昨日(5/8)は、“嘉南大圳の父”と呼ばれる八田與一・技師の命日でした。
“嘉南大圳”とは、日本統治時代、不毛の地とされていた台湾南部に広がる「嘉南平原」を大穀倉地帯へと生まれ変わらせた、大規模な灌漑設備のこと。
その“嘉南大圳”の主な水源となる「烏山頭ダム」は、日本統治時代の1920年に着工。
当時としては最新技術を駆使した世界有数の巨大プロジェクトで、10年の歳月を経て完成させた、当時、「東洋一」とも呼ばれたダムです。
その「烏山頭ダム」を含めた“嘉南大圳”の建設に尽力した人物が、八田與一・技師です。
八田・技師は、水の流れに乗って運ばれる土砂が、重い粒子の順に堆積する原理を利用した“セミ・ハイドロリックフィル工法”という、当時の最先端技術を採用し、1億5000万トンの貯水量を誇る「烏山頭ダム」という巨大ダムを造りました。しかも、建設開始から100年以上が経過していますが、今もなお現役で、台湾の土地を潤しています。
そして八田・技師はさらに、「三年輪作給水法」を導入。1億5000万トンの貯水量を誇るとはいえ、全ての土地に同時に給水することは物理的に不可能。そうなると、給水面積を縮小せざるを得ない…と考えるところですが、八田・技師は、それならば土地を3つの区域に分け、米、サトウキビ、雑穀を一年ごとに、交代で順番に栽培していき、その年、米を作るエリアには給水、サトウキビを作るエリアには植え付けのシーズンだけ給水、そして雑穀を作るエリアは給水なし…と順番に回していこう!と考えました。
これによって、全農民の稲作技術が向上し、農家の人たちの暮らしも豊かになりました。
また、「烏山頭ダム」建設中には、「よい仕事は安心して働ける環境から生まれる」という信念のもとに、職員用宿舎や、病院、学校、大浴場を造るとともに、娯楽の設備、弓道場、テニスコートといった設備まで建設。日本人も、台湾人も、分け隔てなく仲間として苦楽を共にしました。
このように、八田・技師は技術者として抜群に優れていたばかりでなく、人間としても優れていて、肩書や人種、民族の違いによって差別しなかったことから永遠に台湾の人々から慕われています。
そんな八田與一・技師の功績は、台湾の歴史の教科書にも掲載され、台湾で最も尊敬される日本人として知られています。
毎年、八田與一・技師の命日である5月8日には、「烏山頭ダム」のほとりにある八田・技師の銅像の前で墓前祭が行われていて、多くの台湾人が慰霊に訪れます。
今年(2022年)も新型コロナの影響で、日本からの参列はかないませんでしたが、昨日(5/8)に没後80年となる墓前祭が行われました。
でも、これほどに有名な日本人、八田與一・技師が、日本ではあまり知られていないことに台湾の人たちはびっくりします。
近年は徐々に日本でも紹介されるようになってきましたが、まだ知らない人が多いと思います。
そこで、今、八田與一・技師のことを世に広く知ってもらおうと、日本舞踊家で舞台プロデューサーの月妃女(つきひめ)さんが、八田・技師に関するドキュメンタリー動画を作り、YouTubeで公開して広めていこうと、クラウドファンディングを行っています。
このクラウドファンディングが成功したら、より多くの、特に日本人に、八田與一・技師のことを知ってもらえる機会が増えそうですね。
興味がある方は、「八田與一」、「クラウドファンディング」で検索してみてください。なお、募集は5月31日までとなっています。