今回は、台湾全土3856kmを徒歩で一周し、日本だけでなく台湾の各メディアからも注目を浴びたある日本人男性の話題です。その方は、田中佑典(ゆうすけ)さんといいます。出身地は日本の福井県で、自身の生活をネタにして活動を行っていることから、「生活タレント」という肩書きで活躍されています。
これまでおよそ15年間にわたり台湾と日本をつなぐイベント企画などの活動を続け、台湾と日本の架け橋となる様々な活動を行ってきた方です。
また、2011年からは「LIP」という台湾と日本をつなぐカルチャーマガジンを発行。中国語名は「ありえない」を指す話し言葉の「離譜」。これは、「譜面から離れる」という、田中さんがやろうとしているカテゴリーやジャンルから逸脱していくことに通じる意味合いを持っているといいます。この本では自分たちの足で歩きまわり、地元の人との出会いやつながりから発見した“現在進行形の台湾”を紹介しています。
2023年には、台湾で使う中国語の学習書「カルチャーゴガク」を出版。堅苦しい語学学習ではなく、旅を楽しむためのコミュニケーション術として中国語を学ぶことをテーマとして製作された本です。
では福井出身の田中さんがなぜここまで台湾にのめり込むことになったのか。その最初のきっかけは、これまで日本や欧米の文化をインプットする風潮から、独自のカルチャーを発信する方向へ変わりはじめた台湾に魅了されたからだといい、2010年から台湾を訪問するように。徐々に、興味は「ローカル、地方」に移り、地方に一定期間定住し、その土地での「暮らし」を体験する旅のスタイル「微住(びじゅう)」の提唱をし、2017年から台湾と福井の間でこの微住を進めています。
新型コロナウイルス流行の際は台湾訪問を一旦止め、東京から故郷の福井市に戻りました。その際、地元福井の潜在的な魅力を探ろうと、県内全市町を歩いて横断し、その旅を「微遍路(びへんろ)」と名付けました。そして2023年に、さらに長い距離を歩く台湾全土横断の旅「台湾微遍路」に踏み出しました。日本から一回の渡航でノービザ滞在できる期間が90日間であるため全行程を3回に分け進められました。
第1弾は2023年7月1日~9月2日までの64日間、南部・高雄市から北上し、台湾の東側の台東県、花蓮県を経て北東部の宜蘭県まで行く1351kmを歩きました。
第2弾は2023年11月6日~12月29日までの54日間、宜蘭県から北上し、台北市を通過して、今度は西岸を南下して島の中央部に近い台中市までの1234kmを歩きました。
最後の第3弾は2024年1月11日~3月6日までの56日間、台中市をスタートして第1弾の出発地点である高雄市に向かう旅です。終盤に通った高雄市の漁港で目にした夜明けはこの「台湾微遍路」の中で一番の美しさだったといいます。
田中さんは期間中、ほぼ毎日歩き、横断に成功したのはすごいですが、その上、歩きながらその日泊まる場所を探し、現地の人ともしっかり交流したのも素晴らしいところです。時には朝の公園に紛れ込んで現地の人と一緒に体操をしたり、また、一緒にカラオケを歌ったり温泉に入ったり。これを合計174日間、3856kmの道のりでずっと実践しつづけたのですから、その体力と行動力には驚きです。
*私からの一言
今後も、台湾と日本の架け橋となる田中さんの新たな活動に注目したいですね。