先日、台湾からある“動物”が日本へと渡りました。その動物とは“ミナミシロサイ”の「艾瑪(エマ)」ちゃん。
「エマ」ちゃんは、台湾北部・新竹にある六福村主題遊樂園の野生動物園「六福村野生動物園(レオフー野生動物園)」で育ったメスの“ミナミシロサイ”です。現在5歳。
「エマ」ちゃんが日本に渡ったわけは、お見合いのためなんです。
というのも、“ミナミシロサイ”はアフリカ南部に生息する準絶滅危惧種指定動物で、その角がアジア諸国で伝統薬の成分として重宝され、多くの場合は違法であるにもかかわらずいまだ高値で取引されることから、密猟があとを絶ちません。19世紀の終わりには100頭以下にまで減少したそうですが、そこから南アフリカでの100年におよぶ手厚い保護により、やや回復しましたが、それでも現在まだ1万8000頭ほどしか残っていないそうです。
そこで、アジア圏では、近年“ミナミシロサイ”の飼育下での繁殖が進められていて、中でも台湾の「六福村野生動物園」では繁殖に成功。1979年の設立時にアフリカから8頭のミナミシロサイを引き入れましたが、それから40年、今では3世代目、合計23頭にまで繁殖していて、現在、アジア最大のミナミシロサイの繁殖基地とされています。
そして、一方、「エマ」ちゃんが向かった日本の埼玉県にある東武動物公園も開園当初から2頭のミナミシロサイを飼育していましたが、いずれも死んでしまったことから、今回、台湾の「六福村野生動物園」から繁殖のために譲り受けたというわけです。
なぜ23頭いる中で「エマ」ちゃんに白羽の矢が立ったのかというと、「エマ」ちゃんは繁殖に適した5歳。そして性格は穏やかで楽天的とのこと。
元々は今年、2021年の3月に日本へ向かう予定でしたが、新型コロナの影響によっておよそ3か月遅れての出発となりました。
その間、これから違う言語の世界に行くということで、飼育員さんたちも日本語で呼びかけたりと日本に行く準備を着々と進めてきたそうです。
出発の前日にはお別れを感じ取ったようで、少し落ち着きなく歩き回っていたそうで、飼育員さんが「エマ」ちゃんの大好きな泥を体に塗って落ち着かせるなどしたそうですが、日本への移動中は、温和な性格の「エマ」ちゃん、落ち着いているだけでなく、眠ってしまうほどリラックスしていたんだとか。
そしておよそ16時間の長旅を経て、東武動物公園に到着した後も、好奇心旺盛な赤ちゃんのように、新しい環境を見て回って、自ら足を踏み出したそうですよ。
先日6月26日には一般へのお披露目と、歓迎式典が行われ、現場に駆け付けた家族連れや、東武動物公園がYouTubeで行っていた歓迎式典の生放送を観ていたネットユーザーたちからも「かわいい~」という声が上がっていました。
今後は、秋ごろに「エマ」ちゃんのお見合い相手であるオスの「モラン」くんも東武動物公園にやってくる予定です。
なお、現在、東武動物公園では、「エマ」ちゃん歓迎キャンペーンが行われていて、特別なステッカーを配ったり、レストランで「エマちゃんカレー」が登場しています。機会があれば「エマ」ちゃんに会いに行ってみてくださいね。
今回のプロジェクトは、台湾側も、これまで繁殖に成功してはいるものの、台湾と日本の動物外交において初の「台湾からの絶滅にひんしている大型動物の輸出」に成功した歴史的瞬間で、台湾の関係者は「各国の専門家と協力して、ミナミシロサイの永続的な存続に向けて努力していく」と語っていました。
そして、「エマ」ちゃんと「モラン」くんのお見合いがうまくいって、今後の繁殖にもつながっていくことを期待しています。