昨年の7月にもこのコーナーでお伝えしましたので、覚えているというリスナーの方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の愛媛県中部、東温市にある「坊っちゃん劇場」では昨年の4月から「日台野球交流100周年記念ミュージカルKANO~1931 甲子園まで2000キロ~」の公演を行っています。「KANO」とはなにか、台湾マニア、野球マニアの方はご存知ですかね。
日本の統治下にあった台湾でも、1923年から1941年まで、台湾予選にあたる全島中等学校野球大会が19回行われました。そして、1923年から1930年まで台湾の代表は、いずれも台北の、それも日本人のみで構成されたチームでしたが、1931年、愛媛県松山商業出身の近藤兵太郎監督に率いられた嘉義農林、台南州立嘉義農林学校は日本人、漢人、そして台湾原住民族の選手の混合チームでした。嘉義農林は台湾予選を突破すると、甲子園本大会でも3試合を勝ち抜いて決勝に進出、決勝ではその年から三連覇を果たす愛知の中京商業に0-4で惜敗したものの、その快進撃は、日本の野球ファンの心をつかんだだけでなく、統治下にあった台湾の人々を熱狂させたのでした。「KANO」は嘉義農林の略称ですね。嘉義農林はその後も3回、合計4回甲子園に出場しました。
このストーリーは、台湾では知る人ぞ知る話でしたが、2014年、台湾のウェイ・ダーション監督がプロデュース、マー・ジーシアン監督で2014年に台湾で映画化され、日本でも翌2015年に「KANO 1931海の向こうの甲子園」の題名で公開され、関連書籍も発行されたことで、広く知られることとなりました。また、嘉義農林の後身、国立嘉義大学と中京大学や、嘉義市と愛媛県の交流も盛んとなりました。
昨年4月からは、近藤監督の故郷、愛媛県の「坊っちゃん劇場」で「日台野球交流100周年記念ミュージカルKANO~1931 甲子園まで2000キロ~」がスタート、公演スタートから一年余り、公演回数は300回を超え、延べ5万人が鑑賞とロングランとなっています。昨年10月には嘉義市と愛媛県の間で、野球を切り口としたスポーツ・文化・観光面の交流を促進する覚書を締結し、交流はさらに盛んになっています。
今年7月には、近藤兵太郎氏が、台湾の野球の殿堂において外国人としてはじめて殿堂入りを果たしたほか、8月上旬には、嘉義農林の後進である、国立嘉義大学の野球部が愛媛県を訪問、7日には「日台野球交流サミット」への参加、「坊っちゃん劇場」でミュージカルの鑑賞をしたのち、8日と9日には、四国地区大学野球連盟の選抜チームと練習試合を行いました。そして、このほど、このミュージカルの嘉義公演も決定しました。一行は10月下旬に来台、18日に地元の小中学生向けに演じたのち、19日、20日と嘉義市政府文化局の音楽ホールで公演が行われます。同ミュージカルは、中華民国籍のあの王貞治さんも名誉顧問をつとめています。嘉義市と愛媛県、交流がますます深まることを期待したいですね。