文化の台湾 - 2020-07-15_台北フィルムフェスティバル

  • 15 July, 2020
  • 林 蕙如
第22回台北フィルムフェスティバル「台北映画賞」グランプリを獲得した「返校(Detention)」(写真:CNA)
第22回台北フィルムフェスティバル「国際新人監督コンペティション」グランプリ作品「This Is Not a Burial, It's a Resurrection」(写真:CNA)

 先日7/11(土)、台北市にある中山堂で「第22回 台北フィルムフェスティバル」の授賞式が行われました。この「台北フィルムフェスティバル」は1998年から毎年夏に台北で行われている台北最大の映画祭で、毎年多くの映画ファンが駆けつけます。

台湾には「金馬奨(ゴールデン・ホース・アワード)」という中華圏で最も権威のある国際映画賞がありますが、それに対してこの「台北フィルムフェスティバル」は台湾人または台湾に拠点を置く監督の作品を表彰する「台北映画賞」を中心に、世界の新鋭監督の作品を対象にした「国際新人監督コンペティション」も行うなど、新人監督の発掘にも力を入れている映画祭です。上映作品の多くが映画祭後に台湾で劇場公開や配給につながっていることから、台湾で最も重要な映画祭のひとつにもあげられています。

今年は新型肺炎の影響で世界中の大型イベントが中止されている中、「台北フィルムフェスティバル」は海外の映画人や審査員の招請は取りやめたものの、6/25~7/11にかけて、従来どおり、会場に観客を入れて作品を上映するという形式で開催されました。これは新型肺炎の感染が拡大して以降、世界で初めてです。そして先日7/11(土)に台北市にある中山堂でその授賞式が行われました。

今年の「台北映画賞」には長編51作品、ドキュメンタリー49作品、短編187作品、アニメ44作品の合計331作品がエントリー、そのうち、長編12作品、ドキュメンタリー5作品、短編7作品、アニメ5作品がノミネート。その中から、今年、最優秀作品賞に輝いたのは…スリラー映画「返校(Detention)」でした。

1949年、当時の国民党政権によって戒厳令が敷かれ、思想や言論の自由が奪われた、いわゆる“白色テロ”時代の台湾。山奥にある翠華高校が舞台。女子高生の方芮欣(ファン・ルイシン)が教室で眠りから目を覚ますと周りには誰もいない。不安になる方芮欣(ファン・ルイシン)だが、構内をさまよっていると、彼女を慕う後輩の男子学生・魏仲廷(ウェイ・ヂョンティン)と遭遇する。そこから2人で脱出を試みるが、学校がすでに彼らが良く知る世界とはかけ離れた不気味で恐ろしい場所に変貌していることに気付く。そして2人はかつて学校で起こった、政府による反体制者への迫害事件「読書会事件」、そしてその原因を作った密告者の真相に近づいていく─というストーリー。

 “白色テロ時代”というのは、1947年に発生した当時の国民政府軍に対する抗議を政府が武力で制圧をした「二二八事件」から、1987年に戒厳令がとかれるまでの期間のことを指し、この間、政府に対して反抗するものやその恐れがあると認められたものが投獄され、処刑されるなど、言論の自由や権利が弾圧され、理不尽な迫害を受けた時代のことです。その迫害を受けたものの多くは台湾の知識人や社会的エリートだったと言われています。

 そんな厳しい時代をモチーフとした社会性のある内容である一方、ホラーというエンターテイメント要素もある点、またキャスティングの素晴らしさにおいても台湾のみならず海外からも高い評価を得ています。

 「台北フィルムフェスティバル」は昨年から新たなコンペティション制となり、作品賞や主演賞など、部門ごとにノミネートを発表する形式になりましたが、今回この映画「返校(Detention)」は、グランプリのほか、長編映画賞、主演女優賞、美術デザイン賞、音楽デザイン賞、グラフィック効果賞の6つの部門で最優秀賞を獲得しました。映画「返校(Detention)」の海外版権は、日本もすでに買われているそうですので、新型肺炎が落ち着いてきたら日本の映画館でも近いうちに公開されるかもしれません。

「台北映画賞」ともうひとつ、行われているコンペティションが「国際新人監督コンペティション」。毎年応募の中から10~12の作品が入選し、その入選作品の中からグランプリ、審査員特別賞、観客賞が選ばれます。今年のグランプリは、レソト、南アフリカ、イタリアで撮影されたレモハン・ジェレミア・モセセ監督の作品、「This Is Not a Burial, It's a Resurrection(這不是一場葬禮)」でした。

この映画は、人生の終焉を迎える準備をしていた80歳の老婦が近所の人たちにまさに葬儀の細かい準備について伝えようとしたとき、地元にダム建設が持ち上がり立ち退き命令が出ると言ううわさを伝え聞きます。村人は不安と言い争いが勃発。大きな変化を迫られる彼女は自らの人生計画を立て直し、枯れかけた肉体と意志をもって、村を守るために前面に立つことにするのでした。

この作品は、監督の祖母が南アフリカのレソト王国で生活していた際に実際に起きた出来事からインスピレーションを受けて作った作品だそうです。

なお今年の「国際新人監督コンペティション」には、ニューヨークを拠点に活躍する日本人、福永壮志・監督の、アイヌの血を引く少年を描いた作品「AINUMOSIR」も入選していました。

グランプリ作品をはじめ、今回この「台北フィルムフェスティバル」でノミネートや入選した作品はこれから台湾で上映され、またそこから世界に広がっていくかもしれません。どこかで今日ご紹介したタイトルの作品を目にしたら、ぜひ観てみて下さいね。

(編集:中野理絵/王淑卿)

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