今週(9/29)、台湾もいよいよ国境が開放され、人々の交流が再開となりますが、人の交流より一足先に日本から今、“国宝級”…ではなく、まさに“国宝”が台湾にやってきていて、注目を集めています。
今月(9/16)から台湾北部・台北にある国立故宮博物院で「閑情四事──插花、焚香、掛畫、喝茶(四つの侘び寂び—生け花、香道、掛け軸、茶道)」特別展が行われています。
この特別展は、国立故宮博物院が國家圖書館、日本の大阪市立東洋陶磁器美術館、そして京都の大徳寺龍光院(だいとくじ・りょうこういん)と共同で102点の所蔵品を展示しています。
国立故宮博物院によると、今回の展示は、12世紀ごろ、宋の時代の人々が花を生け、香を焚き、掛け軸をかけ、お茶を飲むことにどれだけ気を配ってきたのかに焦点をあてたものだそうです。
例えば、宋の時代の人は、花を生ける際に特に器や素材との組み合わせにこだわっていたそうです。
そして香りは好みの問題だけでなく、個人のセンスも問われていたとか。
また掛け軸は、住まいを美しくするだけでなく、そこに足を踏み入れるとその優雅な空間が生まれるということも重要としています。
友人が大勢集まる時はお茶をメインにした茶会を開き、一人で、もしくは少人数で飲むときには、古来の煎茶というスタイルで楽しんでいて、これは現代人が日常生活の中に豊かな「儀式感」を生み出すのと似ているとしています。
そんな様子が垣間見える特別展。
その中で注目を集めているのが、台湾と日本の黒釉の茶碗の共演!
大阪市立東洋陶磁器美術館所蔵の日本の国宝である、南宋時代、福建省にある建窯で焼き上げられた「油滴天目茶碗」が、この度、初めて日本を出て海外での展示です。
水面に浮かぶ油の滴のようにみえる金・銀・紺に輝く斑点から油滴と呼ばれています。この油滴は、釉薬に含まれる鉄分が釉の表面で結晶したものなんだそうです。そして、縁は金でなぞられていて、それが見た目のアクセントにもなっています。
これは、鎌倉時代に日本にもたらされ、豊臣秀次が所持し、のち西本願寺、京都・三井家、若狭・酒井家に伝来したんだそうです。
そして台湾からは、国立故宮博物院所蔵の南宋時代の吉州窯で焼き上げられた「黑釉葉紋碗」が登場。
天然の桑の葉を黄釉で染めた後、黒釉の碗に貼りつけ、窯の中で一気に焼成したもので、葉を高温で焼ききると、碗に黄褐色の葉の残りが移り、自然を彷彿させ、禅のような幽玄の美学を感じさせます。
この日本と台湾の2つの黒釉の茶碗の共演。
同じ黒でも「銀河」と「幽玄」といった、2種類の全く異なる美意識を表現していて、両極端の美学対決ともいえるとして、多くの人を魅了しています。
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そして、国宝がもう一つ!
同じく、大阪市立東洋陶磁器美術館所蔵の元の時代に龍泉窯で焼かれた「飛青瓷花生」という花瓶。
下の方が膨らみ、口がすぼまった形のこの瓶は俗に「玉壺春」と呼ばれる器形です。ほっそりした頸と豊かに膨らんだ胴の部分が好対照をなして、見事な均整美を見せています。
こちらも今回、初めて海を渡って海外での展示です。
この他にも、3つの重要文化財が初めて海を渡り、日本から台湾にやってきています。
“国宝級の~”ではなく、これぞまさに“国宝の交流”。
まだ日本へ行けなくても、日本の国宝を鑑賞することができるとして、今、台湾で注目を集めています。
なお、この特別展「閑情四事──插花、焚香、掛畫、喝茶(四つの侘び寂び—生け花、香道、掛け軸、茶道)」は12月18日まで開催中。
その間、多くの人にこの“日本の国宝”も楽しんでもらいたいですね。