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馬場克樹の「とっても台湾」-2022-10-9_土地公

  • 09 October, 2022
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馬場克樹の「とっても台湾」(爸爸桑的「非常台灣」)

<第1セクション:神仏が身近な台湾>

  • 台湾の人々は信心深い。春節(旧正月)、清明節、端午節、中秋節など重要な節季には、台湾の寺廟や自宅では神仏や祖先に香を焚き、お供え物をして参拝することを欠かさない。この参拝のことを台湾語で「拝拝(バイバイ)」という。老若男女問わず、寺廟で祈願する参拝者の真摯な姿には感動すら覚える。こちらでは生活の中に信仰が根付いている。台湾では道教と仏教が混じり合った形で「神仏混淆」存在する。たとえば、道教の海上安全の神様である「媽祖廟」に「観音菩薩」が祀られていたり、場合によっては儒教の祖、「孔子」まで学問の神様として祀られていたりもする。霊験あらたかで有難い存在ならば、宗教宗派を問わず神様に祭り上げられる。この宗教の枠をもゆるやかに越えていく大らかさ、受容度の高さは、台湾の文化を語る上での一つの鍵ではないか。
  • また、台湾の道教においては、歴史上、伝説上の偉人を押し並べて神様に昇格させている点にも注目したい。学問の神様の「文昌帝君」然り、海の守り神の「媽祖」然り、『三国志』の武将から財神「関公」として崇められている「関羽」然り。
  • 台湾で神様になった日本人もいる。いずれも日本統治時代に台湾に寄り添った先達だ。牡蠣の名産地として名高い嘉義東石の副瀬村の派出所勤務の傍ら、村民のために減税の嘆願に奔走したが果たせず、義憤に駆られて最後は自ら命を絶った森川清治郎。この警察官は「義愛公」もしくは「日本王爺」として地元の人々から慕われ続けている。また「烏山頭ダム」の建設を指揮し、「嘉南大圳」を穀倉地帯に変えた八田与一技師、零戦に乗機中に米軍の攻撃で被弾しながらも村人を救うため、自らの命と引き換えに集落を避けて搭乗機を墜落させ、「飛虎将軍」として祀られている杉浦茂峰兵曹長などの名が挙げられる。結果として民族の出自を問わず、時代を超えて「功」やこの土地や民への「愛」のあった人物を語り継ぎ、崇め続ける姿勢も台湾独特のものであるように思う。

 

<第2セクション:神明界のよろず相談所「土地公」>

  • ところで、道教の神様の世界は、天上の最高神である玉皇大帝を筆頭に、明確なヒエラルキーが形成されているのも特徴の一つだ。その階層の底辺に位置する神様がいる。台湾語で「土地公(トーデコン)」と呼ばれる「福徳正神」だ。土地公は「神明界の派出所」とも言われていて、その土地に暮らす人々のよろず相談に応じてくれる神様で、人々の暮らしの最も近いところに存在している。その地域の守り神であると同時に、財神として商売繁盛、農業の神様として五穀豊穣、医薬の神様として無病息災等の役割も兼務している。
  • 台湾では、時折、商店の店先に拡げられたテーブルの上に果物やお菓子やお酒などのお供えものが置かれ、その脇で「紙銭」を焚いている光景を目にすることがある。これは旧暦の2日と16日に、自分の店の商売繁盛をその場所を管轄する土地公をはじめ、関係諸神に祈願する「作牙(ツォゲェ)」。「拝拝(バイバイ)」と呼ばれるこの祈願は、旧正月の5日、映画やテレビドラマのクランクインや舞台の初日にも、「開工大吉」と称しても行なわれる。

 

<第3セクション:「祝禱疏文(道教の祝詞)」を唱える>

  • 旧暦の2日と16日には、台湾の街の至る所で「拝拝」では、「金紙店(ギムヅアディァム)」で神様にお供えする紙銭を買い求め、三種の果物や菓子、お酒などのお供え物をテーブルに並べ、土地公に対しての商売繁盛の祈願の言葉「祝禱疏文(道教の祝詞)」を唱える。その祝詞文はこのような内容である。
  • 「わたくしどもは恭しく香を焚き、果物、清酒、菓子、金銀財宝(紙銭のこと)をお供えいたします。玉皇大帝(天上の最高神)、三官大帝(天地水を司る神)、諸仏菩薩(諸々の仏と菩薩)、土地公の福徳正神(店のある土地の守り神)、城隍尊神(城市の守り神)、五路福神(福の神)、五路財神(財神)に、謹んで当店までご足労の上、お供え物、金銀財宝をご笑納いただきたく存じます。そして、異郷のこの地で店を商うわたしどもにどうぞご加護を。日々商売繁盛し、お客様がたくさんご来店くださいますように。また、わたくしどもが平安であり、願い事が叶いますように。」

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