皆さんは、台湾の人気女性シンガーと言えば誰を思い浮かべますか?数々の人気シンガーがいますが、中でも抜きんでて実力も人気も高いのが張惠妹(阿妹/アーメイ)─。
阿妹(アーメイ)は、台湾東部、台東の台湾原住民族・プユマ族出身の歌手。台湾の勝ち抜き歌番組で25人勝ち抜きを果たし優勝。その後、台北のライブハウスで歌っていたところ、スカウトされ1996年にデビューしました。
“プユマ族は、そもそも生活の中に歌があふれていた”─。
そんな環境で生まれ育った彼女は、その生まれもった歌唱力とリズム感、そして曲の中に原住民族の音楽を取り入れるなどした豊かな楽曲で、これまでのC-POPと呼ばれる曲とは一線を画し、瞬く間に注目を集め、台湾のみならず、アジア、そして世界へと名が知られていきました。
日本でもライブを行ったり、舞台に出演したりしているので、ご存じの方も少なくないと思います。
そして、デビューから今に至るまで、その人気は衰えることなく、「アジアの歌姫」「台湾ミュージック界の女王」などと呼ばれ、台湾版グラミー賞と呼ばれる「金曲奨(ゴールデンメロディアワード)」の常連アーティストとなっています。
その阿妹(アーメイ)が、この年末年始、長年の夢であった故郷・台東での年越しコンサートを行ったのですが、それがすごいことになりました!
この年末年始、イベントの開催は新型コロナの影響が心配されていましたが、台湾では一部のイベントで中止や延期があったものの、大部分で、規制はありましたが例年とほぼ変わらず開催されました。
そんな中、今回、この阿妹(アーメイ)の年越しコンサートは、もしかしたら台北101の花火よりも注目されたのではないかという盛り上がりでした。
というのも、阿妹(アーメイ)が大型コンサートを行うのは3年ぶりで、さらには故郷・台東でコンサートを行うのは実に21年ぶりだったからです。しかも入場は無料!
この特別なコンサートに、台湾元でおよそ3,800万元(日本円およそ1億4,000万円)をかけ、台東海浜公園に巨大なステージを設置。すべての観客に楽しんでもらいたいと、大型モニター9台を弧を描くように設置し300~400メートル離れた場所からでもはっきりと見えるように設計。他にも会場内に小さなスクリーンも設けました。
これまでにない規模のコンサートに、トイレの設置問題や、防疫対策など様々な問題を一つ一つ解決し、準備を進めていた最中、12月22日におよそ8か月ぶりに新型コロナウイルスの国内感染を確認。これを受け、開催がどうなるのか多くの人が心配しました。
しかし、台湾のコロナウイルス感染症対策本部「中央感染状況指揮センター」は、参加者や主催機関は、「全行程でマスク着用」「入り口で検温と手の消毒を行う」「公共トイレの消毒の頻度を増やし、会場で消毒用品を提供する」など防疫の5つのルールを守って欲しいという要請ををしたうえで、不特定多数の人が集まり、近距離で長時間接触する年越しイベントの開催を禁止はしないとし、無事に開催へとこぎつけました。
「アジアの歌姫」が地元で21年ぶりに行う無料の年越しコンサートとあって、当日、訪れた観客は台東県によると、大まかに見積もってもなんと7万人も集まっていたそうです!
当日は、夜9時半に阿妹(アーメイ)がステージに上がると、この日は一気に盛り上がってそのまま駆け抜けたいと衣装チェンジは一切なし。そこから3時間にわたって48曲を披露しました。
途中、イヤモニの音が途切れてしまうというトラブルで歌い直すことがあったものの、会場はずっとハイテンション。でも防疫対策も忘れることなく、曲の途中のMCでは「ハイになっても、マスクの内側が濡れるまで叫んでもマスクを外したらダメだからね!」と呼びかけていました。
本人も「久しぶりの大型コンサートに緊張している」と語っていましたが、コンサートのタイトル通り、年末の台東に「ユートピア」を作り出しました。
このコンサートによって、阿妹(アーメイ)が台東にもたらした経済効果は5億台湾元(日本円でおよそ18億円)!
台東の宿はもちろん、会場周辺の屋台業者や、タクシー運転手までもがこのコンサートによって大盛況。2020年の新型コロナによる憂さを一気に晴らしてくれた、「アジアの歌姫」の魅力に圧倒されていました。
これだけの大規模なコンサートは阿妹(アーメイ)自身にとってもとても大きな出来事で、本人も興奮冷めやらぬ様子で、コンサートが終わった後、「我最親愛的(My Dearest)」を歌った際に会場の7万人ものファンたちがスマホのライトで会場を照らした様子の空からの写真を見て、阿妹(アーメイ)は我慢できずに自身のインスタグラムに、「みんなすごい、感動!台東の光」とハッシュタグをつけてその写真をシェアしていました。
台東では、女神と言えば航海の安全を守る「媽祖様」か、この「阿妹(アーメイ)」か…というくらいに特別な存在感を放っている「阿妹(アーメイ)」─。
2021年の幕開けに台東にひいては台湾に大きなエネルギーをもたらしました。