5月上旬から新型コロナウイルスの市中感染が急激に広がった台湾では、5月中旬から感染警戒レベルが3級に引き上げられており、中央感染症指揮センターは、不要不急の外出をしないよう呼びかけています。また、伝統的なマーケットへでの買い物についても、多くの自治体が、身分証や居留証の番号の末尾の数字をもとに、利用者の分散を図っているほか、買い物は、できるだけ一週間に一回とするよう、つまりまとめ買いをするよう呼びかけています。
感染警戒レベル3級引き上げに伴い、食堂、レストランなどでは店内での飲食ができなくなった為、各外食産業の業者は「持ち帰り」もしくは「デリバリー」に生き残りをかけているんです。
本日の「ようこそT-ROOMへ」では、フードデリバリーサービスや、各業者の持ち帰り、デリバリー対応に関する話題をご紹介したいと思います。
まずはフードデリバリーサービスに関するデータをご紹介しましょう。台湾市場においてシェアナンバーワンを誇るフードパンダによりますと、感染警戒レベルが3級に引き上げられた5月中旬から、オーダー数が2割増加、中でも生鮮食品、雑貨類の成長幅は最も大きく、5倍近くとなったということです。また、フードメニューのオーダーも40%前後アップしたとしています。業界2位のウーバーイーツも同様に、オーダー数が増加、中でも生鮮食品のオーダーが大きく成長したと答えました。外食ができなくなり自炊する人が増えた上、買い物の回数が限られている中、ニーズが増えているんですね。
こうした傾向は感染警戒レベル引き上げから1ヶ月経った現在も変わっておらず、フードパンダにおける生鮮食品のオーダーは、感染が拡大する前の4倍あまり、また一回の購入金額も大きく伸びているということです。フードパンダによりますと、手軽に料理がしやすい食材である、鶏卵、えのき茸、キャベツなどの生鮮食品の売上が目立っているということです。フードパンダでは、生鮮、雑貨の購入金額が499元に達すると、送料が無料になるサービスを行っています。
こうした中、メッセージアプリLINEの「LINEショッピング」も、こうした生鮮食品のニーズに着目、6月17日から良質な台湾産の野菜の直送を行う「ファーミング」と提携し、様々な野菜の詰め合わせボックスの配送を行っています。野菜の詰め合わせボックスは台湾元499元(日本円にしておよそ1975円)と799元(日本円にしておよそ3160円)の2種類があり、一日限定500箱ということです。
このような、自炊する人の増加による生鮮食品のニーズ増加のほか、店内での飲食ができないという状況は、外食産業、特に店内でのグルメ提供に力を入れていたレストランに深刻な影響を与えています。大手外食グループ傘下のレストランや、ミシュラン・ガイドで推薦された豚足の名店、そして南部、台南を代表するグルメ、ミルクフィッシュ、サバヒー料理の老舗などもフードデリバリーサービスに加盟することとなりました。ウーバーイーツによりますと、5月単月で何と8000軒を超えるお店が、新たに加盟したということです。
大部分の外食産業が苦戦するなか、売上が好調な外食チェーンもありました。それは、台湾最大の餃子チェーン「八方雲集(パーファンユンチー)」です。各種の水餃子、焼き餃子、スープなどが看板メニューの「八方雲集(パーファンユンチー)」は、この5月、昨年の同月比23.6%増の売上高をマークしました。アナリストはこの好調ぶりについて、「現在、外食産業の中で、客が、注文から商品を手にするまでの時間が速い、回転率がいい持ち帰りに適した店は、影響が最も少ない」と指摘しました。持ち帰り、デリバリーに適した店が強さを発揮しているんですね。
続いては、フードデリバリーサービスで、どのような商品が売れ筋なのかジャンルごとにご紹介しましょう。このランキングはLINEが提携しているフードデリバリーサービスの業者の統計によるものです。トップ10、10位は、パスタや、台湾の人々のソウルフード、刻んでトロトロになるまで煮込んだ豚の三枚肉をごはんにかけたルーロウファンなど晩ごはんでした。9位は、タピオカミルクティーやティーオレなどのミルクティー、8位は、フォカッチャやパニーニといった流行中の軽食となりました。7位、6位はいずれも朝食メニューとなり、「蛋餅」、蛋白質のたん、お餅の「餅」と書き、小麦粉の粉を水に溶いたものを熱し、溶き卵と合わせたクレープのような生地に、様々な具を挟んで、一口大にカットして食べる「蛋餅」など、朝食定番メニューが入りました。そして、5位、4位、3位は丼物や、ハンガーのセット、フライドチキンセットなど、いずれもガッツリメニューが入りました。そして2位は、カフェラテやアメリカンなどのコーヒー、1位は様々な味、フレーバーが楽しめるドリンクスタンドのお茶となりました。お茶やコーヒーがトップ2というのは少し意外ですよね。それだけ多くの人々が、巣篭もり生活をしているという証明なのかもしれませんね。
フードデリバリーサービスを利用する人が増えているということは、配送する人たちも大忙しといえます。台北市政府警察局交通警察大隊の統計によりますと、北部の台北市と新北市の警戒レベルが3級に引き上げられた5月15日を基準日とし、それよりも前の3週間と、5月15日以降の3週間を比較した場合、事故数自体はマイナス52.2%と大きく減っているものの、フードデリバリーに限ると、事故数32件、けが人23人から事故数37件、けが人29人と増加しているそうです。事故処理の担当者は、配送回数が増えていることは確かであるとして、改めて安全を呼びかけ、救護の負担増を避けたいとしています。
配達員の人たちのリスクは配送中ばかりではありません。お店や消費者との接触も多い仕事です。中華民国消費者文教基金会は、台湾全域の8万8000名の配達員は、毎日のべ700万人の消費者と接する機会があると指摘、新型コロナウイルスの感染が広がる中、配達員をワクチン優先接種の対象とするよう呼びかけています。
私も、最近は自炊の機会を増やしていますが、主に野菜、冷凍食品などを購入する際、フードデリバリーサービスを利用しています。巣篭もり生活を支えてくれているこうした配達員の人たちには、頭が下がる思いです。