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ようこそT-roomへ - 2021-03-17_台湾の競泳界に現れた期待の新星-王冠閎

  • 17 March, 2021

 リスナーの皆様は、台湾のアスリートというと何の競技の選手をイメージされますか。日本で活躍する選手が多い野球やゴルフの選手でしょうか、もしくは、世界の舞台で活躍する選手をたくさん生んでいるテニス、バドミントン、卓球といったラケットスポーツの選手でしょうか。

 本日このコーナーでご紹介するのは、台湾の競泳界に現れた期待の新星、この1月に19歳になったばかり、男子バタフライのワン・クアンホン選手です。ワン・クアンホン選手は王様の王、冠、そして関口宏さんの宏という字のうかんむりを門構えに変えた字を書きます。英語圏ではエディー・ワンと呼ばれています。本日はワン選手とご紹介しますね。

 中華民国台湾のバタフライ100メートル、200メートルの国内記録をもつワン選手は昨年10月から競泳の国際プロリーグ「インターナショナル・スイミングリーグ」にCali Condors(カリ・コンドルズ)の一員として出場しました。台湾選手として初めて出場したワン選手は10月17日に行われた第1戦、いきなり得意種目の200メートルバタフライで、自身の短水路記録を更新する1分50秒79のタイムをマークし3位に入りました。この1分50秒79のタイムは、自身がもつ台湾記録1分52秒38を1秒6近く上回ると共に、2012年に日本の瀬戸大也(だいや)選手が樹立した従来のジュニア短水路記録、1分51分30も上回りました。

 その後も好調さを維持したワン選手は、タイム更新こそならなかったものの、出場した第4戦と第8戦、いずれも200メートルバタフライで1位に輝くと、11月10日に行われた第10戦で1分50秒14と自己ベストを更新し、2位に入りました。

 ワン選手はさらに11月16日に行われた準決勝で、1分50秒を切る1分49秒89の自己新記録をマーク、優勝したアメリカの短水路記録保持者、トム・シールズ選手と0.87秒差の2位に入りました。

 200メートルバタフライで1分50秒を切ったのは世界で9人目、アジアでは日本の松田丈志(たけし)・選手、瀬戸大也選手の次いで3人目という快挙、1分49秒89というタイムは、世界歴代8位のタイムなんです。

 そして、レースから3ヶ月あまり、この2月の末、中華民国水泳協会は、2月25日に国際水泳連盟から、正式書面による連絡を受け、ワン選手が11月16日にマークした200メートルバタフライの1分49秒89というタイムを、ジュニアの短水路世界記録として正式に認めたことを明らかにしました。ワン選手は台湾で初めて、ジュニアの世界記録保持者となりました。

 ワン選手本人は、国際水泳連盟が正式に記録を認定したことについて「特にびっくりしたという事はなかった」と話し、平常心を強調しましたが、黄智勇・コーチは「クアンホンのこれまでの努力の結晶だ。台湾初のジュニア世界記録保持者となったことを我々は誇りに思う」と喜びました。

 それでは、ワン選手のここまでの歩みをご紹介しましょう。ワン選手は小学校に入学すると水泳を始め、三年生の時に正式に小学校の水泳部に入部しました。そのきっかけはお母さんでした。水泳チームのコーチがお母さんに、ワン選手は筋があるといって、水泳部入部を勧めたことから、お母さんがワン選手に内緒で入部テストを申し込んだんです。ワン選手は当時、それほど水泳は好きではなく、ただ遊びたいと思っていたことから、本意ではなかったそうです。

 しかし、いざ水泳部の一員になると、コーチの見立て通り、天性のセンスが開花、ワン選手自身もどんどん水泳の魅力にはまっていき、水泳はワン選手の生活の一部分になりました。

 とはいえ、その日々は決して楽ではありませんでした。中学時代にはあまりのプレッシャーの大きさに耐えきれず逃げ出したいと強く感じ、練習を一回サボってしまったこともありました。しかし、自宅で気持ちを入れ替え、翌日から再び練習に復帰したそうです。

 ワン選手、実は中学1年の時に自分の目標を定めていました。日本遠征に行った際、神社に立ち寄ったワン選手は、絵馬に「市の大会で金メダル、インターハイでメダル獲得、東京オリンピック出場」という3つの目標を記しました。

 普通、絵馬は神社に奉納しますが、ワン選手は、目標を書き込んだ絵馬を台湾に持ち帰ってきたといいます。そして、その後、ワン選手は最初の目標を実現しただけでなく、高校3年間、インターハイで実に18個の金メダルを獲得、さらに2019年にはハンガリーで行われた「FINA世界ジュニア選手権」の200メートル男子バタフライで1分56秒48をマークし、東京オリンピックの出場資格も獲得したんです。

 ワン選手は高校入学後、黄智勇コーチの指導を受け始めました。ワン選手は、このハンガリーでのジュニア選手権について、知らない土地で、トレーナーもいない中、黄コーチがレース前にマッサージをしてくれたと振り返り、二人三脚で目標だったオリンピック出場権獲得という目標を達成したことについて、感動した、得難い経験となったと述べています。

 ワン選手のこれまでの成長を見てきた黄コーチも、トレーニングメニューをしっかりとこなし、後輩たちのお手本となっているワン選手について「クアンホンの年齢、そして実績を考えれば、機嫌を損ねたり、反抗したりしても不思議ではないが、彼にはこうした点が一切ない。これはなかなか珍しいことだ」と人間性についても評価しています。

 そして、ワン選手は昨年、オリンピックの延期決定後、競泳の国際プロリーグ「インターナショナル・スイミングリーグ」に招かれ、台湾選手として初めて出場を果たしました。

 ワン選手は、この「インターナショナル・スイミングリーグ」で、アメリカの短水路記録保持者、トム・シールズ選手や世界選手権王者の南アフリカ、チャド・ルクロス選手ら世界のトップ選手と同じレースに出場することになった際、おじけるどころか逆に興奮、自分のパフォーマンスを十二分に発揮したい、と強く思ったそうです。大舞台であればあるほど燃えるタイプなんですね。そして、前半でもご紹介した通り、1分50分以内、世界ジュニア新記録をマークし、世界に大きくアピールしたんです。

 そして、ワン選手は昨年12月、中華民国教育部の「2020スポーツエリートアワード」において、史上最年少で最優秀男性アスリート賞を受賞しました。

 涼し気な目元は韓国のアイドル風、そして水泳選手ならではの引き締まったボディの持ち主という事もあり、最近はスポーツ面だけでなく、女性誌などで特集される機会も増え、注目度がアップしています。リスナーの皆様も、台湾競泳界の新星、ワン・クアンホン選手に是非ご注目ください。

 

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