これまで新型コロナの抑え込みに成功していると言われていた台湾ですが、今、市中感染が広がっていて、緊張が高まっています。
台湾は水際対策を徹底していて、早い段階で外国人渡航者の入国をストップしたことと、台湾に戻って来る人全員を対象に厳しい隔離措置を実施したことが感染対策の成功につながったとされてきました。
ところが、航空関係者の感染が水際対策から漏れ、それをきっかけとみられる市中感染が広がっています。
先週火曜日(5/11)に航空関係者の周辺ではない人々の感染が7人確認され、翌12日には16人、13日は13人、14日に29人、15日には180人、16日には206人、そして昨日17日は333人と、急激に増えています。
昨日、5月17日時点でこれまでの累計感染確認数が2,017例で、そのうち784人がこの1週間に台湾内で確認された人数だと考えると、その急増具合がわかるかと思います。
それを受けて台湾の新型コロナウイルス感染症対策本部「中央感染状況指揮センター」は5月15日から、台北市と、台北市をドーナツのように取り囲む新北市の防疫警戒レベルを上から2番目の「3級」に引き上げ、今日(5/18)から28日までこの2つの市では、学童保育、学習塾も含め、高校以下の学校は全て休校となっています。
また、明日(19日)からは、台湾全土の学校へと範囲を広げ、28日までオンライン授業に切り替える方針です。
この市中感染の急増に、台湾の人たちの危機意識が以前にも増して高まっています。
そんな中、衛生福利部が「台灣社交距離APP(台湾ソーシャルディスタンス)」アプリをダウンロードするよう呼びかけていて、今、台湾の多くの人がダウンロードしています。
どのようなアプリかというと、使用者は特に個人情報をアップロードすることなく、ブルートゥースの電波を利用して、使用者の距離や時間を計算し、もし感染者と近い距離にいて、一定の時間接触があった場合は通知が来るというものです。
実はこのアプリ、衛生福利部と、台灣人工智慧實驗室(台湾人工知能ラボ/Taiwan AI Labs)が共同で研究開発したもので、昨年(2020年)の4月には既に開発されていました。
このアプリの使用者で感染が確認された場合、本人の同意の上、行動範囲の資料をアップロードします。するとアプリが自動的に過去14日間に接触のあったアプリ使用者、例えば感染が確認された人と2メートル以内で2分以上接触した人にアラート画面を表示し、体調に注意をするようお知らせします。
使用者はお知らせを受け取った後、自主的に防疫関係スタッフと連絡を取ることで、ウイルスを拡散する機会を減らすのが目的です。
そこで、なるべく多くの人にインストールしてもらい、連絡を受けた感染者の行動データを利用してもらうために、中央感染状況指揮センターは、インストールした人の中から抽選で500台湾元(日本円およそ1,900円)のギフト券をプレゼント。また、もし感染が確認された場合、防疫に役立つデータをアップロードすることに同意すれば抽選に参加せずとも5,000元(およそ19,000円)分のギフト券をプレゼント!というイベントも行い、使用者を積極的に増やしています。
その甲斐もあってか、既にのべ80万人がインストールしていて、ここ数日のアプリダウンロードランキング第1位となっています。
なお、プライバシーについて気になるところですが、中央感染状況指揮センターの医療応変チームの羅一鈞・副部長は、この「台灣社交距離APP」はプライバシーを保護し、使用者の意思を尊重するという最高の原則に基づいていて、個人のプライバシー保護は『EU一般データ保護規則(GDPR)』よりも優れている。このアプリは登録や個人情報のアップロードを必要とせず、ブルートゥース技術を使って、接触した対象を識別化資料として記録する。位置情報は含まれず、関連する接触データは個人の携帯端末に14日間のみ保存され、いかなるクラウドサービスにもアップロードはされない」と説明しています。
台湾では先週、わずか1週間で爆発的に新型コロナウイルスの市中感染者が増えていることから、皆、警戒を高めていて、今は、街中のほとんどの場所で手の消毒と検温に加え、名前や電話番号などを残して実際に連絡が取れるようにする「実聯制対策」が取られています。
水1本買いにコンビニに行くだけでも名前と電話番号を残すようリストが準備してあります。
ただ、リストに記入するというのは個人情報が丸見えであるということと、記入するために不特定多数の人がペンを触るというリスクがあることから、多くの店舗で「QRcord」を掲示し、それを読み取って情報を入力するという対策を取っています。
新型コロナ関連の対策で、台湾が世界から注目を集めたものの一つに「マスクマップ」というのがありました。マスクの在庫がどこにあるのかを一目で確認できるこの「マスクマップ」によって、マスク不足に対する不安を軽減しました。
これによって、オードリー・タンIT担当大臣、そして台湾のデジタル化の進化にも注目が集まったのは記憶に新しいと思います。
そして今回は、ウイルスの拡大を防ぐため、個人情報は保護しつつも感染者との接触があったかどうかを測り、お知らせするアプリ「台灣社交距離APP」が登場。
更には実聯制では「QRcord」の活用…と、台湾では新型コロナ対策にスマートフォンを活用した様々なデジタル化対策が取られています。
そして、その対策のスピード感にも驚かされますが、これらのデジタル化に、高齢の方もどんどんと対応していくその柔軟さにも驚かされます。
台湾では新型コロナの対策に、デジタル分野が大活躍です。
なお、アプリの使い方がわからない、使えない、またはスマートフォンを忘れたときなどのために、どこの店舗も来店者リストも別で準備されています。