文化の台湾 - 2020-07-08_台湾の七夕

  • 08 July, 2020
  • 林 蕙如
台南開隆宮では旧暦の七夕の日に16歳の成人式を行い、成人を迎えた者たちが馬を引き連れて町をパレードする。(写真:台南開隆宮フェイスブックページより)

昨日7月7日は「七夕」でしたので、今週は「台湾の七夕」についてご紹介しましょう。

台湾では民間行事は旧暦で動いているため、「七夕」ももちろん旧暦の7月7日。今年は8月25日になります。台湾でも日本同様、七夕の夜には織姫と彦星が天の川を渡って年に1度の再会を果たす日とされ、「チャイニーズバレンタインデー」とも呼ばれる“恋人の日”となっています。ただ、それだけではなく、実は台湾の「七夕」には日本にはない物語や古くからの習慣があります。

台湾最大の方言、台湾語では、織姫は「七娘媽」と呼ばれています。この「七娘媽」の「七」は7番目を意味しています。つまり織姫には6人のお姉さんがいて、織姫は7人姉妹の末っ子なんだそうです。また「七夕」は、織姫が生まれた日であるとされていることから、この日は別名「七娘媽の誕生日」という言い方もされています。

台湾に伝わる七夕伝説では、無理やり引き裂かれてしまった織姫と彦星をかわいそうに思い、織姫のお姉さんたちが、ひそかに2人の“子供”を育てたというエピソードがあります。そのことから7姉妹は “子供の守り神”と呼ばれるようになりました。また、当時は医療が発達していなかったことから、幼児が亡くなることが多く、“子供の守り神”である「織姫」に預ければ子供が健やかに育つとされ、幼少期に、香炉、花や果物、紙で作られたランタンをもって「織姫」を祀る廟に行き、“神様へこの子を預けた”という意味となる、古い貨幣や銀、チェーンなどを赤い糸を通してつないだ「絭」というお守りを幼児の首にかけ、無事に16歳を迎えることができるよう願いました。そして16歳の成人を迎えた年の「織姫の誕生日」、つまり「七夕」」に、その“ 絭”、つまりお守りを取り外し、麺やチマキなどを供え長年のご加護に感謝するという風習がありました。

なぜ16歳かと言うと、台湾では古くから16歳が成人とされていたからです。古く清朝時代の台南府(台湾南部)では、港で働いていた少年工たちが16歳になるとこれまでの家計の足しとしての仕事ではなく、大人と同じく仕事を任されるようになり、給料も大人と同じように受け取れるようになることから、16歳が大人への仲間入りとされ、お祝いをしていたことが起源だとされています。

このことから、現在でも台南市では16歳に成人を祝う式典が行われています。家族の中に16歳の子供がいる家では、この16歳の成人の日がやってくる数日前から各種家畜の供え物や、油飯(台湾風おこわ)、季節の果物や麺、亀の甲羅を模したピンクの餅に餡が包まれた紅龜粿などのお供え物の準備を始めます。また、ほかの拜拜と違うのは、このほかに、鏡や櫛、白粉、香水などの化粧品や裁縫道具なども準備。また、色鮮やかなホウセンカや、ケイトウ、千日紅などの華やかな花も準備します。そして、「七夕」当日、まずは「織姫」にお参りをした後、竹や和紙などで作られた高さ1mほどある華やかな「織姫」の乗った台座の下をくぐり、男性は左に3周、女性は右に3周することですでに大人になったことをあらわします。そして最後にその台座を燃やして「織姫」を収めます。

16歳の成人の日には、祖父母から、洋服、靴や帽子、ネックレス、腕時計、自転車などのお祝いが送られます。なおこの16歳の成人式は、各家庭で行われたり、地域によっては廟で大規模に行われたりします。

台南の「開隆宮」、雲林の「七星宮」、嘉義の「福濟宮」など「織姫」を祀る廟で祭事が行われますが、中でも大規模な式典が行われることで有名なのは、台南の「開隆宮」。ここでは、毎年旧暦の7月7日に「織姫」の聖誕祭が行われるほか、政府関係者も出席し、2,000人を超える青少年が参加しての壮大なセレモニーが行われます。最近ではセレモニーだけでなく伝統的な衣装を借りて「織姫」の台座や家族と一緒に写真を撮ったりして成人の記念をカメラに収めている人も多いようです。

また、このほか、「開隆宮」ではセレモニーのあと別にパレードもあり、参加した成人が廟に名前を登録した後、衣装を着て、馬を引き連れて町をパレードします。

このように台湾では「七夕」は“恋人の日”と言う意味だけでなく、16歳の成人式と言う人生の大きな節目の伝統行事が行われる日でもあったんですね。ただ、この16歳の成人式は、あくまで“通過儀礼”だそうですが、このセレモニーを通して、男女共にさらに成長し、社会からも成長が認められます。

ちなみに、台湾の「七夕」は、“恋人の日”、“16歳の成人”のほかにも、“独身者が恋愛の神様「月下老人」に良縁を求めてお参りに行く日”ともされています。「月下老人」が祭られている廟では、日ごろから良縁を求める人が多く集まっていますが、この「七夕」は毎年特に多くの人が訪れます。

ただ、月下老人にお参りに行く際には、気をつけなくてはならない“タブー”があります。

●「傘」を持って行ってはならない。これは、“解散”の“散”と言う字の発音と「傘」の中国語の発音が同じであることから、ご縁を求める人にとってよくないから。

●緑茶を吹いて冷ましてはならない。これは、月下老人がめぐり合わせた縁を吹き飛ばしてしまうから。

●幸せのおすそ分けとして持ちかえる結婚のお祝いのお菓子を、選んではならない。これは「選り好みをする」という悪い印象を避けるため。

●線香を吹き消さない。神様に失礼にあたります。

●月下老人をお参りする際には、帽子、マスク、サングラスなど、顔を隠してしまうものを身につけてはならない。これは月下老人が顔を確認できないからなんだそうです。

…とは言っても、今は新型肺炎の影響でマスクをしている人も多いので、月下老人はちょっと大変かもしれませんね。

(編集:中野理絵/王淑卿)

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