文化の台湾 - 2020-07-22_夏に行う東洋医学の治療「三伏貼」

  • 22 July, 2020
  • 林 蕙如

台湾は最近、38℃前後の日が続いていて、もうすでに夏バテ警戒状態になっていますが、台湾では夏がやってくると「中醫」と呼ばれる東洋医学の病院に通いだす人が増えます。と言うのも、「冬の病は夏のうちに治す(冬病夏治)」という言葉があり、そのため「三伏貼」と呼ばれる治療を受けるために通うのです。この「三伏貼」とは一体、どのようなものなのでしょうか。

 

東洋医学と聞くと、漢方薬や針、お灸をイメージする人が多いかと思います。この「三伏貼」とは、“三伏の日”に“貼る治療”のことです。ヨモギのお灸の一種ともいえ、東洋医学特有の治療方法のひとつなんです。

この“三伏の日”の“三伏”とは、季節の挨拶などで見かけたことがあるかもしれませんが、夏の暑さが厳しい時期を表す言葉です。陰陽五行説に基づく選日のひとつで、“三”とあるように、 “初伏”、“中伏”、“末伏”の3つの日があって、それぞれの日に、体の特定のツボに漢方薬を貼り付ける治療です。

なお、“初伏”は夏至以降の3回目の庚の日、“中伏”は夏至以降4回目の庚の日、“末伏”は立秋以降、最初の庚の日とされています。そのため、毎年同じ日というわけではありません。今年(2020年)は、“初伏”が7月16日、“中伏”が7月26日、“末伏”は8月15日です。

なんでも東洋医学の医師によると、夏は“陰陽”の“陽”の気が満ち、体の内外の気血の流れがほかの季節と比べ特に良いため、「三伏貼」をすることで“陽”の気をさらに高め、“冬の病を夏のうちに治す”というのが目的なんだそうです。

 

東洋医学の観点では、多くのアレルギー患者は “虚寒体質”と言って、日ごろから体内の「生気」が不足しており、アレルゲンや温度による刺激からの影響を受けやすいとされています。

東洋医学で言う「生気」とは西洋医学で言う「免疫力」のことで、もし体内で長期にわたって「生気」が不足し、バランスを崩した場合、免疫力が低下した体質に傾いてしまいます。そこで1年で最も暑さが厳しく、“陽”の気が旺盛な「三伏」の期間に「三伏貼」をすることによって、エネルギーを高め、経絡を温め、体の「生気」つまりは「免疫力」を高めて、秋冬にひどいアレルギーが起こるのを防ぐ効果があるそうですよ。

 

では、どのような漢方薬をどこに貼るのかというと、漢方薬は基本的には、麻黃、炮附子、艾草、乾燥しょうが、細辛、延胡索、シロガラシと言ったものに、しょうが汁を加えたもので、病院によってそれぞれ調合は違うそうですよ。私が数年前に「三伏貼」をしてもらった病院では固めの練り物状となっていましたが、かなりやわらかめのペースト状にしているところもあるようです。

その漢方薬を、首の後ろや肩甲骨の内側、腰の後ろ、おへそ周り、ちょうど鎖骨と鎖骨の間辺りの喉の下など、特定のツボに貼っていきます。なお、このツボの位置もその人の体質などによって変わるそうです。

貼る時間は大体3~6時間。治療後数時間は、刺激のある食べ物やお酒、また体を冷やす食べ物や冷たい飲み物も避けるようにとのことでしたが、貼り付けてあるので普通に動き回ったりはできます。ただ、入浴や水泳、激しい運動などは漢方薬が剥がれ落ちてしまうので、しないようにとのことでした。そして、貼ってから30分~1時間ほどすると、漢方薬を貼っている部分が少し熱を持ったり、かゆくなったり、ぴりぴりする感覚があるのですが、それは正常なことだとか。ただ、肌が弱い人や、子供やお年よりは1~2時間で外してもいいそうです。また逆にまったく何も感じないようであれば8~10時間ほど様子を見てもいいそうです。その人の体質にもよりますので、お医者さんの指示に従うのがいいと思います。

 

ちなみに「三伏貼」はどのような人におススメかというと、喘息や、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー体質の人、慢性気管支炎、肺気腫、風邪を良く繰り返したり、咳が長く続く、慢性的な下痢、冷えによる胃の腫れや痛みがあると言った「虚弱体質」の人、免疫力が落ちている人、寒がりの人などだそうです。

なお研究によると、「三伏貼」は喘息患者の肺活量を増加させ、発作の回数が減少するなど、呼吸器系の改善に効果がしっかりと現れたとされています。また、3年連続で「三伏貼」の治療を行うことで、喘息やアレルギー性鼻炎へ80%以上の効果を発揮するとのことです。

 

少し前の資料ですが、2017年の台湾の国民健康保険の資料分析によると、アレルギー性疾患で病院にかかっている人は341万人で、男女では、男性が158万人、女性が185万人。年齢別では、15歳から44歳が最も多くおよそ135万人、次いで45歳~64歳がおよそ85万人、65歳以上が最も少なくおよそ47万人だったそうです。

毎年多くの人がアレルギー性疾患で病院にかかっている台湾では、夏のこの時期の「三伏貼」は欠かせない治療のひとつでもあるのかもしれませんね。

 

なお、「三伏貼」に向かない人もいます。それは、2歳以下の子供、妊娠中の方、当日、熱中症やのどの痛み、発熱、風邪を引いている人、肺の感染症がある人、心肺機能が著しく低下している人、皮膚に傷口がある人、糖尿病の人、そして、重度の皮膚アレルギーのある方は行わない方がいいとしています。

 

ちなみに、夏だけではなく、冬にも同様に、漢方薬を貼り付ける治療「三九貼」があり、“夏の三伏貼と冬の三九貼”と言われ、年に2回、しっかり体を調整するという人も少なくありません。

 

なお、「三伏貼」に興味がわいたという方、治療を受けに行くときには、洋服にちょっと気をつけてくださいね。なぜかというと、襟元の開いた服を着てきてしまうと、のどや背中のツボに貼られた白いガーゼが見える状態になってしまい、パッと見、まるで大怪我をしたかのように見えてしまい、病院から家に帰り着くまでの間、心配そうな視線をかなり浴びて、ちょっと気まずい気分になってしまいます…。

私はそんなことも知らず、暑いからと、キャミソールにシースルーのトップスを着ていったので、かなり目立ってしまいました。皆さんも「三伏貼」にチャレンジするときには何を着ていくかもちょっと考えてみてくださいね。

(編集:中野理絵/王淑卿)

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