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台湾ソフトパワー - 2020-12-29_2020年のヒーロー「中央感染状況指揮センター」

  • 29 December, 2020
台湾ソフトパワー
ピンクのマスクをして登場した中央感染状況指揮センターの主要メンバーたち(写真:CNA)

今年(2020年)は、新型コロナウイルス対策で始まり、新型コロナウイルスに振り回されたまま幕を閉じようとしています。幸いにも台湾は他の国々と比べるとかなり落ち着いていて、比較的これまでと変わらない生活を送ることができています。

その背景には、台湾で広めないためにはどのようにしたらいいか、様々な対策を考え、調整し、指揮を執ってくれている「中央流行疫情指揮中心(中央感染状況指揮センター)」があるからです。そこで、2020年、最後の「台湾ソフトパワー」では、そんな新型コロナウイルス感染症対策本部「中央感染状況指揮センター」についてご紹介しましょう。

世界的にいまだ収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症─。最近ではイギリスなどで変異種のウイルスの感染が拡大しているとニュースになっています。

それを受け台湾では、12月23日の午前0時から、イギリスより入国した人、および14日以内にイギリスに渡航歴のある人全員を対象に集中検疫所に入居させて検体検査を行っています。また、隔離終了前に全員検体検査を実施するほか、ロンドン-台北便を半減するなど対策を強化しました。その水際対策が強化されて以来、初めてとなるイギリスからの旅客機が一昨日(12/27)に台湾北部・桃園国際空港に到着しました。空港では、2時間前から防護服姿の検疫官らが待機し、乗客114名、乗組員13名の合計127名を乗せた便が到着すると、発熱が認められた乗客1名を医療機関に搬送、過去14日間に呼吸器系の異常が見られた乗客4人について、その場で検体検査を行い、そのほかの乗客は3か所の集中隔離施設へ移動させた後に検体検査を行いました。これは、先に移動をすることで、他の人との接触時間をなるべく減らすなどの工夫だそうです。また移動の際は6台のバスに分かれ、前後左右が空席になるように座る「梅花座」の方式がとられました。そして、搭乗客が空港を離れた後にはすぐに待合室から移動のバスに乗り込むまでの空港内の導線すべての消毒作業をするなど、最高基準の防疫対策をもって臨みました。

これらの対策や指示などを行っているのが、「中央感染状況指揮センター」です。日本でも台湾のコロナ対策について紹介される際に、この名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。

この「中央感染状況指揮センター」とは、2003年のSARSの教訓をきっかけに2005年に「行政院衛生署」として開設され、2013年から衛生福利部に改名した、「衛生福利部 國家衛生指揮中心(国家衛生指揮センター)」の下に“非常時に”設置される中央レベルの公衆衛生の主務官庁で、伝染病(感染症)の監視、防疫対策の策定、および促進、感染症の予防と管理に必要な政策を担当しています。2005年の開設からこれまでに、デング熱や、狂犬病、ジカウイルスなどの対策本部として9回設置されています。

今回の新型コロナウイルス感染症対策本部「中央感染状況指揮センター」は、2019年末に中国の武漢で原因不明の肺炎が広がっているという情報をキャッチすると、それを軽んじることなく、2020年1月20日に「厳重特殊伝染性肺炎 中央感染状況指揮センター」を開設。感染情報の収集と対応策の決定を担当すると同時に、定期的に記者会見を行い、正確な防疫情報や政策の説明、広報を行っています。

当初は、毎日午後2時から時間制限を取らず、記者からの質問がなくなるまで会見を行ってきました。時には2時間以上におよぶ質疑応答にも真摯に答え続けてきました。そして、台湾における新型コロナウイルスの封じ込めが一定の成果を上げたとして、国内感染が8週間連続でゼロとなった6月7日をもって、毎日の記者会見開催にピリオドを打ちました。その間、定例・臨時を含めて、累計164回の記者会見が行われました。

6月7日以降も毎週水曜日に、現在の状況を報告するための定例会見を開いてきたほか、新たな動きや情報がある場合にはすぐさま会見を行っています。また、秋口から、海外から台湾へやってきた、もしくは戻ってきた人たちによる輸入感染例が増えたことから、ここ最近はまたほぼ毎日のように会見を行っています。

このように、情報がダイレクトに市民に伝わってくる透明性によって、台湾にいる人たちは状況に変化があったとしても、冷静に、そして安心して日々を過ごせています。

中でも、「中央感染状況指揮センター」を率いている陳時中・部長は、日本の厚労大臣のような立ち位置にあたりますが、100日以上、土日も旧正月も休みなく会見を続け、不眠不休で働くタフさから「鉄人大臣」と呼ばれています。また、タフさだけでなく、その人柄にも注目が集まっています。

台湾でも感染が広がり始めていたころ、中国の武漢からチャーター機で帰国した台湾企業関係者のうち1人に感染が確認された際に、第一線でウイルスと闘っている検疫官や医療従事者らの姿を思い浮かべ、「第一線の人たちがこんなに努力しているのに」と、こらえきれず涙を流してしまったり、男の子がピンクのマスクをしていたらいじめられてしまうのではないかという市民からの声が上がれば、自らもピンクのマスクを着けて登場し「ピンクも悪くないよ」と語ったり、あまりにタフに働く姿にネット上で「実は双子で交代で出ているから疲れないんだよ」という冗談でもりあがっていることを知ると、「会見でちょっと機嫌の悪いときは、私じゃなくて双子の弟だよ」と冗談で返してみたりと、型にはまった会見ではなく、時に人情がにじみ出る発言があったりして、「疑問に答えてくれる」という信頼感だけでなく、このキャラクターも会見に多くの人が注目を集めるきっかけにもなっています。

先日、およそ8か月ぶりに国内で新型コロナウイス感染確認者が出たことで、台湾の多くの人が不安に駆られましたが、その後の追跡検査や検体検査の結果、市中感染は広がっていないことが確認され、市民もほっとするのと同時に、またあらためて気を引き締めていかなくてはと思っているところです。

「中央感染状況指揮センター」は再び、マスク着用や、体温測定、消毒、大型イベントの開催の是非など、様々な面で防疫対策の強化を呼びかけていて、年末年始のイベントは一部、延期や中止になったりもしていますが、それらに対して大きな反発が出ないのも、これまでの「中央感染状況指揮センター」への信頼感から来ているのかもしれません。

新型コロナの収束はいつになるのか、その兆しはまだ見えてきませんが、この新型コロナウイルス感染症対策本部「中央感染状況指揮センター」が早く任務終了できる日が来ることを願いつつ、その日が来るまで引き続き“世界の防疫のリーダーたち”の活躍を期待していきたいと思います。

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