2008年台湾で大ブレークし、2009年12月に日本でも公開された台湾映画「海角七号 君想う、国境の南」ご覧になったことありますか?1940年代と現代の台湾を舞台に、およそ60年間届かなかった日本人男性が台湾人女性に綴ったラブレターが2つの時代の恋物語をつなぐ切ないラブストーリー。時代を経ても変わることのない、人間の愛するものへの思いをノスタルジックに書き出した映画です。
先日、その映画を彷彿とさせるような出来事が起こりました。
映画では日本から届けられたのはラブレターでしたが、現実の世界ではラブレターではなく、自分の遺産を寄付したいと言う一通の書簡。しかもその額1,790万円!!
何でも日本在住で日本国籍を持つ林芳英さんが、自分の遺産の3分の2にあたる1,790万円を台湾最南の町、恆春の赤牛嶺にある鎮南宮に寄付するという遺言を残して亡くなったそうです。日本からの突然の寄付に鎮南宮の人たちもびっくり!しかも鎮南宮の歴史の中で最も大きな額の寄付だったんです。
鎮南宮の黃青田・主任委員はこの書簡を受け取った後、すぐに恆春鎮の李建華・代表と、張齊嘉・代表にどうしたら言いかと相談に行きました。この書簡を見た2人は7月6日に、国会議員の莊瑞雄・立法委員を通じて現在の台北駐日経済文化代表処の謝長廷・代表に連絡し、寄付の真偽について調べてもらおうと協力を求めました。
翌7日に代表処の職員がすぐに弁護士事務所に向かい確認したところ、書簡の内容が事実であることが判明。7月31日に日本からの入金が行われました。
なんでも、亡くなった林芳英さんは、日本国籍を保有していますが、父親の林火星さんは台湾人で、日本統治時代、恆春の山林管理所(現在の林務局)に勤務し、恆春の病院で看護師として働く日本人の妻と1987年まで恆春で生活をしていました。当時、一家は鎮南宮の近くに住んでいましたが、その後、日本の京都へ引っ越したそうです。ですが、林芳英さんの兄弟も小さいときに鎮南宮で遊んだことは今でもよく覚えているそうです。
亡くなった林芳英さんは、“父の遺志でもある”として、自分の遺産のうち3分の2を鎮南宮へ。そして残りの3分の1を母親に分与するよう言い残していたそうです。
この出来事に、日本との連絡の橋渡しをした莊瑞雄・立法委員は、最初はまるで映画の筋書きのような出来事に半信半疑だったそうですが、真相を知った後、とても感動したとし、謝長廷・駐日代表も、時間があれば寄付を下さった遺族の方を訪問したい。日本への移民二世の魂の中にある記憶に、きっと素晴らしい思い出があったのだろうと語りました。
なお、鎮南宮の黃青田・主任委員によると、受け取った寄付は全額、自然災害などで被災した人々や、低所得の住民などの救済に当て、鎮南宮で祀られている主神、関聖帝君(関羽)の「忠義の精神」を発揮したいとしているほか、新型コロナが収束に向かったら、日本を訪れて林芳英さんの遺族に感謝の言葉を伝えたいと話しています。
世代を渡って受け継がれた台湾への想い、そして今も忘れることのない人情あふれる恆春の人たちへの気持ちとして届けられた今回の寄付。まさに映画のような、素敵な贈り物になったのではないでしょうか。