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台湾ソフトパワー - 2021-05-25_“孫のために”金門にマスク工場を作った陳澤林さん

  • 25 May, 2021
台湾ソフトパワー
金門でリタイア生活を送っていた陳澤林さんが「孫のために」と金門にマスク工場を建設、5月18日から正式に生産ラインを稼働させた。(写真:CNA)

先日から、台湾の西の離島、金門に住むある男性が様々なメディアで紹介されています。

その男性は、かつて中国でビジネスを行っていたという陳澤林さん。

この陳澤林さんが住む金門は、台湾本島からは210キロほど離れた場所にあるのですが、金門から西を見ると一番近い所で中国と僅か1.8キロほどしか離れておらず、肉眼で見えるほど中国大陸に近い場所に位置しています。

その地理的特徴から、かつては軍事拠点となっていましたが、現在では中国大陸との局地的な三通、 “小三通”によって中国との交流が行われ、中国本土と台湾を結び付ける存在となっています。

この“小三通”とは、かつては中国大陸と台湾間の往来は長年制限されていましたが、2001年より離島の金門、媽祖と中国・福建省との間の“三通”、「通信、通航、通商」を限定的に開放したことから、小規模な、3つの、“通る”で“小三通”と言われています。

中国でビジネスをしていた陳澤林さんは、その“小三通”で行き来しているうちに金門が好きになり、7年前に金門に移り住み、野菜を育てたりしながら悠々自適なリタイア生活を送っていました。

ところが、昨年(2020年)、新型コロナウイルスの感染が拡大。陳さんも、金門の小学校に通う当時9歳だった孫のためにマスクを探し回りました。ところがどこに行ってもマスクがなかなか手に入りませんでした。

その時、孫が一言、「おじいちゃん、僕たち自分で作ろうよ」といったそうです。

そこで行動派の陳さん、本当にマスク工場を作ることにしました。

陳さん自身、かつて機械を学び、中国では機械工場を営んでいたこともあり、設計図を書き始めました。多くの工場の機器を参考にし、1千万台湾元(日本円およそ3,900万円)前後をかけ、生産ラインを立ち上げました。そして去年8月に政府にマスク工場開設の申請を提出。

先日、5月17日に衛生福利部から「第一級医療器材許可証(第一等級醫器材許可證)」を取得し、翌18日から正式に生産ラインを稼働させました。

お孫さんの一言から本当に実現させてしまうってすごいですよね!

現在、工場では2本の生産ラインが同時稼働していて、1日10万枚のマスクの生産が可能。金門の常住人口はおよそ6万人とのことですので、金門の住民が1日に必要なマスクを全てカバーすることが可能です。

さらには、将来的には成人用の平面マスク生産ラインを2本、子供用の立体マスク生産ラインを2本にして、全稼働させた場合1日およそ20万枚のマスクを生産可能にする予定です。

ただ、今のところ子供用マスクの機器はまだふ頭にとどまっていて、予定では5月下旬に生産に入ることができる見込みだとしています。

お孫さんの一言がきっかけとなって、悠々自適なリタイア生活から一転、金門にマスク工場を作った陳澤林さん。

ご本人は、「もとは孫がマスクを買えるようにとマスク工場を作ったが、まさか金門の人々のためにもなるとは」と嬉しそうに語っています。

陳さんによると、現在はこの工場で作られたマスクは“友情価格”として1箱50枚入りを180台湾元(日本円およそ700円)で販売。

なお、既に5万枚の注文が入っているそうで、その中には公的機関や議員の購入も少なくなく、また注文の電話は既に応えられないほどの数になっているんだそうです。

工場のスタッフたちは、生産ラインがスムーズになって金門の人たちの需要に応えられるようにしていきたいと、しばらくは毎日残業になる覚悟をして頑張っているそうです。

陳さんによると、まずは金門の人たちの需要に応え、台湾本土への供給は6月上旬に開始する予定だそうです。

そしてその後は、海外、また今は新型コロナの影響で運航が止まっている“小三通”の通航が復活したら中国にも進出が可能だとしています。

ちなみに、最初は無地のマスクのみ生産していますが、次のロットではカスタムメイドのマスクや、金門の独特のマスクを製造する予定で、金門にある県指定古跡の「莒光樓」や、金門の守り神「風獅爺」、伝統的な閩南建築の住居「閩南古厝」、戦地の軍民を励ますために書かれたという「毋忘在莒(過去を忘れるな、国土を回復せよという意味)」の4文字が書かれた石など、マスクのデザインに人文や古跡を盛り込んで、金門のマスクを見てみんなの目が輝くようなマスクになるよう現在、すでにデザイナーに依頼をしているそうです。

今後、もしかしたら日本でも金門のマスクが登場するかもしれませんね。

もし見かけたら、「あ、金門の陳さんの工場のマスクだ!」と思い出してくださいね。

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