中国語に訳され台湾でも拡散され、マスコミでも取り上げられました。
ただ、その時にはもう台湾チームのメンバーは日本入りしていたことから、選手たちはこうした盛り上がりを知りませんでした。
そして試合当日、スタンドには「ありがとう台湾」、「謝謝台灣」という感謝の言葉と、「台灣加油」という応援の文字が書かれたたくさんのプラカードが。台湾の選手たちはその時初めて気付き、とても驚き、感動したそうです。
そうして始まった試合は4時間37分にわたるWBC史上に残る名勝負となり、延長10回、4対3で日本が勝利。ですがこの試合のあと、勝利に湧く日本チームの後ろで、台湾チームのメンバーが全員でマウンドに向かうと、360度全方向の観客に向かって一礼をしたんです。
これは、勝ち負けを越えた台湾と日本の心の絆に対する感謝の気持ちからだったそうです。そしてその後、この試合後の「円陣を組んでの挨拶」が台湾のチームの特色となりました。
あの挨拶にはそんなエピソードがあったんですね。
今回はその姿を日本で直に見ることはできませんでしたが、映像を通して日本、そして世界の人たちを感動させました。