皆さん、「TAPIA(タピア)」ってご存知ですか?日本のMJIという企業が生み出した“おしゃべりロボット”で、卵のような丸いフォルムに、ドラえもんなどのアニメに出てきそうなつぶらな瞳。時々瞬きもし、しゃべる声もより人間のしゃべりに近いトーンの“コミュニケーションロボット”です。日本では2016年に販売が開始となり、会話やビデオ通話を楽しむだけでなく、家族の生活の見守りに役立てたり、受付に置いてお客様の応対をしたり、相手の表情や動き、言語に合わせて発話内容をアレンジしプレゼンテーションを行ったりと、様々な活用方法が生み出されています。先進技術を導入した世界初のロボットホテル「変なホテル」の部屋に設置されたり、「変なレストラン」で、全テーブルに設置され、人間のスタッフに変わって応対をするロボットとして話題となりましたよね。
その「TAPIA」、登場と同時に台湾でも注目されていて、台湾では翌2017年に早速、中国語版の販売が行われました。
そして2018年には、AI・ロボティクス・アクセラレータプログラム「Taiwan AI ×Robotics Accelerator 2018(通称:TAIRA 2018)」の最終ピッチセッションで受賞し、その後、高雄の義大病院との共同開発を経て、“健康管理”をする「TAPIA」が登場。現在実験段階ではありますが、昨年末より義大病院の“家庭医学科”と“薬剤部”に導入されています。
“健康管理”とは「TAPIA」がどのようなことをしてくれるのかと言うと、“正しく体重を減らすサポート”をしてくれます。
なんでも、統計によると、台湾の人々の30%近くが健康に関する知識が不十分で、一部の人々は糖尿病患者の中は果物をたくさん食べても問題ないと考えていて、糖分の過剰摂取による脂肪刊の過度のリスクにさらされているそうです。肥満は多くの慢性疾患の原因であると言う事実を考慮して、ダイエットや運動を通じて体重を適切に制御することを人々に教えるAIロボットを開発。個人情報や、嗜好性、並存症などを入力することで、どのように飲食をコントロールしたらいいか、どんな運動をするといいかなど、その人に適した対策を導き出し、しっかりと体重を減らすことで、慢性病になることを防ぐというシステムです。
これから「TAPIA」も“可愛い”だけでなく、このように医療分野においても様々な面からサポートをしてくれるようになりそうですが、今、台湾で「TAPIA」に注目しているのは医療分野だけではありません。実は、言語分野においても注目を集めています。と言うのも、「TAPIA」によって学生の言語学習のサポートができるのではないか?と研究開発が進められています。
この言語分野での活用に関する研究開発を行っているのは、台湾の空の玄関口、桃園の中壢にある元智大学。応用外国語学科と、情報技術学部が協力し、日本のおしゃべりロボット「TAPIA」を使って、外国語学習のサポートをします。
元智大学応用外国語学科の吳翠華・学科主任によると、「ロボットは学習者のレベルを把握することができるし、対話の内容の調整や、時間や場所の制約を受けないため、学習効率が上がる」とのこと。また、日本で生み出された「TAPIA」は、数多くあるAIロボットの中で「最も機械音ではなく自然な日本語に近いおしゃべりロボット」であり、日本語を学習する台湾の学生にとって最適のようです。
スタンフォード大学の研究では、おしゃべりロボットによるサポート学習の効果は教育アプリより勝っているという結果があることから、この「TAPIA」を活用した学習はとても有効であると考えています。
ちなみに、応用外国語学科は1年生の日本語会話と読みの練習に導入したことがあるそうですが、「塾やオンライン家庭教師と違い、対話ロボットは相対的コストが低いうえに、「年中無休」で利用できるので、たとえば学習者が夜中に練習したくなったとしても問題ない。塾や授業のような制限を受けない。」と、多くの利点があるとしています。
また、吳翠華・学科主任は、「TAPIA」は見た目も、日本語の発音も可愛い。しかもロボットは練習している学習者の言語能力が高くなくても怒ることがなく、何度も練習に付き合ってくれる。しゃべるのが恥ずかしいという心配を取り除いてくれるので、試した学生からも好評だ」と説明。自分の語学力に自信がなかった場合、どうしても練習の相手が人間だとなかなかしゃべり出せなかったり、相手をイライラさせてしまったりということが気になりますが、ロボットが相手だとそんな心配は不要だとしています。
なお、元智大学の応用外国語学科は2018年から、情報技術科の鄧進宏・副教授、そして情報工学科の葉奕成・教授と、学部の枠を超えて協力し、“拡張現実=AR”と“バーチャルリアリティ=VR”を使った初級日本語会話教材の共同研究開発を行っています。また、情報技術科の黃怡錚・教授とは、VRを使った、バーチャル日本文化体験システムの共同研究開発を行っています。
吳翠華・科主任は、「このARやVRを使った教材はバーチャルで実際の会話風景を提供するだけでなく、言語識別システムを通じてすぐに使用者の言語の正確率を表すことができる。同時に読み取りや提示システムを設計することで、学生たちにバーチャルの会話風景の中で互いに練習をしながら実際の日本文化を体験することができるようになる」と語りました。
「TAPIA」という日本発のおしゃべりロボットから広がるデジタル世界に、台湾でも想像があふれ続けています。
(編集:中野理絵/王淑卿)