最近、日本のアニメ映画、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、台湾でも話題となっています。鬼滅の刃が台湾で大ブームを巻き起こしている中、台湾のあるフェイスブックコミュニティ「台湾迷因taiwan meme」がこの程、フェイスブックに投稿された写真が話題となっています。それは、「鬼滅の刃」に登場する鬼退治集団、鬼殺隊は、台湾の宗教の団体、「八家将」にとても似ていると言われているからです。
話題となったフェイスブックの投稿では、鬼殺隊と八家将の共通点を9つもリストアップしました。
1、鬼を退治し、人類を守るという職務。
2、主に青少年によって結成されたグループ。未成年者が多い。
3、呼吸するときに煙を吐く。
4、背後にはあまり顔を出さないボスがいる。
5、周りにはかわいい女の子ばかりいる。
6、若くて死亡したメンバーがいる。
7、呼ばれたらすぐにやって来る。
8、長い刃物を武器として扱っている。
9、政府に承認されていない組織。
ところで、この投稿に対して、台湾では「八家将の名誉を毀損しているのでは」と指摘する声も上がっています。なぜなら、実はこの投稿で挙げられている共通点のほとんどは、八家将に対する偏見だからですよ。
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八家将は、神様専属の部下の一種です。主神を守り、人間界の悪霊の駆除と逮捕という役目を担っています。いわゆる「神様の護衛集団」のことです。人間界の役職に例えるなら、警察官と同じような存在なのでしょう。
八家将の由来は諸説ありますが、これまで300年以上の歴史もあると言われ、台湾で最も歴史の長い八家将、台湾南部、台南市白竜庵の伝承によりますと、八家将は、古代中国の明朝末期から清朝初期にかけて、中国大陸から台湾に渡ってきた人たちが、福建省福州市にあるお寺、白竜庵の壁画に習い、神様の巡礼のときに護衛役に扮したのが始まりだそうです。
八家将の「八」は、人数を示しています。春夏秋冬の4柱の神様と、四人の将軍:甘氏、柳氏、范氏、謝氏です。この八人は、元々は神様によって降伏された地方の強盗だったり、天界から人間界へ転生した人だったり、古代中国に実在した、有名な官僚や豪族の使用人の神格化など、それにまつわる伝説はいろいろあります。
なお、具体的な人数は、地域によって10人や11人、13人に増えた場合がよくあります。お祭りでは、八人に、先導役と判官などを加えた13人体制が多いです。8人ではありませんが、マスコミの報道により、台湾では「八家将」という呼び方で親しまれているため、「八家将」は、神様の部下の総称となりました。
八家将は、2人を一組、または4人を一組で行動します。八人の顔には、歌舞伎のような隈取りをしますが、色使いや紋様は、一人ひとり一定的なルールがあり、八人それぞれの特性、役割、出身などを表しています。
例えば、四人の将軍の1人、范氏は「猿の妖精の生まれ変わり」と言われ、溺水で亡くなったと信じられています。その隈取は「猿」をイメージし、黒をベースに、白いラインで、頬のところに金銭や円などの模様が描かれています。
范氏のパートナーと言われる、謝氏の隈取は、「コウモリ」をイメージしています。白をベースとし、黒いラインで、両目の上のおでこから顎の両側まで、向かい合わせのように横になった二匹のコウモリの紋様が描かれています。
四人の将軍の残り2人、甘氏は、陰陽を象徴した「赤と黒半分ずつの顔」。柳氏の隈取は、タコをイメージしています。春夏秋冬の4柱の神様の隈取は、それぞれ蓮の花、ひょうたん、おおとり、虎をイメージしていますよ。
八家将の八人が手に持っている道具も、役割によって違っています。常に行列の一番先頭に立つ、甘氏と柳氏は、羽根の扇子と犯人を折檻する棍棒を持ち、犯人に刑罰を下します。彼らの一歩後にいる范氏と謝氏は、それぞれ羽根の扇子と神様の命令を示す令牌、羽根の扇子と犯人を拘束する枷鎖を持っています。この2人は、犯人を取り押さえる役割を担っています。四人の神様、春夏秋冬の道具はさらにバラバラです。春はバケツかフラワーバスケット、夏は火桶、秋は銅の金槌、冬は毒蛇です。四人とも犯人の拷問を担当します。八人とも、個性豊かですね。
近年、少子化と、娯楽の多様化により、規律を重んじて、訓練も兵隊ほど厳しいと言われる八家将に入りたいという若者が激減しています。さらに、科学的、理性的な教育をモットーにしているため、こういった宗教活動は「時代遅れ」と見られがちです。このような背景から、台湾には八家将に対して、「教養のない問題児ばかり」という間違ったイメージを抱く人が結構多いです。
日本のアニメ映画「鬼滅の刃無限列車編」の人気に乗って、台湾のフェイスブックファンページが鬼殺隊と八家将との共通点を挙げた投稿を通して、台湾の八家将は、日本の鬼滅ファンの間でも知られるようになったようです。ところで、その投稿に書かれた共通点の多くは、八家将に対する偏見ですから、行政院文化部はそのイメージに引っ張られ、伝統文化を見失わないよう呼びかけています。
(編集:曽輿婷/王淑卿)